今夏の全国高校野球選手権富山大会で、未来富山を初優勝に導いた角鴻太郎さん(34)が11月にチームの指導を終え、富山を離…

 今夏の全国高校野球選手権富山大会で、未来富山を初優勝に導いた角鴻太郎さん(34)が11月にチームの指導を終え、富山を離れた。甲子園出場を果たした監督が、直後に退任するのは異例だ。退任理由や未来富山での指導、富山の高校野球の課題について聞いた。

 ――なぜ、退任を

 3月にチーム内でいじめがあり、日本学生野球協会から1カ月間、対外試合禁止の処分を受けました。責任者は私です。成績に関わらず、「指揮は夏の大会まで」と決めていました。甲子園の直前に発覚した部員同士の暴力事件とは関係がありません。

 ――外部監督としての指導に苦労はありませんでしたか

 通信制の高校で、いろんな背景を持った選手が集まっていました。ただ、部長や寮母と密に連携していたので、苦労は特に感じませんでした。大勢の前で話すより、一人ひとりと対話してコミュニケーションを取るようにしました。

 指導で考えたのは「集中力の維持」。終わりが見えない練習だと、ミスをするし、手も抜く。時間を区切り、ノック本数も最初に決めてメリハリをつける。すると最後まで頑張る。選手の意識が変わってきました。

 甲子園に連れて行ってくれた選手には感謝しかありません。

 ――甲子園の反省点は

 学校職員も少なく、富山大会後は準備に追われました。試合も、周囲から「あっという間だぞ」と言われ、理解していたつもりでしたが、気づいたら、もう5回。経験不足は否めませんでした。

 ――注目された江藤蓮投手の投球を振り返ると

 富山大会終了後、あいさつ回りなどもあり、疲れが取れないまま、大阪入りしました。大阪ではホテル住まい、練習時間も短い。非日常に慣れる時間が十分取れなかった。うまく調整させてあげられず、悪いことをしました。

 ――投球は

 試合が大会6日目になり、徐々に調子は戻りましたが、体の切れはいつもの状態ではありませんでした。直球が走っていないのを自覚し、変化球で打ち取ろうとしましたが、相手に読まれていたのだと思います。

 ――未来富山に、富山出身者が少なかったことに様々な声がありました

 今夏の甲子園で、富山出身の選手が中軸を担う県外校もありました。県外へ行く、富山に来ることへの議論はありますが、「自分が成長できる環境」を求めることにノーは言えません。東京でも他県に行く選手はいますし、どこでも、どのスポーツも同じです。

 ――富山の高校野球の印象は

 守備は鍛えられていると思いますが、全体のレベルが高いとは必ずしも言えない。でも、振り返ると、1、2年生の時に対戦し、「このまま成長したら打てない」と思わせる好投手は何人もいました。ところが、3年生の時、「あれ? 伸びていない」という感じることが多かった。

 ――なぜでしょうか

 冬を越して3年生になった時、「体が大きくなっていない」と思いました。体力づくりはチームの方針もあり、正解は難しい。でも、春から夏は試合が続き、選手は自然にやせていきます。最後に勝ちきるには、私自身、冬のウェートトレーニングと食事が大切だと考えています。

 ――富山代表が全国で勝つためには

 私も初戦で負けたので……。ただ、どんな形でもいいので、先制することを意識してほしい。未来富山も富山大会はすべて先制しました。どんな強豪でも、同じ高校生。先に点を取れば、「あれ」となって相手のリズムを崩せる可能性がある。

 ――次の指導先は

 決まっていません。高校野球だけにこだわっていないので、しばらく考えます。とはいえ、野球は大好きなので、携わっていたい、と思います。(前多健吾)

■角鴻太郎さん

 東京都出身。2009年、日大三3年の時、西東京代表として第91回選手権大会に出場、東洋大学でも外野手として活躍した。22年5月に未来富山のコーチ、翌年9月に監督。昨夏の富山大会は4強、今夏の第107回選手権大会に初出場を果たす。(前多健吾)