<第14回日刊スポーツ大相撲大賞(1)>日本相撲協会の財団法人設立100周年という節目を迎えた今年は、2横綱1大関が誕生…

<第14回日刊スポーツ大相撲大賞(1)>

日本相撲協会の財団法人設立100周年という節目を迎えた今年は、2横綱1大関が誕生する華やかな1年となった。横綱照ノ富士が場所中に引退、入れ替わるように場所後に豊昇龍が横綱に昇進した、初場所から注目度が高かった。大の里は横綱に、安青錦は大関に史上最速で昇進。今年全6場所で幕内を務めた28人の力士を対象とした、年末恒例の「第14回日刊スポーツ大相撲大賞」。前後編、全2回の1回目は結びの一番に強い王鵬(25=大嶽)を紹介する。

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祖父で「昭和の大横綱」の大鵬譲りという言葉だけでは、もはや説明がつかない領域だ。王鵬は今年も、結びの一番に強かった。務める回数が多い横綱、大関を除き、結びの一番の白星3つは、新大関安青錦と並ぶ最多。安青錦は初場所が十両で「全6場所幕内」という対象から外れながら、大関に昇進したことも特筆すべき点だが、王鵬も負けていない。3勝のうち2勝は金星。豊昇龍、大の里の両横綱から挙げている。

信念があるから、結びの一番で強さを発揮できる。冬巡業中、この結果を伝えると、支度部屋で休めていた体を起こして熱弁を振るった。「やっぱり自分は、その日の最後の相撲って大事だと思っているんです。お客さんのために相撲を取っているわけではないですけど、見た人がその日1日を『楽しかったな』って思うかどうかは、結びの一番が大きい。だから、たとえ負けても、自分らしく取ろうと心掛けています」。最高位関脇の王鵬にとって、結びの一番は常に挑戦者の立場。全力で挑み続けた。

秋場所こそ両横綱に連敗して通算勝率は落ちたが、初めて立った昨年春場所の照ノ富士戦以来、結びの一番は通算8勝3敗。勝率は驚異の72・7%だ。秋場所で2連敗する前の名古屋場所終了時点では、三役以下としてはさらに異次元の勝率88・9%だった。それだけに「15日間、集中力を切らさずにいきたい。そして1つでも番付を上げられるように」と力説。結びの一番の強さを常時発揮できた時、優勝決定戦に進んだ初場所の再来と看板力士への道が開ける。【高田文太】