📅 2025年12月18日 👤 BUKATSU ONE編集部📌 この記事でわかること・地域連携協議会のガイドライン上の…

📅 2025年12月18日 👤 BUKATSU ONE編集部

📌 この記事でわかること

・地域連携協議会のガイドライン上の位置づけと自治体が果たすべき役割
・学校・地域クラブ・保護者など多様な委員を選ぶ際の基準
・第1回協議会で決めるべき議題と効果的な進行の流れ
・年間を通じて協議会を機能させる運営のコツ

「協議会の委員は誰を選べばいいのか?」「会議が形骸化しないか?」――部活動の地域展開を進めるうえで地域連携協議会の立ち上げは避けて通れません。推進計画を策定した後、多くの自治体担当者が次に直面するのがこうした悩みでしょう。

ここで「地域展開」とは、これまで学校の教員が担ってきた部活動の指導や運営を、地域のスポーツクラブや文化団体などに段階的に移行・連携していく取り組みを指します。

スポーツ庁のフォローアップ調査(令和6年5〜6月実施)によれば、回答自治体の4分の3以上が令和6年度(2024年度)までに協議会を設置済みまたは設置予定と回答しています(出典:スポーツ庁「部活動改革の"現状"と"展望"」)。スポーツ庁・文化庁が示した「総合的なガイドライン」骨子(令和7年10月版)では、令和8年度(2026年度)から令和13年度(2032年度)までの6年間が「改革実行期間」(前期・後期)として整理されており、協議会の重要性はますます高まっているのです。

この記事では、協議会のガイドライン上の位置づけから具体的な運営方法まで、実務に直結する知識を解説します。先進自治体の事例も参考にしながら、「動く協議会」の作り方を一緒に見ていきましょう。

なぜ協議会が必要か:ガイドラインに基づく設置の意義

部活動の地域展開を進めるうえで、協議会の設置は実務上、不可欠な体制です。

令和4年(2022年)12月に策定された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」では、地域スポーツ・文化振興担当部署や学校担当部署、関係団体、学校等の関係者を集めた協議会などの体制整備が求められています(出典:スポーツ庁「総合的なガイドライン」)。

なお、このガイドラインは国の方針を示すものであり、法的な義務や強制力を持つものではありません。スポーツ庁のFAQでも「ガイドラインを遵守していない場合に処罰等はない」と明記されています。しかし、多くの自治体が協議会を設置している背景には、地域展開を円滑に進めるための実務上の必要性があるからでしょう。

協議会が担う役割は、大きく3つに整理できます。

1つ目は、関係者間の情報共有・意思疎通の場としての機能。学校、地域クラブ、保護者、行政など、立場の異なる関係者が一堂に会し、課題や進捗を共有することで、認識のズレを防ぎます。

2つ目は、地域展開の方針・計画の策定・進捗管理でしょう。推進計画に基づいて具体的なアクションを決定し、その進捗を定期的に確認する機能を果たします。

3つ目は、課題発生時の調整・解決機能という点。指導者の確保、施設の調整、費用負担の問題など、実際に運営を始めるとさまざまな課題が生じます。協議会があれば、関係者が集まって迅速に対応策を協議できるのです。

推進計画(本連載第4回で解説)を「絵に描いた餅」にしないためには、協議会という推進エンジンが欠かせません。

📊 協議会の3つの主要機能

① 情報共有・意思疎通の場

学校、地域クラブ、保護者、行政など立場の異なる関係者が一堂に会し、課題や進捗を共有

② 方針・計画の策定・進捗管理

推進計画に基づく具体的アクションの決定と定期的な進捗確認

③ 課題調整・解決機能

指導者確保、施設調整、費用負担など実務課題への迅速な対応

図:地域連携協議会が担う3つの役割

誰を委員にするか:多様な視点を確保するメンバー選定

協議会の成否は「誰が参加するか」で決まります。形式的なメンバー構成ではなく、実際に機能する体制を目指しましょう。

必須の構成メンバー5カテゴリ

協議会に参加すべきメンバーは、以下の5つのカテゴリから選出することが望ましいとされています。

①学校関係者として、校長会代表や教頭・教務主任などが挙げられます。現場の実情を最もよく知る立場から、実現可能な計画づくりに貢献できるでしょう。

②地域クラブ・スポーツ団体からは、総合型地域スポーツクラブや競技団体の代表者が参加します。受け皿となる組織の視点は不可欠です。

③保護者代表として、PTAや保護者会の役員が参加。費用負担や送迎の問題など、保護者目線での意見を反映させる役割を担います。

④行政関係者には、教育委員会やスポーツ振興課の担当者に加え、首長部局からの参加も検討すべきでしょう。予算や施設利用の調整には、部局横断的な連携が重要です。

⑤有識者・専門家として、大学教員やスポーツ指導者資格保有者を加えることで、専門的な知見を得られます。

ガイドラインや先進事例を踏まえると、全体の人数は10〜15名程度が運営しやすい規模とされています。文化部の地域展開を視野に入れる場合は、文化団体の代表者も含めると良いでしょう。

👥 協議会メンバー構成例(10〜15名)

【カテゴリ / 具体例】
① 学校関係者 / 校長会代表、教頭、教務主任
② 地域クラブ・スポーツ団体 / 総合型地域スポーツクラブ、競技団体代表
③ 保護者代表 / PTA役員、保護者会代表
④ 行政関係者 / 教育委員会、スポーツ振興課、首長部局
⑤ 有識者・専門家 / 大学教員、スポーツ指導者資格保有者

図:バランスの取れたメンバー構成イメージ

人選で失敗しないための3つのチェックポイント

ありがちな人選の失敗パターンを避けるため、以下の3点を意識してください。

✓ チェックポイント1:「充て職」だけで構成しない

役職だけで選ぶと、実務を担う当事者の声が届きにくくなります。必ず現場で実際に動いている人を含めましょう。

✓ チェックポイント2:特定の立場に偏らない

学校側・地域側・保護者側のバランスを意識し、どの立場の意見も反映できる構成を目指します。

✓ チェックポイント3:発言しやすい環境を作る

若手や現場担当者も委員に加えることを検討してみてください。ベテランだけの会議では、新しいアイデアが出にくくなるものです。

形式的な肩書きよりも「実際に動ける人」「現場を知っている人」を優先する考え方が大切です。多くの自治体では任期を2年程度に設定しており、継続性と新陳代謝のバランスを取っています。

第1回協議会で何を決めるか:議題設計と進行モデル

第1回協議会は「今後の協議会運営の方向性を決める重要な会議」です。何を議題にし、どう進行すれば成果が出るかを具体的に見ていきましょう。

最初の会議で合意すべき4つの議題

第1回協議会で必ず扱うべき議題は、以下の4つです。

①協議会の目的・役割の共有が最も重要でしょう。「なぜこの場が必要なのか」を全員で確認することで、参加意識を高めます。

②地域展開の現状把握と課題整理では、データに基づく共通認識を形成。生徒数の推移、部活動数、指導者の状況などを共有し、「自分たちの地域の現状」を全員で理解することが目的です。

③今年度の活動方針・スケジュールの確認により、具体的な見通しを示します。「いつまでに何を決めるのか」を明確にすることで、委員の行動指針となるでしょう。

④役割分担と次回までのアクション確認で、会議を「決定の場」に。誰が何を担当するかを明確にして閉会することで、次回までの進捗が期待できます。

初回から細かい議論に入るのは避けましょう。まずは関係者の顔合わせと方向性の共有に注力することが成功のポイントです。事前資料は1週間前を目安に配布し、委員が準備を整えて参加できるようにします。

2時間で成果を出す進行タイムテーブル例

第1回協議会の具体的な進行例を、時間配分とともにご紹介します。以下は先進自治体の実務を参考にした一例であり、地域の実情に応じてアレンジしてください。

⏰ 第1回協議会の進行タイムテーブル(2時間)

10分

開会・挨拶

15分

委員自己紹介

15分

協議会の目的・役割説明

20分

地域展開の現状報告

40分

意見交換・質疑応答(最重要)

15分

今後のスケジュール・役割分担確認

5分

閉会

図:効果的な第1回協議会の時間配分イメージ

【時間 / 議題 / 内容】
10分 / 開会・挨拶 / 教育長や首長からのメッセージで改革への意気込みを示す
15分 / 委員自己紹介 / 各委員の立場と期待を共有(一人1分程度)
15分 / 協議会の目的・役割説明 / 事務局から設置の背景と期待される役割を説明
20分 / 地域展開の現状報告 / データを用いて地域の課題を可視化
40分 / 意見交換・質疑応答 / 各委員から率直な意見を引き出し、今後の方向性を探る
15分 / 今後のスケジュール・役割分担確認 / 次回開催時期と各委員のアクションを確認
5分 / 閉会 / 事務局からの連絡事項

意見交換の時間を十分に確保することで、「言いっぱなし」を防ぎ、建設的な議論につなげましょう。一般的には教育委員会の担当者がファシリテーターを務めることが多いですが、必要に応じて外部ファシリテーターの起用も検討してください。

年何回・いつ開催するか:効果的な年間スケジュールの組み方

協議会の開催頻度と時期は、地域展開の進捗に大きく影響します。形だけの年1回開催では、実効性のある議論はできません。

なお、協議会の開催頻度や議題設定について、国による統一的な基準は設けられていません。以下は先進自治体の取り組みや実証事業の事例を参考にした実務上の目安です。

先進自治体の事例では、最低ラインは年3回(年度初め・中間・年度末)の開催が一般的です。

ただし、改革実行期間に入る令和8年度(2026年度)以降は、推奨ラインとして年4〜6回(四半期ごと、または隔月)の開催が望ましいでしょう(参考:スポーツ庁「運動部活動の地域移行等に向けた実証事業事例集」)。

📅 年間開催スケジュール例(年4回モデル)

🌸 第1回(4〜5月):年度方針・体制確認

新年度の目標設定、委員交代時の新体制での方向性確認

☀️ 第2回(7〜8月):前期進捗確認・課題抽出

夏休み試行運営の報告、前期の成果と課題の共有

🍂 第3回(10〜11月):次年度計画検討

予算要求に向けた必要資源の洗い出し、次年度方針の協議

❄️ 第4回(1〜2月):年度総括・次年度計画決定

1年間の成果と課題の振り返り、次年度計画の正式決定

図:効果的な年間スケジュールの組み方

各時期に適した議題の例を挙げます。

4〜5月は年度方針・体制確認の時期。新年度の目標設定、委員の交代があれば新体制での方向性確認を行います。

7〜8月には前期進捗確認・課題抽出を実施。夏休みを利用した地域クラブの試行運営の報告なども議題になります。

10〜11月は次年度に向けた計画検討の時期。予算要求に間に合うよう、必要な資源の洗い出しを行います。

1〜2月には年度総括・次年度計画決定を行います。1年間の成果と課題を振り返り、次年度の具体的計画を策定しましょう。

日程調整では、学校の繁忙期(入試シーズン、行事シーズン)を避ける配慮が必要です。学校関係者が参加しやすい時期を選ぶことで、実のある議論が可能になります。

また、必要に応じて「臨時協議会」や「部会(ワーキンググループ)」を設置する柔軟性も重要でしょう。指導者確保、施設利用、財源確保など、テーマ別の部会を設けることで、専門的な議論を深められます。

「名ばかり協議会」にしない:形骸化を防ぐ3つの鉄則

多くの自治体で協議会が「形式的な報告会」になりがちな課題があります。実質的に機能する協議会にするための3つの鉄則を押さえましょう。

鉄則1:議題は「決定事項」と「報告事項」を明確に分ける

会議で「何を決めるのか」「何を共有するだけなのか」を事前に明示することが重要です。

報告事項ばかりの会議は、委員のモチベーション低下を招きかねません。「この場で決定する」議題を必ず1つ以上設定し、委員の参画意識を高める工夫が必要でしょう。

例えば「地域クラブの認定基準を決定する」「指導者謝金の単価を承認する」など、具体的な決定を伴う議題を設けてみてください。

鉄則2:会議外のコミュニケーション設計を怠らない

年数回の会議だけでは、関係構築・情報共有が不十分です。会議と会議の間をつなぐコミュニケーション手段の整備が欠かせません。

具体的には、メーリングリストやチャットツールでの情報共有、小規模な部会・ワーキンググループの活用、担当者間の個別連絡網の整備などが挙げられるでしょう。

ICTツールを活用した効率的な情報共有については、連載第39回「地域展開を支えるICTツール完全活用法」(後日公開予定)で詳しく解説する予定です。

鉄則3:成果を可視化し関係者にフィードバックする

協議会での議論・決定事項を、関係者(学校、地域クラブ、保護者など)に発信することが重要です。

「協議会だより」の発行や「議事録の公開」などを通じて、協議会の存在意義を広く示しましょう。成果の可視化により、委員のやりがいにもつながります。

保護者や地域住民に「協議会で何が決まったのか」が伝わることで、地域展開への理解と協力も得やすくなるのです。

🔄 形骸化を防ぐ3つの鉄則

1

決定事項と報告事項を明確に分ける

「この場で決定する」議題を必ず1つ以上設定し、委員の参画意識を高める

2

会議外のコミュニケーション設計を怠らない

メーリングリスト、チャットツール、部会活用など会議間をつなぐ仕組みを整備

3

成果を可視化し関係者にフィードバック

協議会だよりの発行、議事録の公開などで存在意義を広く示す

図:「動く協議会」を実現するための3つのポイント

まとめ

協議会は「設置すること」がゴールではなく「機能させること」が重要です。この記事で解説した5つのポイントを振り返りましょう。

・ガイドライン上の位置づけと役割の理解:協議会設置は法的義務ではないが、ガイドラインで推奨される体制整備として、情報共有・計画策定・課題解決の3機能を担う
・多様な視点を持つメンバー選定:5つのカテゴリから10〜15名程度を選出し、「充て職」だけでなく現場を知る人材を含める
・第1回協議会の議題設計と進行:4つの必須議題と2時間の進行タイムテーブルを参考に、地域の実情に応じてアレンジする
・効果的な年間スケジュール:先進自治体の事例を参考に、年3〜6回の開催頻度と各時期に適した議題を設定する
・形骸化を防ぐ3つの鉄則:決定事項の明確化、会議外コミュニケーション、成果の可視化を徹底する

協議会を「地域展開の推進エンジン」として機能させることで、推進計画の実現可能性は大きく高まります。ガイドライン骨子(令和7年10月版)で示された令和8年度(2026年度)から令和13年度(2032年度)までの改革実行期間を見据え、今から着実に体制を整えていきましょう。

次回予告:第6回では「部活動地域展開の予算確保と財源多様化戦略」を詳しく解説します。

📚 参考文献

・スポーツ庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(令和4年12月)
https://www.mext.go.jp/sports/content/20221227-spt_oripara-000026750_2.pdf
・スポーツ庁「FAQ」(ガイドラインの法的拘束力について)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/jsa_00017.html
・スポーツ庁「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」最終とりまとめ(令和7年5月)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/039_index/attach/1420653_00001.htm
・スポーツ庁・文化庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」骨子(令和7年10月版、2025年11月掲載)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/043_index/index.html
・スポーツ庁「部活動改革の"現状"と"展望"〜有識者会議による「中間とりまとめ」〜」
https://sports.go.jp/tag/school/post-148.html
・スポーツ庁「運動部活動の地域移行等に向けた実証事業事例集」(令和6年8月)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/jsa_00016.html