今年…

 今年1年、藤枝明誠高校(静岡県)は全国で結果を残せなかった。インターハイではシード権を獲得したが、無念の初戦敗退。夏の悔しさを胸に挑んだ冬のウインターカップでも2回戦で敗れ、今シーズンを終えた。

「もう1回初心に戻ってチームづくりをしなきゃいけないです。僕たちは強いチームではなくチャレンジャーですし、全国に出ることも全国で勝つことも当たり前じゃない。崖っぷちという気持ちを持って、本当にまたイチから、ゼロから日本一になれるようなチームになっていかなきゃいけないと思っています」

「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の2回戦で土浦日本大学高校(茨城県)に敗れたあと、2年生の渡邊聖は自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。

 横浜ビー・コルセアーズU15出身の渡邊は、中学3年生の時に「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024」で優勝を経験。藤枝明誠に進学後は早々に出場機会を得て、ベスト8まで進んだ昨年のウインターカップでは先発を担ったスコアラーだ。

 今年は2年生ながらゲームキャプテンに就任。昨年以上にチームを引っ張る立場となったが、インターハイ後はケガの影響で約3カ月間の離脱を強いられた。「今回は金本(鷹)先生から、ベンチスタートから得点を取る役割をもらいました」。今大会の渡邊は、インターハイとは違った立場でチームに貢献することになった。

「油断は一切なかったです」。チームは真正面から土浦日大に挑んだ。第3クォーター終了時点で4点リードしていたが、藤枝明誠は最終クォーターで11-28と逆転を許し敗戦。渡邊も思うように得点を伸ばすことができず、17分10秒の出場で4得点。試合を通して放った5本の3ポイントシュートは、すべてリングに嫌われた。

 試合後の取材エリアでは、耐えきれずに泣き崩れる3年生の姿もあった。「ちょっと今は気持ちの整理がついていないです……」。渡邊も開口一番、言葉を詰まらせた。一呼吸置くと、「チームとしても土浦に勝つためにしっかり準備してきましたけど、勝てなかったです。悔しい、という気持ちが一番ですね」と素直な胸の内を明かした。

 自身2度目のウインターカップは2試合で大会を去ることとなった。ベンチスタートの役目を担った背番号13のプレータイムは、2日間で約22分にとどまり、合計得点は「7」。昨年以上に自分の無力さ、物足りなさを感じたが、この経験から得たものは大きかったと渡邊は言う。

「試合に出ることだけが全てじゃないですし、ベンチに座っていてもチームに貢献できるかどうかも大事だと思いました。試合に出ていない時間もチームのフォローアップすることなどを3年生から学ぶことができたので、プレータイムが少なかったことについてはあまり気にしていません」

 来年は自分が最上級生になる。再びキャプテンという役目を担うかどうかはわからないが、渡邊は「チームを勝たせる選手になる」と誓った。大黒柱の野津洸創(3年)は後輩の背中を押すように、新たなリーダーとして歩みだす渡邊へエールを送った。

「あいつには俺にはないメンタルの強さがあるんです。スーパースターということは誰もが認めているんですけど、俺と一緒で気負いすぎちゃうところがあるので、周りと信頼し合いながら成長していってほしいなと。周りを信頼して、自分で決めきるところはしっかりと決めきる選手になれると思うので期待しています」

 藤枝明誠は飽くなきチャレンジャーとして再出発を図る。その中心にはきっと、渡邊聖がいるはずだ。

【動画】最終クォーターで土浦日大に逆転負けを喫した藤枝明誠