NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第2節(リーグ…
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第2節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年12月21日(日)13:40 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 17-10 横浜キヤノンイーグルス
言葉で支え、背中で導く。勝利とともに受け渡されたキャプテンのバトン

自らも1トライ、三菱重工相模原ダイナボアーズの吉田杏キャプテン
「ごー、よん、さん……」
緑に染まったスタンドにカウントダウンの声が響く。息をのむ観客の視線の先で、激闘の“神奈川ダービー”はついに決着を迎えた。
勝者は三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)。勝利の瞬間、歓声とともにグラウンドに刻まれたのは、キャプテンのバトンが受け渡された確かな証だった。
試合を動かしたのは、昨季までキャプテンとしてチームをけん引した岩村昂太だ。前半、自ら二つのトライを奪い、チームに勢いをもたらす。後半には今季キャプテンを務める吉田杏もトライ。新旧キャプテンによる得点の連鎖に、岩村は「(2回のトライキャンセルの判定を経て)3度目の正直やな、ナイス」と吉田へ歩み寄り、笑顔で声を掛けて、頭をポンと叩いた。
二人のリーダーシップは対照的だ。岩村は「僕はどちらかといえばしゃべるのが得意というか、コミュニケーションを取るのが得意です。杏は先陣を切って体を張り、背中で見せるタイプ」と語る。
キャプテンの重圧を誰よりも知る岩村は「自分はコミュニケーションでサポートする役割」と、新キャプテンがプレーに専念できるよう対話でチームを支えてきた。
最大の試練は後半26分、レッドカードによる退場者を出した場面だった。数的不利となって逆転負けを喫した前節の浦安D-Rocks戦の苦い記憶が浮かぶ、14人での戦いを余儀なくされたピンチ。しかし、ここで発揮されたのが、相模原DBのDNAである“ハードワーク”だった。
「仲間のために体を張り続ける。誰にでもできることではないことをやり抜く。その“ハート”の部分を全員が行動に移せた」と吉田が言えば、岩村も「全員がしっかりハードワークして走って、相手を止めるのがダイナボアーズのディフェンス」と呼応する。数的不利の中でもギアを上げた選手たちは、最後は自陣ゴール前で敵の圧力をはね返した。
試合後、岩村は「杏もほっとしているのではないか。勝ちをみんなでプレゼントできて良かった」と、新キャプテンの初勝利を自分のことのように喜んだ。言葉で導く岩村と、背中で語る吉田。この二人の信頼関係と役割の補完こそが、逆境をはね返す強固な絆を生んだのかもしれない。
チームのDNAは、キャプテンのバトンとともに、より熱く、より深く、新時代のリーダーへと受け継がれた。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、吉田杏キャプテン
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「今日の試合は本当にタフな試合でした。相手の攻撃は非常に強く、われわれのディフェンスも良かったですが、判断が非常に難しい場面もありました。横浜キヤノンイーグルスさんのボールムーブメントは素晴らしかったです。最後の5分間はギリギリの展開でしたが、われわれは粘り強く戦いました。選手たちは今日、本当に一生懸命プレーしてくれました」
──前回の浦安D-Rocks戦でも14人で戦う時間が長かったですが、今日も最後に14人となる場面がありました。人数が減った際の対応力について、どのように準備されていたのでしょうか。
「最後は14人でうまく対応できました。もちろんフィールドには常に15人残しておきたいですが、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)が介入するいまのラグビーではカードが出ることも多く、それに備える必要があります。今週も誰かを欠く事態を想定して準備していました。スクラムを7人で組むのは挑戦でしたが、判断を下さなければなりませんでした。最後の5分間に見せたチームのキャラクター、情熱、粘り強さは、まさにダイナボアーズらしさであり、150年続く三菱重工業のDNAを見せることができたと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
吉田杏キャプテン
「すごくタフな試合でしたが、最後勝ち切ることができて非常に満足しています。最後の5分間、自分たちの DNA であるハードワークや泥臭く我慢する姿勢を、グラウンドで証明できたのではないかと思います」
──最後の5分間の粘りについて「DNA」という言葉を使われましたが、具体的に日頃の練習のどのような部分がそこにつながったと感じますか。
「自分たちが積み上げてきたトレーニング、そしてハードワークです。言葉にすると簡単ですが、仲間のために体を張り続ける、誰にでもできることではないことをやり抜く。そのハートの部分を全員が行動に移せた結果だと思います」
横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスのレオン・マクドナルド ヘッドコーチ(右)、古川聖人バイスキャプテン
横浜キヤノンイーグルス
レオン・マクドナルド ヘッドコーチ
「今日、私たちが求めていた結果が得られなかったことは非常に残念です。今週はけが人が出るなど少し混乱した週となり、いくつかのポジション変更がありました。それを踏まえると、今日も多くの場面で誇りに思えるプレーが見られたと思います。
しかし、肝心な勝負どころの場面で十分なプレーができませんでした。2週連続で、試合終盤にスコアを狙い、勝利に挑戦する機会がありながら、それをモノにすることができませんでした。その点を反省し、今後に向けて正しい解決策を確実にもてるようにしていきたいと思います」
──2週連続で「仕留める」ところを修正したいとおっしゃっていましたが、そのように考える要因はどのあたりにありますか?
「先週の試合を反省すると、ディフェンスの面で許してはならない簡単なトライを許してしまった時間帯がありました。イエローカードが出ていた時間帯に、二つの簡単なトライを許したことが反省点でした。しかし、今日はディフェンスの成長が見られ、フィジカル面やラインスピード、相手の勢いを止めるところが修正できていたと思います。
今週の反省点は、トライを取り切るという部分です。多くのチャンスを作っていながら、トライラインを越える能力が欠けていました。フィニッシュの精度を上げていく必要があります」
横浜キヤノンイーグルス
古川聖人バイスキャプテン
「自分も(ヘッドコーチが話したことと)同じで、まずこの結果に関しては本当に残念です。ただ、18試合ある中のまだ2試合が終わっただけというところもあります。ここで下を向いて、いろいろなことのせいにするのは、簡単な選択肢です。ただ、僕たちは良いコーチ、良いチームメート、良いマネジメントをもっていると信じています。このイーグルスというチームを信じて、前に進みたいです」
──勝ち切れなかった、トライを取り切れなかった点をどう感じていますか。
「自分たちはボールを大切にしたい、ボールファーストなチームカルチャーがある中で、トライを1本取りたいという気持ちが先行しすぎて、ボールを大事にするディテールの部分が欠けてしまったのかなと思います。自分たちがもう少しフェーズを重ねていけばチャンスは絶対に来るチームだと思っていますが、今日は少し遠い先のスコアや試合に勝つという結果を意識し過ぎてしまったのかもしれません。目の前のプロセス、目の前のプレーをしっかりやり続けることに、来週はフォーカスしたいです」