NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第2節(リーグ…

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第2節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年12月21日(日)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 37-19 浦安D-Rocks

「緊張する暇もなかった」突然の出番。リーグワンデビューは雨中の15分間


埼玉パナソニックワイルドナイツの李錦寿選手。一時交替での出場だったが、リーグワンの舞台をしっかり踏みしめた

時計の針が後半15分を過ぎたころだった。空気がフッと冷える。雨が降り出し、スタンドでは雨合羽を取り出す人の動きが一斉に増えた。そのざわめきと重なるように、グラウンドへと呼び込まれたのが、入団1年目のスクラムハーフ・李錦寿。これがリーグワンでのデビュー戦だった。

メンバー入りを告げられたのは、週のはじめ。「ファーストキャップだったので、緊張もありましたし、楽しみな気持ちもあった。半分、半分ぐらいでした」と振り返る。キックオフ48時間前にメンバーが発表されると、家族や学生時代の仲間、恩師らから祝福と激励のメッセージが届いたという。

埼玉パナソニックワイルドナイツのホストゲーム恒例、選手入場後の集合写真撮影時のこと。キャプテンの坂手淳史は腕を広げ、李を最前列の中央へと招き入れた。

「僕のデビュー戦で、記念すべき試合だから『真ん中に入りな』と場所を譲ってくれました。『さすがキャプテンやな』と思います」

その何気ない気遣いが、ルーキーの胸に深く刻まれた。

グラウンドに立ったのは後半18分。先発のスクラムハーフがHIAとなり、急きょ一時交替での出場だった。突然の出番ゆえ「緊張する暇もなかった」と笑う。

ファーストプレーはスクラム。ボールを持ち出した相手チームのナンバーエイトへ、迷いなくタックルに入った。二度、敵陣深くでキックパスを蹴り上げトライも狙った。スペースを見つけての選択だった。

「自分のいまの実力を全力で出すことにフォーカスしました。うまくやろうとし過ぎず、練習でやってきたことを出そうと思ってプレーしました」

言葉どおり、思い切りのあるプレーで会場を沸かせた。

この日は前半からフルバック、スタンドオフと負傷者が相次ぎ、バックスのリザーブは李のみという綱渡りのような状況だった。HIA検査を終えた萩原周が無事にピッチへ戻れたことで、李はいったんベンチへ。万が一に備え、交替要員がいなくなる事態を避けるためだった。

「結果的にノーサイドまで、誰にも何もなかったので良かったです」

公式記録上の出場時間は、後半18分から後半32分までの15分間となったが、雨の中で刻んだ、初めての一歩。その経験を糧に、李は胸に誓う。「ワイルドナイツに貢献できる選手になれるよう、少しでも成長します」。

(原田友莉子)

埼玉パナソニックワイルドナイツ


埼玉パナソニックワイルドナイツの金沢篤ヘッドコーチ(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
金沢篤ヘッドコーチ

「なかなか難しい時間帯も今日の試合の中ではありましたが、選手がよく我慢をしながらあのプレーをし続けて、結果、しっかり勝利したのは、選手の頑張りやそれに値する努力があったからだと思います」

──前半に二人の負傷者が出る難しい展開でしたが、途中出場からフルバックやスタンドオフを務めた齊藤誉哉選手の評価と、山沢拓也選手のけがの状況について教えてください。

「山沢のけがについては、まだレポートを受け取っていないため、現時点で詳しい状況は分かっていません。確認できるまでには、少し時間がかかると思います。齊藤については、彼の実力を理解した上でメンバーに入れていますので、期待どおりのプレーをしてくれたと感じています。想定より早いタイミングでの出場になりましたが、ゲームを崩すことなく、随所で良いプレーを見せてくれました」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「たくさんのミスがあり、難しい時間帯もありましたが、それでも勝つことは特別なこと。ホストスタジアムである熊谷での開幕戦を勝利で終えられたことも良かったです。天候がやや不安定な中でも、多くのファンの方が会場に足を運んでくださいました。その声援の中で、すごく楽しく、気持ちよくプレーすることができました」

──ミスが多かったとのことですが、具体的にはどのような点でしょうか。また、前節の開幕戦では完封しましたが、今日のディフェンスについて想定外だった点があれば教えてください。

「試合映像はまだ見ていませんが、プレーしていた感覚としては、ハンドリングエラーが多かったことや、ゴール前で取り切れなかった場面がありました。また、ボールを再獲得してもエリアを取れなかったり、キックミスが出たりして、エリアマネジメントの部分で自陣に留まる時間が長くなってしまいました。エリアのコントロール自体は主にバックスの役割ですが、キックに至るまでの過程にはフォワードも関わります。9番や10番といったキックを担う選手に対するプロテクトが、今日は甘かったと感じています。そうした目に見えるミスだけでなく、目に見えないミスも多くありました。その積み重ねが試合を難しくし、相手ボールで自陣に居続ける展開につながったと捉えています。ディフェンス自体は良いものがあり、前半の立ち上がりも良いディフェンスをしていました。ただ、自分たちがボールを持ったときに、良いエグジット(脱出)ができないと、再びディフェンスから始めなければなりません。ディフェンスから始まることを僕たちは望んでいます。その回数が多過ぎたなと考えています」

浦安D-Rocks


浦安D-Rocksのグラハム・ラウンツリー ヘッドコーチ(左)、藤村琉士キャプテン

浦安D-Rocks
グラハム・ラウンツリー ヘッドコーチ

「こんにちは。ワイルドナイツさんは今日、あらためて素晴らしいチームとしての実力を見せたと思います。特に最後のクォーター(ラスト20分間)の戦い方は見事でした。その相手に対して、自分たちも簡単にはやらせず、手こずらせる局面を作ることはできたと感じています。ただ、その中でエラーが多く出てしまった点については、しっかり振り返る必要があります。特にペナルティやセットピースのエラーなど、基礎的な部分でのミスが目立ちました。そこを重点的に見直し、あらためて準備を進めていきたいと思います。一方で、選手たちの戦う姿勢については、非常に良い部分が見られました。その点はポジティブに捉えています。ラグビーの基礎に立ち返りながら、しっかりレビューしていきます」

──埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)のブレイクダウンに対して、どのような準備をしてきたのでしょうか。また、実際に試合を見ての感想を教えてください。

「埼玉WKさんのディフェンスブレイクダウンでのプレッシャーについては、チームとして警戒していました。あわせてレフリーの傾向分析も行い、アタック側のブレイクダウンに厳しい判定が出やすい点も把握した上で準備を進めてきました。ただ試合を振り返ると、ブレイクダウンへの寄りの緊急性やスピードを、一貫して発揮することができていませんでした」

浦安D-Rocks
藤村琉士キャプテン

「自分たちがうまく機能している時間帯は、良いラグビーができていたと思います。ただ機能しなくなったときに、ラグビーの当たり前の部分が十分にできていなかったと感じています。埼玉WKさんは、その当たり前の部分を終始一貫してやり続けていました。自分たちも、プランをしっかり遂行できるよう練習を重ねていきたいと思います」

──ブレイクダウンで相手に絡まれた場面について、どのあたりに悔しさを感じていますか。

「まずはボールキャリアーが前に出て、そこでブレイクダウンに寄ることが理想なのですが、それができていませんでした。緊急性の高い場面で遅れたことがあったので、そこが悔やまれます」