「大相撲・冬巡業」(19日、小田原アリーナ) 幕内阿炎(31)が23年12月17日に死去した先代錣山親方(元関脇寺尾)…
「大相撲・冬巡業」(19日、小田原アリーナ)
幕内阿炎(31)が23年12月17日に死去した先代錣山親方(元関脇寺尾)について「先代がいかに偉大だったか、深く感じるようになってきた。なんて自分って無力なんだろう」と語った。
あれから2年。亡き師匠について問われた阿炎は少し考えた後、変わらぬ尊敬を口にした。今年の勝ち越しは名古屋場所のみ。苦しい時は「先代だと何と言う」と考えた。そして「でも、もう言ってはもらえない。大きな存在だった」と喪失感が去来したという。
今年の秋場所、九州場所は好調を自覚しながら負け越した。「頭ごなしで怒られたけれど、それがあったから、あの頃は気を張り詰めてしっかりできたと思う。いなくなって初めて気づくじゃないですけど…」。勝てば気持ちが大きくなる。「勝って褒められたことはない。僕は調子に乗るところがある。天狗ではないですけど、先代は鼻を折ってくれたのでは。だから勝ち負けを気にせずできた」と、先代の狙いを想像した。
好内容ながら敗れた時は「負けて覚える相撲かな」と声をかけられた。「あの頃は『負けて何を覚えるんだ』と思いました。今思うと、励ましの言葉だった」と感謝が胸にわく。
だが、もう先代はいない。「時がたつにつれて、もう本当にいなくなってしまった、と感じる。それは言い訳ですね。自分でやればいいだけだから。僕は甘えすぎていた」と自戒する。現師匠(元関脇豊真将)からは「自分のことだけを考えろ」と、気遣われることを感謝しているだけに、結果につながらないことがもどかしい。
今も先代を慕う阿炎。13日に都内の錣山部屋に約60人が参列した三回忌法要は、巡業のため参加できず、花を届けた。ただ、不参加を残念に思う気持ちは湧かなかった。「僕は死に目に会えましたから」。やるべきことは分かっている。
2年前、先代のひつぎには、22年九州場所の初優勝で手にした賞状を納めた。「もう一度。取り返します」と、2度目の優勝を来年の目標に掲げる。そのために「勝負への熱量が足らなかった。勝負師として勝ちにこだわっていきたい。勝ちだけを考える」と意識改革を宣言した。