<「ゴールドラッシュ」アマチュア選手の今後>「ゴールドラッシュ」と化す日本人アマチュア市場を展望する連載企画の第2回は、…

<「ゴールドラッシュ」アマチュア選手の今後>

「ゴールドラッシュ」と化す日本人アマチュア市場を展望する連載企画の第2回は、アスレチックス傘下でプレーする森井翔太郎投手兼内野手(19)の恩師、桐朋(東京)・田中隆文監督だ。

偏差値71の進学校に在籍した「投打二刀流」の森井は、3年時にドラフト1位候補に目された。NPB全12球団が動向を注視。MLBスカウトも足を運び「日米争奪戦」の様相を見せるかと思われたが、森井の決意は固かった。

学生選手はプロ野球志望届提出後から国内外のプロ側と面談が認められることから、志望届提出後に森井はNPB各球団に渡米の意思を表明し、ドラフトで指名しないよう求めた。過去の歴史をさかのぼれば強行指名もありうる。「あの時は本当にどうなるかと気が気ではありませんでした」と田中監督は振り返り、NPB各球団担当者に送った文書の詳細を明かした。

発案は田中監督だった。森井を取りにいきたいと公式戦はもちろん、練習や遠征にまで足を運ぶNPBスカウトの思いは痛いほど分かるだけに、誠意を見せたいと文書で伝えることに行き着いた。マイナーからの米国挑戦の決意を固めたことを明記した上で「17歳の青年が悩みに悩んだ末の結論でございます」とした。結びには田中監督、学校長、森井の父、森井本人の署名も入れた。結果的にNPBから指名されることはなく、望んだ進路へ進んだ。

今後また森井のような選手が現れた場合も、田中監督の考えは変わらない。「海外に渡ることが全てではないですし、MLBがNPBより偉いわけでもない。その選手がどう考えるかが最も重要で、森井のようにアメリカでやりたいと明確なら、あとは応援するだけです」。今までも、これからも。その信念に揺るぎはない。【平山連】