Jリーグ屈指の名門である鹿島アントラーズのユースチームが、3冠を達成した。偉業であることは間違いない。だが、サッカージ…

 Jリーグ屈指の名門である鹿島アントラーズのユースチームが、3冠を達成した。偉業であることは間違いない。だが、サッカージャーナリスト後藤健生の目には、まだ成長の余地があると映っている。

■目を向けるべき問題点

「鹿島のフィロソフィー」ということを考えれば、反省すべきはせっかく1点リードしながら、後半に相手にリズムを与えて同点とされたところなのかもしれない。しっかりとゲームをコントロールしながら45分間を戦って、前半の1点を守り切って(あるいは、2点目を奪って)ゲームを終わらせるのが本来の鹿島の戦いなのだろう。

 だが、この試合の流れを考えると、僕は最も反省すべきは「2点目が取れなかったこと」だったような気がする。

 もちろん、「1点を守り切れなかったこと」の課題と「2点目が取れなかったこと」の課題には同程度の重みがある。

 しかし、どちらに目を向けるかということが重要なポイントなのではないか。

 鹿島というクラブの「フィロソフィー」を考えると、もしかしたら鹿島の首脳陣は「1点を守り切れなかったこと」を課題視しているかもしれない(これは僕のまったくの想像である。鹿島のスタッフに質問をしても正直に答えが返ってくるとは思えない)。

 だが、あれだけの攻撃のタレントがおり、実際、110分間のうち70分程度はゲームをコントロールして、チャンスをつくり続けていたのだ。「どうして2点目が取れなかったのか」が、不思議にも思えてくる。

■なぜ2点目を取れなかったのか

 もちろん、サッカーという競技の特性として、結果として点が入らなかったのは仕方がない。サッカーでは攻撃の形をつくり、相手ゴール前までボールを運ぶ回数は、技術や戦術を駆使して増やすことができるが、その後のフィニッシュ=ボールをゴールの枠内に入れる作業はまったく別の要素になる。ある意味、相手のDFやGKのパフォーマンスにもかかっているし、あるいは運・不運の問題でもある。

 この試合でも、吉田湊海のヘディングシュートがゴールポストに当たった場面があった。あれが入るか入らないかは、まさに運次第とも言えるのだ。

 だが、それにしても、やはりあれだけチャンスがあったのだから、そしてシュート技術のある選手がそろっていたのだから、鹿島は2点目を取っておくべきだったろう。

 なぜ、鹿島は2点目を取り切れなかったのか?

 前線でのプレッシャーで相手をコントロールすることで相手の攻めを抑え込み、同時に高い位置でボールを奪ってカウンターで攻める。そして、深いパスで相手守備陣を押しこんで攻撃のゾーンを上げていく。

 これは鹿島の絶対的な強みではある。

 プレー強度を上げてボールの奪い合いに勝つ……。これは、フットボールの原則である。時代が変わり、戦術がどんなに発展しようとも、ボールの奪い合いこそがすべてと言ってもいい。従って、その部分で優位に立てる鹿島のサッカーは、戦術的に封じ込めようのないものではある。

■トップチームにもつながる問題点

 だが、それでも一つのパターンの攻撃を繰り返していれば相手は対応ができるし、相手を分析してそのストロングポイントを消すのはJリーグというリーグの特徴でもある。2025年にJリーグのタイトルを奪還した鹿島だ。当然、次のシーズンには対戦相手は鹿島対策を講じてくる。

 Jリーグの秋春制移行に伴って、2026年には「百年構想リーグ」という、昇降格に関わらないトーナメントが実施される。ここでは、次のシーズン(2026-27シーズン)に向けてのさまざまな準備やトライが行われることだろう(降格がないので、思い切ったテストができる)。

 当然、各チームが鹿島対策を試みてくるだろう。

 とすれば、鹿島がそういった対策を打ち破ってこれからも勝ち続けて「常勝軍団」の地位を取り戻すためには、戦い方のバリエーションを増やす必要がある。

 それは、ユース年代で勝ち続けるためにも必要なことだろう。だからこそ、神戸とのファイナルで「2点目が取れなかったこと」をどう考えるかが重要になるのだ。

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