第70回有馬記念・G1は12月28日、中山競馬場の芝2500メートルで行われる。早見和真氏原作の大ヒットドラマ「ザ・ロ…

 第70回有馬記念・G1は12月28日、中山競馬場の芝2500メートルで行われる。早見和真氏原作の大ヒットドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」で注目を集めた北海道・日高地区出身の馬。昔ながらの伝統ある牧場出身で、有馬記念を制した名馬を5回にわたって取り上げる。第3回は12年に制したゴールドシップ(内田博幸騎手が騎乗)。

 レースはどよめきで幕を開けた。出遅れたゴールドシップは、ゲートで立ち上がったルーラーシップとともに最後方からの競馬。ただでさえ機動力が求められる中山の2500メートル。皐月賞、菊花賞を制して1番人気に支持された“怪物候補”でも、厳しいかと思われた。

 しかし、3歳馬は周囲の不安をよそにケタ外れのスタミナを発揮する。残り800メートル過ぎからルーラーを連れ立って外を豪快にまくると、上がり3ハロン最速34秒9をマーク。最後は内のオーシャンブルーに1馬身半差をつけての完勝だった。

 ゴール入線時には、鞍上の内田も思わず観客席へ向けて左手で大きく投げキッス。高々と左腕を突き上げた後、首筋をポンポンと叩いて愛馬をねぎらう。引き揚げてくるとホッとした表情を浮かべた。

 「強かった。本当に頭が下がります。スタートは僕が乗ったなかで一番良くなかったけど、腹をくくって最初の4つのコーナーはロスのないように回った。最後のコーナーは外を回らされたけど、この馬の力なら突き抜けるんじゃないかと思っていました」。絶望から歓喜へ―。まるでショーでも見せられているかのような濃密な2分半は、芦毛の怪物の“馬生”そのものだった。

 信頼していた通りの結果を導き出した人馬に「ありがとうという気持ち。本当に感謝です」と伝えたのは須貝調教師。検量室前で待機していたが待ち切れず、馬場まで迎えに出て、最高のパフォーマンスを演じた名手と喜びを分かち合った。

 “芦毛の怪物”や“白い怪物”と呼ばれたゴールドシップは北海道日高町・出口牧場の生産。通算28戦13勝(うち海外1戦0勝)。主な勝ち鞍は12年の皐月賞、菊花賞、有馬記念、13、14年の宝塚記念、15年の天皇賞・春などで、15年の有馬記念(8着)を最後に現役引退。現在はビッグレッドファーム(北海道新冠町)で種牡馬として、今年の宝塚記念勝ち馬で有馬記念にも出走するメイショウタバルなどを出している。有馬記念での父子制覇といえば、23年のドウデュース(父は05年勝ち馬のハーツクライ)以来、2年ぶりで7例目となるが、日高の馬だけに限ればシンボリルドルフートウカイテイオーに続く2例目の快挙となる。