「だいたい、同じっすね。どのコースも…」。5月のPGAツアー「トゥルーイスト選手権」は今季、開催地が変更され、会場とな…

松山英樹が2025年シーズンを振り返った

「だいたい、同じっすね。どのコースも…」。5月のPGAツアー「トゥルーイスト選手権」は今季、開催地が変更され、会場となったペンシルベニア州のザ・フィラデルフィア・クリケットクラブは大多数の選手にとって初体験のゴルフ場だった。松山英樹もそのうちのひとり。未知の18ホールに警戒心を高めたかと思いきや、落ち着き払った様子で眺める。その表情からは新鮮さに対する興味がすっかり失われたように見えた。

2013年の秋に米ツアーのメンバーになってから12年目のシーズン。毎年変わるメジャーの開催会場はすべて過去にプレー実績があり、キャリアで“2周目”に入った。初めて来た土地、対峙(たいじ)するコースのチェック方法もとっくの昔に確立されている。「行ってはダメなところはダメでしょうけどね。そこだけしっかり頭に入れて、あとは雰囲気だけを見ている感じです」。最高峰のツアーに飛び込んだ21歳当時の目の輝きとはやはり少し違う。

開幕戦優勝後の憂うつ

1月の開幕戦「ザ・セントリー」で72ホールのツアー史上最多アンダーパーとなる通算35アンダーをマーク。「優勝でスタートして、その後なかなか良いプレーができず苦しい時間も長かった。最後(12月)のヒーローワールドチャレンジで優勝できて、良い締めくくりができた」という一年は、「メジャーのことはあまり覚えていない」と振り返るほど、春から夏場のメインシーズンに悶々とした。

4月「マスターズ」。首位と5打差の12位で迎えた3日目は今季最も悔しいラウンドになった。出場14回目、53ラウンド目で初めてバーディをひとつも獲れないまま5ボギー1ダブルボギーの「79」と崩れ、グリーンジャケットが遠ざかった。5月「全米プロ」ではメジャーで20大会ぶりに予選落ち。「その後のテキサスの試合(チャールズ・シュワブチャレンジ)で『なんでこんなにうまくいかないのか。良いショット、良いパットを打っても、なかなか好結果につながらない』と、メンタル的にきつかった」

シーズン中、黒宮幹仁コーチが「今季は同じ局面で、同じミスをすることがよくあった」と指摘したことがあった。例えば、8月の「ウィンダム選手権」。11番ホールで初日、2日目といずれもティショットを大きく右に曲げてOB。松山自身も「今年に限って言えば、『嫌だな』と思うホールで同じミスをすると言われれば、そうだなと感じます」と認めざるを得ない。

「スイング的な自信の問題も、“意地を張って打ってしまっている”部分もあるとは思う。例年ならば、ちょっと(ミスをしたショットとは)違う球筋で行くが、良い結果が出ないからイライラして『同じ球で打ってやろう』という感じでプレーしていた部分はあると思います」。ゲーム中にはスコアメークが最優先事項にあった若かりし頃とは違う欲望も、今や闘うべき相手と言える。

2026年につながる一打

優勝したバハマでの最終戦が2026年につながる

不出来を嘆き続けながらも、松山は今もエリート選手であることを証明した。年間ポイントレース(フェデックスカップポイントランキング)上位30人だけで争われるプレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」までしっかり進出。

秋には英国でのDPワールドツアー(欧州ツアー)「BMW PGA選手権」に招かれ、初出場した。10月の日本開催のPGAツアー「ベイカレントCレクサス」を挟んで、11月には韓国にも出向き「ジェネシス選手権」で7位に。DPワールドツアーとはいえ、ようやく決めた1月の開幕戦以来のトップ10入りに胸をなでおろす。

そして12月、バハマでのツアー外競技「ヒーローワールドチャレンジ」で、一年を白星で締めくくった。アレックス・ノレン(スウェーデン)を退けたプレーオフでの2打目は2026年への希望になる。左サイドに池が待つ18番、3Wでフェアウェイの狭いエリアを捕らえた後、残りは166yd。手前エッジから28yd、左から4ydというシビアなピンを9Iで攻め込み、ピンそば80cmにつけた。

「ああいうポジションのピンに向けて思い切って構えられた。ここ何年間かではなかったものだった。率直にうれしい。今後につながるんじゃないかと思います」

ツアーのレベルアップと久常、金谷、中島、平田評

2月で33歳になった

もがきながら、有終の美を飾った。それまでの憂うつは、なにも本人の調子だけによるものではない。近年、フィールド全体のレベルアップを松山も感じている。「自分の納得いくプレーができて、『こういうコンディションだったら、(以前は)これぐらいの成績でトップ10に入ったのに』といったことが、今年はすごく多かった。微妙なところでの1打、2打が変わってきた。優勝(スコア)は、その週のベストを出した人のスコアなので想像はつくが、下の順位や予選カットラインのレベルが上がっているんじゃないかと思う」

松山の初年度だった2013-14年シーズンに「71.063」だったPGAツアーの平均ストロークは25年に「71.079」。数値に大きな変化はなさそうで、プレーヤー自身が毎年のブラシュアップを感じるフィールドには来季、ほかに4人の日本人選手がいる。それぞれが早くから日本ツアーを飛び出した後輩たちについて、松山はこう評す。

来季ツアー3年目を迎える最年少(23歳)の久常涼は「一番多く、一緒に練習ラウンドをしている。愛らしいキャラで、強みが何か分からないのが強み」。金谷拓実はルーキーイヤーにポイントランク99位に入り、100位のボーダーラインを突破してシードを手にした。「粘り強いプレースタイルで、(10月)ベイカレントCレクサスでも最終日に爆発(62)してトップ5(4位)に入った。シーズンの途中は苦しそうでしたけど、それも乗り越えて100位以内に入った。結婚もしたそうなので、充実しているんじゃないですか」

中島啓太は欧州ツアー2年目でいよいよ米ツアー進出を決めた。「今年は欧州でも一緒に練習ラウンドをして、ゴルフの内容が変わってきたように思う。欧州で揉まれて、練習の内容や雰囲気が変わり、『これなら(米ツアーに)行けるだろう』という感じで見ていた。来られて良かった」。同じルーキーとして戦うのが下部コーンフェリーツアーから昇格する平田憲聖。「みんなそうですけど、彼もやっぱり正確性がある。下部ツアーを突破してくる力はすごい。(年間レースで)上位20人にしか出場資格が与えられないところに入ったのは、PGAツアーのシードを獲るよりも難しいことかもしれないと思う時もある」

松山は4人の歩みをたたえ、笑顔を絶やさず「来年、彼ら4人がどういうプレーするのか楽しみに見ています」と言った。そこにはまだ、次世代を恐れる様子がない。

「彼らの方が上位にいれば『負けたくない』と思う。ただ、自分のベストパフォーマンスを出せれば負けるつもりはない。今は。ベストを出した時に彼らに負けるようになってくれば怖くなるんじゃないですか。その瞬間を待っている? いや、待つつもりはないです。自分がその先に行けばいい話なので」

(編集部・桂川洋一)