元広島・中村健人は今オフに現役引退を表明 今オフに広島から戦力外通告を受けた中村健人外野手が20日、元チームメートの秋山…
元広島・中村健人は今オフに現役引退を表明
今オフに広島から戦力外通告を受けた中村健人外野手が20日、元チームメートの秋山翔吾外野手の野球教室にロングティー部門の講師として登場した。11月のトライアウトを受験してから約1か月半ぶりのグラウンドに立ち、「マッスルメモリー。筋肉が覚えていました」と快音を響かせた。
中京大中京、慶大を経てトヨタ自動車へ進むと、持ち前のバッティングスキルを評価されて4番に座った。2021年ドラフト3位で広島入りすると、ルーキーイヤーに開幕1軍を勝ち取った。しかし、1軍定着できずに今季は4試合の出場に留まり、オフに戦力外に。トライアウト受験後の11月28日に現役引退を表明。学生時代から関心があったテレビ業界での就職を目指すことを明かしていた。
第2の人生をテレビマンとして過ごそうと思った原点は、学生時代にある。「元々めっちゃテレビっ子で。テスト勉強もテレビの音がないとできないタイプだったんです」。特にバラエティ番組を見ていると、大きな声で笑い、幸福感で満たされた。「そこから人を笑わせたい性格になって。テレビからの影響が大きい人生なんですよ」。
地元の同級生が制作会社で働いていることもきっかけの1つだ。「大変なこともたくさんあるみたいですが、それよりも番組を作るってそんなに楽しいんだとも思って」と頬を緩ませる。今度は、自分が作った番組で人を幸せにしたい。学生時代の第2の夢だったテレビ業界へ、胸を膨らませ、飛び込もうとした。
第二の夢だったテレビマン 28歳が直面した将来への不安
だが二の足を踏んだ。若者のテレビ離れ、動画配信サービスの登場によるメディアの分散化が、中村がテレビに釘付けになっていた2000年代よりさらに加速し、今後もこの流れが続くとみられている。相談した複数の現役社員からも、先行きについてネガティブな話を聞き、「やめておいた方がいい」ともアドバイスされた。「時代的に、今じゃないのかな」と肩を落とす中村。熟考し、方向転換することを決めたという。
テレビと関わる方法は他にもある。中村と言えば、一際明るくておもしろい人柄でもファンの心をつかみ、トークショーのゲストとして度々招かれた経験を持つ。そんなムードメーカーに「テレビの出演者として人を笑わせることは考えていませんか?」と質問してみた。すると、迷うことなくこう返ってきた。
「もういいです。僕は、次は裏方でいたいです」ときっぱり。表舞台からは離れ、テレビとも違う道を考えているという。
トヨタ自動車時代に2年間の社会人経験はあるが、それでも「めっちゃ不安ですよ」と吐露。しかし、この日の野球教室では、それを感じさせないほど大きな声を出し、参加した73人の小学6年生を褒めちぎった。まるで中村自身が、グラウンドで野球ができるあっという間の3時間を、全身で楽しんでいるようでもあった。(喜岡桜 / Sakura Kioka)