着実に力をつけている2年の岡田開成。洛南高の2学年先輩にあたる駒大・佐藤圭汰を強く意識している photo by Spo…


着実に力をつけている2年の岡田開成。洛南高の2学年先輩にあたる駒大・佐藤圭汰を強く意識している

 photo by Sports Press JP/Aflo

【8月の月間走行距離は1000km超】

 初めて走った前回の箱根駅伝では、悔しさを噛み締めた。

 中央大に入学した昨年、岡田開成は全日本大学駅伝の2区で大学駅伝デビューを果たし、区間6位と上々の走りを見せ、チームを19位から7位にまで押し上げた。迎えた箱根では、7区でゲームチェンジャーの役割をまかされ、2位で襷を受け、前をいく青山学院大を追った。

 だが、岡田の18秒後にスタートした駒澤大のエース格で、洛南高の2学年先輩にあたる佐藤圭汰(当時3年)に4.6km地点で追いつかれ、しばらく並走するも11km付近で置いていかれた。区間7位とまずまずの走りだったものの、佐藤にまざまざと力の差を見せつけられた。

「佐藤圭汰先輩には、まったく歯が立たなかったです。追いつかれてからはついていこうと思っていたのですが、それで精一杯で何もできなかったです。まだまだ力が足りないと痛感しました」

 高校時代から佐藤のすごさを感じていたとはいえ、大学でもあらためて違いを見せつけられ、落ちこんだ。だが、同時にメラメラしたものも湧き上がってきた。このままじゃ終われない。この差は何なのか。そう考えた時、一緒に走ったことでわかったことがあった。

「自分は、単純に長い距離に対応できていないと思ったんです」

 11km以降に生じた差は、スピードだけでなくスタミナの差でもあると認識したのだ。

 今季、春のトラックシーズンは例年通りにスピード強化を図るとともに、国際舞台での経験を積むべく、ワールドユニバーシティゲームズ(7月)の10000m出場を目指した。その権利を得るために出場した4月の日本学生個人選手権では、勝負どころで前にいけず、6位に終わった。その後もレースには出場したが、思うような結果を残せなかった。

 そうして迎えたこの夏は、スタミナを強化すべく連日走りこんだ。朝のジョグの量を増やすなどして、8月の月間走行距離は1000kmを超えた。

「スピードをロードの強さに転化するのが自分にとって大きなテーマだったので、夏にロードで走りこみました。そのおかげでハーフ(の距離)への対応は昨年よりも早くできましたし、(10月の)出雲駅伝の1区で区間賞を獲れたので、自信になりました」

 出雲駅伝でチームは10位に終わったが、岡田個人は結果を出した。成長しているという手応えも感じられた。

「1年生が入ってきて後輩ができたので、チームの主力という自覚が出てきましたし、レースでも先輩たちに頼るのではなく、自分がチームを勝たせるという自覚を持てるようになりました。そこは成長できたところかなと思います」

【八王子での勢いを箱根につないでいきたい】

 続く11月2日の全日本大学駅伝では、駒大の佐藤をはじめ、青山学院大の黒田朝日(4年)、早稲田大の山口智規(4年)など各校のエースが並ぶ7区に配された。なかでも佐藤を意識した。悔しい思いをした箱根から1年も経っていないが、出雲1区で区間賞を獲った自信がある。どこまで戦えるか、楽しみにしていた。

 岡田は、トップの駒大から1分04秒差の2位で襷を受けた。前回の箱根7区とは展開が逆だが、少しでも差を詰めようと前を走る佐藤の背中を追った。ところが、先輩の姿はどんどん見えなくなり、後ろから来た黒田に15.6km付近で抜かれた。3位で襷を渡した時、駒大との差は2分21秒に開いていた。

「出雲の後、少し調子を崩したのですが、全日本の時には右肩上がりになりかけていて、調子は悪くなかったんです。でも、レースは甘くなかった。佐藤先輩とは、前回の箱根でかなりの実力差を感じました。今年は出雲で走れたので、多少の自信を持って対戦させていただいたのですが、まったく歯が立たなくて......。(佐藤先輩との)距離は全然縮まっていないんだなと感じました。でも、逆に力が及ばなかったことで、自分の目指すべき場所、足りないところが理解できたので、それを生かして箱根駅伝に備えたいと思います」

 岡田が課題に感じたのは、前回の箱根で感じたこととほぼ同じだった。

「前回の箱根も、今回の全日本も、10kmくらいまではわりといいペースで走れるんです。そこまでなら佐藤先輩についていけるんですけど、そこから先、20kmになるとついていけない。徐々に長い距離を走れるようになっていますが、まだ距離対応が十分にできていません」

 ただ、やられてばかりではない。岡田は這い上がる強さを持っている。11月22日の八王子ロングディスタンスの10000mでは、全日本で負けた悔しさをぶつけ、すばらしい走りを見せた。自身初の27分台、そして中大記録となる27分37秒06の自己ベストをマークした。

「これは自信になりました。佐藤先輩との差はまだありますが、全日本の時よりも次の箱根駅伝のほうがいい走りができると思います。八王子での勢いをそのまま箱根につなげていきたいと思います」

 箱根の希望区間は4区、あるいは7区。どちらも今回のキーになる区間と言われており、また、7区を走ることになれば、前回のリベンジを目指すことになる。

「個人的には4区か7区でゲームチェンジャー的な役割を果たしたいです。もし、7区になったら、今度はしっかり攻略したいですね。前回は、後半にアップダウンがあるのにもかかわらず、前半に少し力を使いすぎました。だから、前半は力をため、後半にペースを上げていくのが大事だと思います。前回の佐藤先輩の区間記録(1時間00分43秒)に迫るタイムで走りたいと思います。

 もし、佐藤先輩と同じ区間を走ることになったら、もう一度並走をして、なんなら勝って、自分の中にある"佐藤圭汰先輩という壁"を乗り越えたいと思います」

 岡田と佐藤の勝負が優勝の趨勢を決める。果たして、そんな痺れるような展開が実現するのか。いずれにしても、名門・中大のエースへの道を歩む岡田の走りに注目したい。

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