WRC2冠王者のマーカス・グロンホルムが、2026年から米国の国内ラリー選手権に相当するアメリカン・ラリーアソシエーショ…

WRC2冠王者のマーカス・グロンホルムが、2026年から米国の国内ラリー選手権に相当するアメリカン・ラリーアソシエーション(ARA)に、ヨハン・ラグナルソン率いるジョージア州拠点のJRDモータースポーツが投入するラリー2スペックのマシン、ARC2のテストを始める。チームは、スウェーデンをルーツとするチームらしさを表す、北欧伝統の青と黄を使用したカラーリングの車両画像を公開。フロントには、JRDモータースポーツの象徴であるバイキングのロゴがあしらわれている。

JRDモータースポーツは、このARC2マシンのベースとして、サイズやコスト、JRDのCADデータのアクセス面を考慮して、シボレー・ソニックのプラットフォームをチョイス。オリジナルのボディシェルをベースとしながらも、ゼロからARC2車両を構築した。独自のレース実績を活かして、サスペンションジオメトリ、AWD駆動系、FIA公認ロールケージ、業界をリードするサプライヤーの高性能コンポーネントを統合し、ステージラリーの過酷な要求に耐えるよう設計したという。

エンジンは、スウェーデンのホース・パワートレイン傘下企業であるAurobay製の直噴2.0Lターボエンジンを搭載。JRDに納入される際、FIAのラリー2車両のエンジンと同等の出力と性能にチューニングされ、ロックされたECUと改ざん防止シールが装着される。エンジン出力は、SGSレーシングトランスミッション製5速シーケンシャルギヤボックスと機械式LSDを介し、4輪に伝達される。JRDはコスト意識の高い設計思想でARC2を開発し、ランニングコストの効率性を確保。パーツの完全な在庫管理と包括的なアフターサービス体制により、顧客に最高水準のサービスと信頼性を提供するとしている。

マシンは、12月11日〜13日にインディアナポリスで行われたPRIショーでアンベールされ、グロンホルムも登場した。
「ドライバーとして米国を訪れるのは久しぶりだが、WRCを引退した後にパイクスピークやラリークロスで戦った日々を懐かしく思い返している。米国のモータースポーツの雰囲気は、リラックスはしているが完全にプロフェッショナルだ。自分は、そんな雰囲気をとても気に入っている。 JRDモータースポーツとこれから始まる冒険で、新たな思い出を作ることを願っている」

「JRDモータースポーツのカラーリングも、非常に考え抜かれている。スウェーデンとフィンランドの国旗が並んでいるのを見るのは、うれしいね。両国は、海を隔ててすぐ向かい合っているのだから。WRCに参戦していた頃、スウェーデンとフィンランドはお気に入りのラリーだった。スウェーデン語も、第一言語として使っている。このプロジェクトに関わるすべてが、自分のいい思い出を呼び起こしてくれる」





ARC2は、FIAのラリー2車両と同等の性能を持つように設計されたマシンであり、ARAのRC2クラスで競うことを目的としている。その目的は、輸入が困難なヨーロッパ製のラリー2マシンの代わりに、米国製の代替品を提供することにある。先日は、TGRが同じくARAのRC2クラスに参戦するトヨタGRカローラを発表したばかりだ。

JRDモータースポーツは、車両コストの削減と競技者への障壁撤廃を通じて、米国におけるラリー競技の民主化に注力しており、その姿勢が、グロンホルムにとっても個人的に関心のある点だという。

現在57歳のグロンホルムは、自チームであるGRXを立ち上げ、世界ラリークロス選手権に参戦中。息子であるニクラス・グロンホルムがドライバーを務めるほか、若手育成にも注力している。

「現代のラリー競技における最大の課題のひとつは、競技参加にかかる費用が途方もなく高額であることだ。米国国内ですべてを現地生産し、3Dプリンターなどの先進的なエンジニアリング技術を活用することで、ARC2は莫大なコストの一部を削減できた。これにより、予算が限られている才能あるドライバーにも実力を発揮できる機会を提供する。米国ラリー界がより公平な未来を築き、我々のマシンが新たな才能の明るい波を育む一助となることを願っている」と、グロンホルムはまとめている。