石毛宏典の打撃分析 後編(前編>>) 今オフのドラフト会議で、西武は4人の野手を指名した。西武OB・石毛宏典氏による打撃…

石毛宏典の打撃分析 後編

(前編>>)

 今オフのドラフト会議で、西武は4人の野手を指名した。西武OB・石毛宏典氏による打撃分析の後編では、古巣で飛躍を目指す野手のバッティングに対する見解を聞いた。


西武のドラフト1位、明治大・小島大河

 photo by Sankei Visual

【ドラ1の小島、ドラ3の秋山は「同じようなタイプ」】

――ドラフト1位の小島大河選手(捕手/右投・左打/明治大)のバッティングからお願いします。

石毛宏典(以下:石毛) バッターボックスでの立ち姿に雰囲気がありますね。それと、構えている時に後ろの肘(左肘)とバットのグリップが高い位置にあるので、バットを振る時にムチを振るような感じになり、ヘッドを利かせることもできる。

 ただ、グリップが高いぶん、斜めにカットするような感じでバットを振り下ろすことになり、前の腕が曲がったままインパクトすることになります。前編でお話ししましたが、前の腕(右腕)を張らないと強いボールはなかなか打ち返せません。逆に、前の腕を張ればヘッドを動かす距離が長くなり、強い打球が打てます。

 構えの時点でグリップが高い位置にあっても、振り始めた時に低い位置に移動していれば前の腕も伸びていくのですが、小島にそういった動きは見られませんね。なので、一軍のピッチャーの力のあるボールへの対応が課題になりそうですが、バッティングの完成度は現時点でも高いと思います。

――ドラフト3位の秋山俊選手(外野手/右投・左打/中京大)は、バットコントロールとパンチ力が魅力ですね。

石毛 前の腕(右腕)の張りは少し弱いのですが、力まずリラックスして構えることができていますね。また、軸がブレないので体が前に突っ込むことがなく、体重移動がスムーズにできています。打ち方そのものは、ヘッドの使い方も含めて小島と同じようなタイプです。

 ただ、とらえなければいけないようなボールを打ち損じているケースが見られます。プロで活躍する選手は、そういった打ち損じがほとんどなく、打球方向もバラつきがなくて同じようなところに打ち返します。その部分がこれからの課題だと思いますが、体の軸がブレないのはいいですし、バットマンとして可能性を感じます。

――ほかにも課題はありますか?

石毛 相対的には悪くないのですが、少し上半身がブレるのが気になりますね。原因は、後ろの肘(左肘)が少し背中側へ入るからだと思います。左肘を背中側に入れすぎると上半身が内巻きになり、頭と目線も内側(キャッチャー寄り)へ引っ張られてしまいます。そうなると、低めのボールには対応できたとしても、高めのボールを打つ時に窮屈になって差し込まれてしまう。どのように対応していくのか、今後に注目です。

【課題はあるが、プロ入り後の対応に注目】

――ドラフト5位の横田蒼和選手(内野手/右投・左打/山村学園高)はどう見ていますか?

石毛 バットの軌道がレベルスイングなので、ボールをとらえる確率は悪くないはずです。ただ、彼も後ろの肘(左肘)を背中のほうに入れすぎているから、振り遅れが目立ちます。ほとんどのボールに差し込まれている印象ですし、打球も逆方向(レフト方向)が多いじゃないですか。今のままだとインコースを攻められそうですし、プロのピッチャーのボールを打つのに少し時間がかかりそうな印象です。

 ただ、遠心力があってヘッドが走るスイングなど、いい部分も垣間見られるので、今後の成長を期待したいと思います。

――最後に、ドラフト6位の川田悠慎選手(外野手/右投・左打/四国銀行)についてお聞きします。足が大きな武器の選手ですが、バッティングはいかがでしょうか?

石毛 身長は174cmとのことですが、バッターボックスに立っている姿を見ると、それよりも大きく見えますね。リラックスした、いい構えをしていますが、両肘が体から離れた状態でバットを振ってしまっている。そうなるとヘッドが走りませんし、強いボールに押し込まれてしまいます。

 ただ、構えている時もバットを振り出す時も、体の左右のバランスが均等ですし、多少の修正でよくなっていきそうな雰囲気がありますね。スピードがある選手のようですし、プロで生きていくためのバッティングを追求していってほしいです。

――各選手の現時点でのバッティングをお聞きしましたが、将来が楽しみな野手が多いですね。

石毛 そうですね。先ほどお話ししたように、1位の小島はグリップの位置を少し下げればいいくらいで、バッティングの完成度は現時点で高い。3位の秋山は後ろの肘(左肘)が背中側へ少し入るクセが気になりますが、その部分を直すのか、まずは今の形でやってみるのか。そのほかのバッターもいい部分がありますし、今後プロの世界でどんなプレーを見せてくれるか楽しみです。

【プロフィール】

石毛宏典(いしげ・ひろみち)

1956年 9月22日生まれ、千葉県出身。駒澤大学、プリンスホテルを経て1980年ドラフト1位で西武に入団。黄金時代のチームリーダーとして活躍する。1994年にFA権を行使してダイエーに移籍。1996年限りで引退し、ダイエーの2軍監督、オリックスの監督を歴任する。2004年には独立リーグの四国アイランドリーグを創設。同リーグコミッショナーを経て、2008年より四国・九州アイランドリーグの「愛媛マンダリンパイレーツ」のシニア・チームアドバイザーを務めた。そのほか、指導者やプロ野球解説者など幅広く活躍している。