【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】◆カリフォルニアは年々G1競走が減少 アメリカ重賞競走コミッティー…
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆カリフォルニアは年々G1競走が減少
アメリカ重賞競走コミッティーから、2026年の重賞格付けに関する発表が12月19日にあった。
コミッティーでは、総賞金7万5千ドル以上の942の競走について内容を吟味した結果、2025年よりは5競走少ない410競走を、重賞競走と認定することを決定。昇格となるのは、特別から準重賞が9レース、準重賞からG3が4レース、G3からG2が10レース、G2からG1が1レースの、合計24レースとなった。
唯一のG1昇格となったのが、ケンタッキーダウンズ競馬場を舞台にした牝馬によるレディースターフスプリント(芝6.5F)だ。近年、主催するレースの賞金の増額が著しく、レース内容も年毎に上昇しているのがケンタッキーダウンズ競馬場だが、中でも開催の目玉の1つとなっているのがレディースターフスプリントだ。創設されたのは2013年で、当時の総賞金は15万ドルだったが、徐々に賞金を増額するとともに出走馬の質が上がり、2016年に準重賞の格付けを与えられた。
さらに2018年にはG3に、2023年にはG2に昇格と、まさに右肩上がりの成長を続けてきた。総賞金も、2019年に50万ドルに増額されると、2023年には100万ドルに、これが2024年には150万ドルになり、2025年には200万ドルの総賞金を懸けて争われた。
ここに挑んだ最初のビッグネームは、まだG3だった2020年に参戦したガットストーミーだったと思う。4歳だった19年にG1フォースターデイヴH(芝8F)、G1メイトリアークS(芝8F)という2つのG1を制していた同馬。20年は春から夏にかけて5戦し、G1フランクE.キルローマイル(芝8F)2着、G1フォースターデイヴH(芝8F)2着など、5戦すべてで入着しながら勝ち星から遠ざかっていた。陣営としては、従来歩んできた路線よりは距離が短いものの、賞金が良い割には相手関係に恵まれそうなレディースターフスプリントは、魅力的な鞍に見えたようだ。オッズ1.9倍の1番人気に応えたガットストーミーは、ここを3.1/4馬身差で快勝し、このシーズン初めての勝利を手にしている。
22年には、ウェスリー・ウォード厩舎の快速馬カンパネッレが参戦。同厩舎の管理馬らしく、2歳時から欧州遠征を敢行した同馬は、ロイヤルアスコットのG2クイーンメアリーS(芝5F)、ドーヴィル競馬場のG1モルニー賞(芝1200m)を連勝。3歳時にも英国に遠征し、ロイヤルアスコットのG1コモンウェルスC(芝6F)制覇を果たしていた。4歳時にもロイヤルアスコットに参戦し、G1プラチナジュビリーS(芝6F)で3着になった後、帰国初戦に選んだのがこのレースで、オッズ1.78倍の1番人気に応えて優勝を飾っている。
そして、24年、25年とこのレースを連覇したのが、エージーバレットだ。4歳4月にサンタアニタ競馬場のG3モンロビアS(芝6.5F)を制し重賞初制覇を果たした同馬。その後、チャーチルダウンズ競馬場のG2ディスタフターフマイルS(芝8F)9着、デルマー競馬場のLRオスニタスS(芝8F)1着の成績で臨んだのが24年のこのレースで、そこを5.1/4馬身差で快勝して2度目の重賞制覇を果たした。その後、11月のG1BCターフスプリント(芝5F)で勝ち馬からクビ+ハナ差の3着に入った同馬。25年の2戦目となったサラトガ競馬場のG1ジャイプールS(芝5.5F)を制し、待望のG1初制覇を達成。続いて出走したのが25年のこのレースで、ここも勝って連覇を達成。その後、G1BCターフスプリントが2着、G1メイトリアークSが3着と、芝8F以下の路線で確たる実績を残したのがエージーバレットだった。
こうした近年の成績を見れば、レディースターフスプリントのG1昇格も頷けるところである。一方で、G1からG2に降格になるのが、同じケンタッキーダウンズ競馬場を舞台とするフランクリンシンプソンS(芝6.5F)と、サンタアニタ競馬場のフランクE.キルローマイル(芝8F)だ。フランクリンシンプソンSもレディースターフスプリント同様、ケンタッキーダウンズ競馬場が力を入れてきたレースで、総賞金が200万ドルになった2024年にG1に昇格。しかしこちらは、思ったように出走馬の質が上がらず、わずか2年でG2降格の憂き目を見ることになった。
フランクE.キルローマイルは、1960年に創設された伝統の一戦。25年は前年のG1ハリウッドダービー勝ち馬フォーミダブルマンが勝ち、そこそこの格式を保ったかに見えたのだが、残念ながら降格の裁定を受けてしまった。カリフォルニアは近年、G1競走の数が年ごとに減少しており、地盤沈下に歯止めがかからない状況となっている。
(文=合田直弘)