NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン2 第3節2025…

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第3節
2025年12月27日(土)12:00 ハワイアンズスタジアムいわき (福島県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 九州電力キューデンヴォルテクス

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)


コンディションが充実しているという日本製鉄釜石シーウェイブスの小野航大選手

リーグワン発足以降、クラブ初のホスト開幕戦勝利を達成した日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)。確かな手ごたえを胸に、チームはいま次の舞台へと向かっている。

リーグワン初の開幕連勝を懸けて迎えるホストゲーム。その一戦を前に、静かに闘志を燃やすのが小野航大だ。

「ここ数年では、一番の体の状態だと感じています」

そう語る口調は穏やかだが、言葉の端々からは、長い時間を掛けてコンディションを取り戻してきた実感がにじむ。

2023-24シーズン、小野は肉離れを3度発症し、断続的な離脱を余儀なくされた。思うように走れない時間が続き、ようやく感覚を取り戻しかけた矢先に、再びグラウンドを離れる。その繰り返しは、想像以上に心身を削るものだった。さらに昨年の12月には右足首の手術を受け、復帰を目指す過程で再び肉離れを発症。リハビリの日々は、再度スタートラインへと引き戻されたような感覚でもあった。

それでも今季、小野は完全復活の兆しを見せている。トレーニングや試合を通じて、コンディションが上がっていることは周囲の目にも明らか。ウイングとして生命線となるスプリントについても、「これまでは騙し騙しやっていた部分もありましたが、いまはスプリントへの怖さがない」と語る。足首やハムストリングへの不安が薄れ、プレーに迷いがなくなってきている。

そんな小野は12月15日に34歳の誕生日を迎えた。愛娘から贈られたのは、ジャージーの形をした手作りの小さなキーホルダー。応援と感謝の気持ちが詰まったその贈り物を、小野はいまも大切に持っている。

「(キーホルダーを)落としてなくしてしまうのが怖くて、まだ着けてないんです」

少し照れくさそうに笑う表情からは、グラウンド上の鋭さとは異なる、愛情にあふれたチャーミングな一面が垣間見える。苦しい時間を経験してきたからこそ、家族からの何気ない応援が、何よりの支えになっている。

また、今節の舞台となるいわき市も小野にとって特別な意味をもつ。同市出身の小野にとっては2年ぶりの凱旋試合だ。昨季は手術後でリハビリの最中にあり、グラウンドに立つことは叶わなかった。

「自分の地元で試合が開催されるタイミングでゲームメンバーに選ばれることは当たり前じゃない。これが最後かもしれないという気持ちで頑張ります」

キャリアを重ねる中で蓄積してきた疲労や故障、そして激しさを増すチーム内競争。その現実を受け止めた上で語られる言葉には、釜石の名を背負う選手としての責任感と、応援への感謝が込められている。

いわきの地で問われるのは、結果だけではない。けがと向き合い、支えられながら積み上げてきた時間と思いを、どれだけプレーに込められるか。

小野航大と釜石SWの“いま”が、静かに、しかし確かに試される。

(髙橋拓磨)