2歳牡馬ランキング(前編)ホープフルSに出走予定のアンドゥーリル photo by Eiichi Yamane/AFLO…
2歳牡馬ランキング(前編)

ホープフルSに出走予定のアンドゥーリル
photo by Eiichi Yamane/AFLO
今年の2歳牡馬戦線は、確たる主役不在といった状況だ。
その要因としては、注目の素質馬たちが期待されたほどの結果を残せていないことが挙げられる。とりわけ、来春のクラシックへつながるとされる芝1800m以上のレースでは11月以降、重賞に限らず、1勝クラスでも1番人気の勝利はなし。2番人気馬も振るわず、すべて3番人気以下の伏兵が勝っていることによって、混迷を極めている。
ただ一方で、マイル以下のレースに目を向ければ、評判の素質馬たちがまずまずの結果を残している。
重賞で言えば、GⅢサウジアラビアロイヤルC(10月11日/東京・芝1600m)こそ1番人気のゾロアストロ(牡2歳/父モーリス)が3着に敗れたものの、GⅢ新潟2歳S(8月24日/新潟・芝1600m)ではリアライズシリウス(牡2歳/父ポエティックフレア)が、GⅡ京王杯2歳S(11月8日/東京・芝1400m)ではダイヤモンドノット(牡2歳/父ブリックスアンドモルタル)が、GⅡデイリー杯2歳S(11月15日/京都・芝1600m)ではアドマイヤクワッズ(牡2歳/父リアルスティール)が、それぞれ人気に応えている。
そうした状況のなか、今週末にGI朝日杯フューチュリティS(朝日杯FS、以下同。12月21日/阪神・芝1600m)、翌週にGIホープフルS(12月27日/中山・芝2000m)と、2歳王者の行方を左右する大一番が控えている。そこで今回、現時点における2歳牡馬の『Sportiva オリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、来春のクラシックを目指す2歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。
「この世代は、圧倒的に牡馬の層が厚くて難しいですね」
日刊スポーツの木南友輔氏がそう語るとおり、今年の2歳牡馬戦線は各選者の評価が割れて、それを表わすようなランキングとなった。
まず5位には、ベレシート(牡2歳/父エピファネイア)が入った。GI通算4勝のクロノジェネシスの初仔で、母譲りの末脚は強烈。2戦目の1勝クラス・エリカ賞(12月13日/阪神・芝2000m)では2着と苦杯を舐めたものの、今後の巻き返しが見込まれている逸材だ。
木南友輔氏(日刊スポーツ)
「新馬戦(7月20日/小倉・芝1800m)ではスタートで出遅れたうえ、2歩目でつまずきかける最悪の形でしたが、慌てることなく後方からレースを進めて、4コーナー手前でインから差を詰めていきました。迎えた直線では、すばらしいキレ味を披露。評判に違わぬ強さを見せてくれました。
2戦目のエリカ賞でも、スタートで出遅れ。2着に屈しましたが、それでも最後は勝ち馬に迫って、『やっぱり強い』ということを再確認できました」
4位にランクインしたのは、サウジアラビアロイヤルCを制したエコロアルバ(牡2歳/父モズアスコット)。2戦2勝で挑む朝日杯FSでの走りが注目される。
伊吹雅也氏(競馬評論家)
「12月7日終了時点の本賞金(JRAのレースのみ。以下同)は4050万円。JRAに所属する現2歳世代の馬としては、GⅢ京都2歳S(11月29日/京都・芝2000m)を勝ったジャスティンビスタ(牡2歳/父サートゥルナーリア)と並ぶ5位タイ。
ちなみに、1走あたりの賞金は2025万円で、こちらもGI阪神ジュベナイルフィリーズが施行される前の段階では、ジャスティンビスタと並ぶ2位タイでした。デビュー2戦目で早くも重賞を制した点は、高く評価していいと思います。
2025年の千葉サラブレッドセールにおける購買価格は7700万円。余談ながら、2024年の北海道サマーセールにおける購買価格は1980万円だったんですよね。両セールの間隔はおよそ10カ月。1年も経たないうちに4倍近くまで値段が跳ね上がるというのはなかなか珍しいパターンで、この期間中に目覚ましい成長を見せたのかもしれません。
近年の朝日杯FSは基本的にキャリアの浅い馬が優勢。出走数が3戦以上だった馬のうち、JRAのGIかGⅡで1着となった経験がない馬は、2018年以降に62頭いたものの、3着以内となったのは2頭だけで、3着内率が3.2%にとどまっています。
その点、同馬はキャリア2戦で、まだ底を見せていない点は大きなアドバンテージ。重い印を打つだけの価値は十分にあると思います」
3位は、ここまで3戦2勝のアンドゥーリル(牡2歳/父サートゥルナーリア)。粒ぞろいのメンバーが集ったリステッド競走のアイビーS(10月18日/東京・芝1800m)を制した評判馬だ。
吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「前駆体形でトモもペタッとしており、まだまだ成長の余地を残している段階。それでも、長めのつなぎは抜群のクッション性があり、持続力の長い末脚が武器です。アイビーSのように発馬を決めて前づけする形なら、崩れるシーンは想像できません。
骨格からすれば、馬体重がもう20kgぐらい増えてもいい感じ。ホープフルSに向けては12月3日に坂路で速い時計を出して、その後も丹念に乗り込まれており、きっちりと態勢を整えてきそうです。道中の折り合いや柔らかい走りができる点からすれば、クラシックを賑わす存在になることは間違いないでしょう」
(つづく)