大塚明氏、ロッテでのコーチ時代はデータ分析の日々 マリンスタジアムに“缶詰状態”でデータを分析した。ロッテでチーフ打撃コ…
大塚明氏、ロッテでのコーチ時代はデータ分析の日々
マリンスタジアムに“缶詰状態”でデータを分析した。ロッテでチーフ打撃コーチ兼走塁コーチを務めた大塚明氏は今オフ、32年間所属したチームを退団。入団後初めて球界を離れ、来年は外からプロ野球を見守る。ロッテ一筋だったプロ野球人生。コーチ時代は球場に1日15時間滞在することが日常茶飯事だった。
本拠地で午後6時試合開始のナイターの日は、午前9時に球場入り。コーチ室で対戦相手のデータを入念にチェックした。投手なら球種や投球の傾向、打者なら球種別の打球方向など項目は多岐にわたり「9時に球場に行っても間に合わないぐらいです」と回顧する。試合前の練習が終わると再びデータとにらめっこ。打者への助言や、守備位置の指示などにつなげるのである。
試合が終わると、指示が的確だったかなど“復習”。翌日の“予習”もあり、球場を出るのは午前0時を回ることがしばしばあった。球場近くのホテルに宿泊して、翌日も朝9時には球場入り。選手時代よりも球場に滞在する時間が圧倒的に長かったのである。
「データ量が膨大で、やろうと思えば際限なく見られます。試合中に相手の投手が代わった時、オンタイムで『ここを攻めよう』と指示が出せないと結果が出ません。選手に指示を出してナンボなんで。対戦が少ない交流戦なんかは本当に大変でした。去年まで1軍にいなかった選手だったり、新人投手が出てくる。急に若い選手が登録されたら『誰?』って感じで、本当に慌ただしかったですね」
あまりの忙しさに、試合前の時点で疲労困憊となるケースもある。「試合前にどうしても眠くなる時もあった。そんな時は椅子に座ったまま5分ぐらい寝て、頭をクリアにしてから試合に臨んでいました」。シーズン中は試合がない日もデータをチェック。「休んでいたら時間が足りない。他球団のコーチがゴルフに行っている話を聞いた時『えっ、そんな時間あるの?』と思いました」と休日がなかった日々を振り返った。
外野守備走塁コーチ時代、担当外の打撃面でも助言
コーチ兼任だった2010年に現役を引退。2011年以降は外野守備走塁コーチを務め、主力となった荻野貴司や角中勝也らの外野守備を徹底的に鍛えた。外野守備と走塁面の熱心な指導を続ける一方、担当外である打撃面についても、高部瑛斗や藤原恭大ら若手の外野手に助言することがあったという。
「守備が良くて、足が速い選手を指導して伸ばすのが専門ですけど、そんな選手でも打てないと試合に出られない。せっかくの守備力と俊足を生かしてレギュラーを作るために、打撃にも口を出したことがありました。投げることと打つことはメカニック上は同じ。そういう促し方はしていましたね」
2019年から4年間、1軍打撃コーチを務めた河野亮からも「口出しして、いろいろ伝えてくれていいですから」と言われたことがある。「他球団だと、担当外の仕事に口出ししていいのか分かりません。ロッテだから許されていたところがあると思います」。根底にあったのは選手の育成とチームの強化。そういう姿勢が影響したのか、2025年はチーフ打撃コーチ兼走塁コーチを担った。
「今年は全然うまくいかなかったですね」。最下位に終わった責任を取り、退団を決意した大塚氏は、打撃コーチと守備走塁コーチの違いにも言及。「試合になったら、打撃は選手が主にやるけど答えは出ない。『打ってくれ』と祈るしかない。守備走塁は手助けしてコントロールできる。飛びそうなところに守備位置を動かせばいいし、走者には次の球で勝負させればいい」と説明した。
「コーチはどうあるべきかも考えてきましたね。なぜ守備走塁が評価されるのか、数字を突き詰めてきました。評価される数字の中身を少しでも良くする。チームの勝利につながるラインを探っていました」。現役時代、データを徹底的に調べ、相手の癖を見抜いて生き抜いてきた男は、コーチとなってもデータをとことん研究。それがプロ野球界で生きていく1つの方法だったのである。(尾辻剛 / Go Otsuji)