小学校の卒業式が終わってすぐに家族の元を離れ、寮生活で柔道を学ぶ子供たちがいる。新しい環境へ飛び込む子供たちにとって、…
小学校の卒業式が終わってすぐに家族の元を離れ、寮生活で柔道を学ぶ子供たちがいる。新しい環境へ飛び込む子供たちにとって、そして彼らを見送る家族にとって、それは大きな変化であることは間違いないだろう。
そんな勇気ある子供たちが寮生活をしながら柔道を学んでいるのが、ミヤザキッズ柔道教室(以下、ミヤザキッズと省略)である。
12歳で親元を離れて柔道に打ち込む決断をした子供たちは、どんなことを考えながら毎日を過ごしているのだろうか。
今年、九州中学校柔道競技大会で団体戦の優勝を勝ち取った2人の若き柔道家である、東海庵さん(ひがし みあん・中学3年)と佐藤大峨さん(さとう たいが・中学2年)にミヤザキッズでの生活について話を聞くことができた。
ミヤザキッズで強くなった兄を見て
おふたりが柔道を始めたきっかけを教えてください。
東海庵さん(以下、敬称略)「自分の兄が柔道をしていて、その様子をいつも見ていたので、自分も柔道を始めることになりました。」
佐藤大峨さん(以下、敬称略)「自分も柔道をしている兄がいたことがきっかけです。兄を見て、柔道ってかっこいいなぁと思って、自分も柔道をするようになりました。」
今おふたりはミヤザキッズで寮生活をされていますが、小学校を卒業してすぐに親元を離れて寮生活をするというのは、とても大きな決断だったと思います。おふたりが寮生活をしてでもミヤザキッズで柔道をしたいと思った一番の理由は、どのようなものだったのでしょうか。
東「兄が先にミヤザキッズの寮に入っていました。寮に入ってから、兄がどんどん強くなっていくのが分かって、自分も同じように強くなりたいと思ったので、寮に入ることを決めました。」
佐藤「寮に入ると決めるまではいろいろ心配でした。でも、ミヤザキッズで体験教室が開催されていたのでそれに行ってみたら、みなさんにいろいろ優しくしてもらったので、ここで自分も柔道が強くなりたいと思いました。また、こここで学ぶことは、大人になってつらいことに出会ったときに、きっと自分を支えてくれるんじゃないかとも思って、寮に入ることにしました。」
家族と離れて暮らして、ホームシックになったことはありますか。
東「はい、あります。でも寂しくなった時には先輩たちが慰めてくれました。同じ時間を過ごすなら何事も全力でやれと言われましたし、何でも一生懸命にやった方が良いよ、とも言われました。」
佐藤「自分はホームシックになったことはないのですが、試合で勝てないことが続いたり、ケガをした時がつらかったです。そうした時には自分も先輩たちにアドバイスしてもらいました。特にケガをした時には、先生に言われたことをやっていれば必ず強くなるからといつも励ましてもらったので、乗り切ることができました。」
学校があるときの1日のスケジュールを教えていただけますか。
東「5時半ごろに起床して、5時45分から6時45分までが朝練の時間です。7時に朝食をとって、7時40分ごろに学校に行きます。その後15時40分くらいに学校から帰ってきて、準備などした後、17時から20時くらいまでが夕方の練習時間です。そして、21時くらいに晩御飯を食べて、22時半くらいに寝ます。」
ハードスケジュールでお忙しいと思いますが、自由な時間があるとき、おふたりは何をしていますか。
東「他の寮生とおしゃべりしたり、読書したりしています。」
佐藤「自分もおしゃべりしています。みんなと一緒テレビやYoutubeを見ることもあります。」
おふたりとも中学生なので、柔道の稽古と同じくらい、勉強も大切だと思います。勉強と柔道を両立するために、おふたりはどのようなことを日頃から心がけていますか。
東「授業中でわからないところがあったら、休み時間のうちに友達に聞いて、解決しています。宿題も休み時間のうちに終わらせるようにしています。」
佐藤「疲れた状態で授業に出ないように、栄養と体を休める時間をきちんととるようにしています。その方が、授業に集中できると思うので。」
学校の授業で、おふたりが一番好きなのは、何の科目ですか。
東「体育です。バスケットボールが好きです。でも、自分が本気でバスケの試合中に他の人とぶつかると、その人が吹っ飛んでいったりするので、ちょっと力を調整しながらプレーしています。」
佐藤「自分も体育が好きです。基本的に球技は苦手なんですが、ドッチボールが好きです。」
九州大会優勝、でも来年も挑戦者として
今まで柔道をしていて、一番苦しかったことと、一番嬉しかったことを聞かせてください。
東「自分はミヤザキッズに入ってすぐの頃に、ご飯をたくさん食べなきゃいけないことが、一番苦しかったです。毎日夕食でご飯を1㎏以上食べなくてはいけないのですが、最初のうちは全部食べることができませんでした。今はご飯1㎏だけでなく、おかずもしっかり食べられるようになりましたが、そのせいか、身長も10㎝以上伸びました。
一番嬉しかったことは、この夏の九州中学校柔道競技大会(九州大会)の団体戦で優勝したことです。自分たちの先輩方が誰も成し遂げられなかったことだったので、本当に嬉しかったです。」
佐藤「一番苦しかったのは、試合で自分の技がなかなか決まらない時期があったことです。勝てないことが続いて、すごく落ち込んでいたのですが、先生のアドバイスがあったから、乗り越えることができました。一番嬉しかったのは、自分も九州大会で団体優勝したときです。」
佐藤さんは、今、中学校2年生ということですので、来年もう一度九州大会に出場することができますね。来年ミヤザキッズはディフェンディング・チャンピオンとなるので、全てのライバル校がミヤザキッズに勝つことを目標にして、大会に挑んできます。プレッシャーは感じますか。
佐藤「今年優勝したので、来年はどのチームも自分たちに注目するだろうと思います。でも来年の九州大会には、改めてまた挑戦者として挑むと自分も決めていますし、友人ともそう話しています。」
最後の質問です。おふたりの柔道の世界での将来の目標と、こんな大人になりたいという目標を聞かせてください。
東「柔道で日本一、そして世界一になりたいです。また、みんなから応援されるような選手になりたいと思っています。」
佐藤「オリンピックの柔道で金メダルを取って、そのメダルを親に掛けることが一番の目標です。そして社会に出て、たくさんの人から信頼される人になりたいです。」
質問に対してまっすぐな視線で応える東さんと佐藤さんの2人から、自分の決断で自分の人生を選んだという自信と、それを支えてくれる周囲の人への強い信頼の両方がとても強く感じられた。「強くなりたい」という思いが可能にする子供たちの決断と夢の向こうにあるのは、柔道家としてだけでなく、人として幸せになる方法なのであろう。
たくさんの子供たちが強く、幸せになるために。ミヤザキッズ柔道教室はこれからも多くの子供たちに柔道を伝えていく。
(写真提供 ミヤザキッズ柔道教室)(インタビュー・文 對馬由佳理)


