NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン2 第2節2025…
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第2節
2025年12月21日(日)13:05 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 36-14 日野レッドドルフィンズ
日常も、非日常も、この場所で。“人を思う気持ち”を携えてつかんだ価値ある勝利

釜石市役所の職員でもある日本製鉄釜石シーウェイブスの西林勇登選手
日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)にとっては、リーグワン発足以降初となるホストゲーム開幕戦勝利。クラブ史に新たな足跡が刻まれた試合のグラウンドに立った西林勇登と青柳魁にとって、この勝利はさらに特別なものだった。
二人が勤務するのは釜石市役所。選手であると同時に、釜石市役所の文化スポーツ課の職員でもあり、釜石鵜住居復興スタジアムを“仕事場”として日常的に訪れている。グラウンドの整備、環境作り。競技者としてではない時間も、このスタジアムで過ごしてきた。
「仕事でここに来るたびに、ここで勝っている姿を見せたいと思っていました」
同課で3年目を迎えた青柳の言葉は、決して大げさではない。土に触れ、芝の状態を気にかけながら過ごす日常の中で、ホストゲームで勝利する瞬間を常に思い描いてきた。そして今季のホスト開幕戦。思い入れのある場所でプレーヤーとして勝利をつかんだことに、静かな達成感がにじんだ。

青柳魁選手も釜石市役所に勤務している(写真中央)
スタンドには多くの観客が集まった。その中には選手たちよりも早くからスタジアムに入り、開催の準備を進めていた大勢の同僚たちの姿もあった。西林はその光景を見て、あらためてこの場所で戦う意味を感じていたという。
「この場所は、いろいろな人の支えがあって成り立っていると思っています」
小学生が走り、中学生がぶつかり合い、高校生が雌雄を決する。地域に開かれたグラウンドだからこそ、ホストゲームで勝利を届ける責任がある。
「たくさんのお客さんがいる中で勝てたことは、本当に良かった」
その言葉にはプレーヤーとしてだけでなく、この場所に関わる一員としての思いが込められていた。
試合はチームの成長を示す内容だった。前半はディフェンスで粘り、相手を無得点に抑える。我慢の時間を耐え抜いたことで、試合の流れを引き寄せた。一時は押し込まれたスクラムも、組み方を修正し、チームとして立て直す。現場での対応力が、結果に結び付いた。
派手なスターがすべてを決める試合ではない。だが、ホスト開幕戦での初勝利は、確かにチームの背骨を作る一戦となった。
「誰が使っても、気持ちよくプレーできるグラウンドであってほしい」
青柳が語る仕事への姿勢は、そのままラグビーへの向き合い方でもある。職場でもチームでも後輩の西林は「青柳先輩のおっしゃるとおり。ずっと背中を見ながら付いていかせてもらっています(笑)」と茶目っ気たっぷりな言葉であとを追うが、彼もまた、先輩の背中を見ながら、真摯な姿勢でこの場所で戦う意味を学んできた。
西林と青柳は、“人を思う気持ち”を携えて、日常と非日常が交差するこの場所で価値ある勝利をつかんだ。次にこのスタジアムで試合が行われるのは、3月7日の第7節。東日本大震災から15年という節目を迎える中で行われる一戦となる。
彼らが日々向き合ってきたこの場所は、再び多くの思いを乗せ、熱狂の舞台となる。
(髙橋拓磨)
日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブスのトウタイ・ケフ ヘッドコーチ(左)、河野良太キャプテン
日本製鉄釜石シーウェイブス
トウタイ・ケフ ヘッドコーチ
「まず、結果には大変満足しています。今日は勝利を収めることができましたが、その一方でいくつか課題も見つかった試合でした。勝つ機会が多くない中で、今回しっかりと勝ち切れたことは素直にうれしく思っています。具体的にはセットピースが非常に良かったと思います。そこから良い形でゲインラインを切ることができ、その流れがチーム全体の勢いにつながりました」
──日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)として、リーグワン初のホスト開幕戦勝利となりました。この1勝の価値と、今後につながる点について教えてください。
「この1勝は間違いなく自信につながります。課題がありながらも勝てたという点は、チームにとって非常に大きいですし、良い流れを作るきっかけになると考えています。
また今日の試合に向けてのトレーニングでは、選手の体調面で思うように進まない部分もあり、直前にはインフルエンザで出場できなくなった選手もいました。ただ、代わって出場した選手たちが本当に良い仕事をしてくれましたし、チーム全体で勝ち取った勝利だと思っています」
日本製鉄釜石シーウェイブス
河野良太キャプテン
「まずは、ホストゲーム開幕戦で勝利することができたことを非常にうれしく思います。『試合の入りを大事にしよう』とフォーカスして準備してきましたが、先制点を取ることができた点は、試合を進めていく上で非常に大きかったと感じています。ただ、ヘッドコーチも話したとおり、良かった部分があった一方で、修正すべき部分もあります。来週も試合がありますので、チームとしてしっかり修正し、次の試合も勝てるよう準備していきたいと思います」
──今日の勝利のポイントとなった部分を教えてください。
「スクラムがうまくいかない時間帯や、ペナルティを取られてしまった場面もありました。ただ、そういうときこそ『次の仕事(ネクストジョブ)』を意識して声を掛け合い、ミスを引きずらずに次のプレーへ切り替えられたことが、連続失点を防げた要因だと思います」
日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、中鹿駿キャプテン
日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日、予報では雨が心配されていましたが、途中から晴れに変わり、素晴らしい環境の中で試合ができたことをうれしく思います。
試合内容に関しては、われわれの力を十分に発揮することができませんでした。それに尽きると思います。次の一戦に向けて、われわれの力をしっかり発揮できるよう、さらに良い準備をして臨みたいと思います。本日はありがとうございました」
──力を発揮できなかった要因をどのように捉えていますか?
「準備段階も含めて振り返る必要があると感じています。選手のコンディションや疲労の有無も含め、今日はチーム全体としていつももっているエナジーが少し足りなかった場面が見受けられました。メンタル面のエネルギーも含め、すべてにおいて100%のパフォーマンスを発揮できる準備ができていたか、プロセスをもう一度しっかり検証したいと思います。今日は釜石SWさんの素晴らしいプレッシャーがありましたが、そのような中でもよりアグレッシブでエキサイティングなラグビーができるよう、次に向けて取り組んでいきたいと考えています」
日野レッドドルフィンズ
中鹿駿キャプテン
「本日は、このような素晴らしいグラウンドで試合ができたことを本当にうれしく思います。先ほどコーチが話したとおり、自分たちの力を発揮することができず、前半から相手の強いプレッシャーを受けてしまったことが、この試合のすべてだったと感じています。本日はありがとうございました」
──力を発揮できなかった要因をどのように捉えていますか?
「今週1週間準備してきた中で、練習ではできていた部分を、今日の試合で発揮することができませんでした。例えば、横の連係や細かなコミュニケーション、ディフェンスで低く入り、前に出て当たる部分など、準備してきたことが試合で出せなかったと感じています。なぜ発揮できなかったのか、明確な要因はまだ分かりませんが、そこをしっかり振り返り、次に生かしていきたいと思います」