2024年の日本ツアー年間女王・竹田麗央は25年、米国女子ツアー(LPGAツアー)で1年を過ごした。3月の「ブルーベイ…
2024年の日本ツアー年間女王・竹田麗央は25年、米国女子ツアー(LPGAツアー)で1年を過ごした。3月の「ブルーベイLPGA」で優勝し、年間レース(CMEグローブ ポイントランキング)で4位に入る活躍を見せたスーパールーキーはまだ22歳。単独インタビューでスマホのカメラロールを見渡すと、コースの内外で新天地を全力で楽しむ様子が見えてきた!(取材・構成/桂川洋一)
“チーム山田”には別案が…カメラロール見せて!竹田麗央のLPGAトラベル【後編】
6月の「ダウ選手権」でルーキーペアを組んだ“チーム山田”はその後、競い合うようにシーズンを駆け抜けた。8月のメジャー最終戦(第5戦)「AIG女子オープン」(全英女子)は初日から3日間、同組でプレーし、4位で終えた竹田は山下美夢有の初優勝を見届ける格好になった。
ラウンド中は火花を散らし合う関係であっても、コースの外での結束は強いまま。8月、マサチューセッツ州での「FM選手権」の後には、ともにシューズ契約を結ぶニューバランス社の本社へ。ボストン・レッドソックスのフェンウェイ・パークを訪れて野球観戦もした。当地の名物はシーフード。「ザリガニみたいなのが美味しかった。あ、ロブスター。ロブスターサンドです」
少し、時を戻そう。2025年の旅が最も目まぐるしく、充実していたと言えそうなのが、7月に始まる欧州遠征とその直後。スイスとの国境近くで行われるフランスでのメジャー第4戦「アムンディ エビアン選手権」(11位)の後、竹田はまず“アルプスの女王”を堪能した。「去年(24年)出たときは(モンブラン山麓)シャモニーというところに行ったので、ことしはマッターホルンに」
欧州での旅を計画したのは5月にメキシコ遠征に出向いたころだったという。山々に癒された後はパリへ。凱旋門、エッフェル塔をカメラに収め、中でもルーブル美術館がお気に入りになった。「モナ・リザは意外と小さくて。周りに人がいっぱいでした。一番(心に)残ったのは、勝利の女神、ニケですね」
頭と腕が失われた『サモトラケ島のニケ(ニーケー/NIKE)像』は、某スポーツメーカーの由来となったことでも知られる大理石彫刻。「今にも動き出しそうに見える角度があるらしくて、自分でココかな…と思って撮影しました。動き出しそうな気がしません?」
像は女神が空から船の舳先(へさき)に降り立ったところをイメージ。館内の空間も意識した壮大な写真が撮影できた。
パリからは英国イングランドのロンドンへ。映画『ハリー・ポッター』シリーズのロケ地としても知られる“魔法界への入り口”、キングス・クロス駅も訪れた。「(映画を)観たことはないんですけど…」
スコットランドでの試合、ウェールズでの全英女子を終えた後、一時帰国する選手も多かった1週のオフも竹田は海の向こうに残り、大西洋を渡って米国での連戦に備えた。カリフォルニア州サクラメントの知人を訪ねてヨセミテ国立公園に行ってから、ロサンゼルスへ。今度はドジャースタジアムで野球を観戦した。待ちに待った大谷翔平選手の応援。実は1月、ハワイ合宿の前に旅行でロスを訪れた際にユニフォームを購入し、欧州に飛び立つ直前にスーツケースに忍ばせていた。
「全打席、動画で撮りました。3打席目でやっと打ってくれました!」。8月9日、ブルージェイズ戦で放ったバックスクリーンへの豪快な一発は球団史上最速となるシーズン40号ホームランだった。
竹田麗央は大谷翔平弾でリフレッシュ 「全英女子」で山下美夢有との“差”は何だったのか
ちなみにロスでは、波乗りの聖地として名高いハンティントンビーチでサーフィンに挑戦! 「知り合いの方に誘われてやってみました。いかにも、できそうに見えますでしょう…。初めてやったんですけど、もう、やらないです。引退しました」。10月には「ロッテ選手権」でハワイに行ったが、「サーフィンはしてません。引退したので」。常夏の島では、パイナップル農園に足を運び、ラウンド後は毎日、大好きなアサイーボウルを楽しんだ。
突然ですが、竹田さん、一番好きな食べ物って何ですか? 「1位はシマアジです。高校2年生の冬にお寿司屋さんで食べて感動しました。このオフにアメリカから帰ってからも食べに行きました」。ついでに2位以下も聞いてみよう。「2位はイチゴ大福。3位はナマコです。アサイーボウルは、うーん…6位ぐらいですね」
高校時代に“出会った”大好物 竹田麗央はツアーメンバー初優勝を「シマアジ」でお祝い
世界ランク1位に誘われて
新人にしてアジアシリーズにも余裕で進出し、交流の輪は日本人選手の外にも広がった。10月、韓国での「BMW女子選手権」で畑岡奈紗、勝みなみ、山下、キム・アリム、チェ・ヘジンらと食事に。翌週マレーシアでの「メイバンク選手権」では現在の世界ランキング1位、ジーノ・ティティクル(タイ)に誘われ、夕食をともにした。
「ツアーであいさつをしたとき、いつも誰よりも素敵な笑顔で返してくれるのはリオとリオのママ」だとティティクルは言う。女子ゴルフナンバーワン選手のお眼鏡にかなった竹田は「韓国での試合のときに『来週ごはんに行こう』と誘っていただいて、マレーシアでは私と母、ティティクルとキャディさん、コーチさんと5人で初めてごはんに行きました。私は楽しかったんですけど、英語ができないから翻訳した画面をスマホで見せたりして」と懸命にコミュニケーションを取った。
交流はその後も続き、フロリダでの最終戦「CMEグループ ツアー選手権」でも食卓を囲んだ。「『来年は出る試合を考えたほうがイイよ』と言われました。ティティクルさんは2週か3週連続で出てオフ、長くても4週連続にするスケジュールを組むそうです」。ぶっ通しの8連戦でシーズンを締めくくったルーキーに、世界一もさぞや驚いたことだろう。
ディズニーでフィニッシュ
年間ポイントレース4位、ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いでは山下に次ぐ2位。充実の一年の最後の旅先は、フロリダ・オーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートだった。「めっちゃ楽しかあったです! アトラクションも日本とは違うものがあって、四つん這いになる感じで乗る『トロン』というのが、めちゃくちゃ速くて面白かった!」。長いシーズンを終えてすぐに絶叫マシンに興じるのだから、22歳は疲れを知らない。
「あなたは米ツアーに向いている」
「小さい頃、自分は“世界”なんて見ていなかったし、興味も意識もそんなになかったんです」と言う。プロ入りして1年ほど経ったころから、飛距離や球の高さを認められるうちに、「あなたはきっと米ツアーに向いている」という周囲の声に背中を押されて今がある。
「去年(国内ツアーで年間女王になった24年)も楽しかったんですけど、『日本ツアーで1番になっても、世界はもっとうまい人もいるしな』という気持ちもずっとありました。それでアメリカツアーに来たんですけど、そのうまい選手たちと回るもの楽しいし、想像以上にいろんなところに行けたり、(毎週)変わる環境で自分のプレーをするのも、頭を使ってやるのも楽しい」
24年の「TOTOジャパンクラシック」で優勝し渡米を決めたとき、叔母で米女子ツアーの先輩である平瀬真由美は「あまり行ったり来たり(日米の往復)はしない方が良いかな。日本のギャラリーが恋しいと感じることもあるかもしれませんが、武者修行みたいな気持ちでトライしてほしい」と発破をかけた。そんな厳しいエールは、どこ吹く風と言わんばかりに、姪っ子は全力で、どこまでも自然体で新天地を堪能している。
「来年は複数回優勝が一番の目標。ただ、自分は欲が出過ぎるとあまりいいことがないので、気をつけています。メジャーでも優勝したいですけど、『来年、絶対に』と考えてしまうと、それも獲りに行くという欲が出てしまうから。まあ、そんなに意気込みすぎないようにって感じで頑張ります」