◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山競馬場・芝2500メートル)=12月23日、栗東トレセン 今年の有馬記念(2…

◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山競馬場・芝2500メートル)=12月23日、栗東トレセン

 今年の有馬記念(28日、中山)の特集企画「有馬のザ・ロイヤルファミリー」第3回は、栗東の友道康夫調教師(62)と友道優一助手(29)の親子。アドマイヤテラで一昨年のドウデュースに続く2勝目を狙う父と、高柳大厩舎に所属し皐月賞馬ミュージアムマイルで参戦する長男が、グランプリでの競演へ胸に秘める思いを語った。

 気づけばドラマの中にいる。友道調教師の有馬記念は何かが起きる。一昨年は武豊とドウデュースの復活V。昨年はドウデュースがレース2日前に突然の出走取消。そして、今年はジャパンCのカラ馬での先頭ゴールが話題を集め、ファン投票で最後に“まくった”アドマイヤテラで参戦する。「ファン投票で選ばれることは光栄ですし、ありがたいです」と感謝した。

 今年はさらにドラマがある。息子の優一助手が調教をつけるミュージアムマイルとの“競演”だ。小学校に入る前から競馬を見て、血統にも詳しかった一人息子は16年にマカヒキの日本ダービーVに立ち会い、凱旋門賞遠征(フランス)にも帯同。同じ場所で働くようになったのは自然な流れだった。「ちゃんと乗れているか心配の方が多い。ミュージアムマイルの話とか聞いたりするけど、ジャッジは冷静だと思う。やはり一緒の仕事をしてほしかったというのはあったかな」と穏やかな表情で語る。

 今、優一さんは調教師を目指している。「僕は何のしがらみもなかったから、何しようが勝手だったけど、僕の息子として見られる面はあるとは思う」。大学卒業後に裸一貫で競馬界へ飛び込んで35年以上。勝負の世界の厳しさは十分に分かっている。それでも定年引退まで10年を切った今、願いは強くなっている。「なってほしい。継いでくれればね」。継承への思いを託したい我が子と初めて対戦するグランプリ。間近で成長した姿を見届ける。(山本 武志)

 有馬記念といえば年の瀬の盛大なグランプリ。しかし友道調教師の息子・優一助手には、ほろ苦い記憶の方が多い。父は昨年まで延べ18頭を出走させているが、勝利は23年のドウデュースのみ。「うちは、年末はいい思い出なく終わってることが多い」と苦笑する。

 それでも印象深いのは14年。ヴィルシーナのラストランだ。当時は学生で競馬に強い関心はなく、全て2着だった牝馬3冠も、ヴィクトリアマイルの連覇もうろ覚え。「(友道厩舎で)複数G1を勝ったのはこの子が初めて。思い入れも少しずつ芽生えてきたから、せめて引退レースぐらいは」。自ら中山へ足を運び、名牝を見送った。

 今は調教師試験の勉強にも励む。父の名前はついて回るが、道のりをそのままたどるわけではない。「親父は獣医の免許を持っているけど、馬乗りはそんなにやってない。僕は乗馬をさせてもらってたから、そこの差は大きいかな」と、異なる経験値を意識。父の定年引退まではあと8年で、「親父が定年するまでには受かりたい」と目標を掲げる。

 今年は、自身が調教をつけるミュージアムマイルで挑戦。「大きなレースに出られるのは、厩舎一丸となって楽しみにしている」と士気を高めている。競馬の世界に入ってから、初めて臨む祭典。“いい思い出”をつくり、25年を締めくくる。(水納 愛美)

 ◆友道 康夫(ともみち・やすお)1963年8月11日、兵庫県生まれ。62歳。大阪府立大(当時)卒業後の89年に栗東トレセン入り。浅見国一厩舎、松田国英厩舎での助手を経て、2002年に開業。18、24年に最多賞金獲得調教師賞、20年に最高勝率調教師賞を受賞。JRA通算5467戦804勝。重賞78勝でG1は現役最多タイの23勝。海外でもG1・2勝を挙げる。

 ◆友道 優一(ともみち・ゆういち)1996年2月13日、滋賀県生まれ。29歳。小学5年から乗馬を始め、大学在学中に英国、愛国で研修。卒業後はノーザンファーム空港、白井牧場などで勤務した。23年1月から栗東・高柳大厩舎に加入。攻め馬専門の助手として、昨年のケンタッキーダービー5着のテーオーパスワードなどの調教をつける。趣味はダーツ。

 ◆「ザ・ロイヤルファミリー」 作家の早見和真氏が競馬の世界を舞台に描いた小説で、原作は19年に新潮社から出版された。19年度JRA賞馬事文化賞、第33回山本周五郎賞を受賞し、今年10月から放送されたTBS系日曜劇場でドラマ化。血と夢の「継承」がテーマで、俳優・妻夫木聡が馬主を支える主人公の栗須栄治を演じた。