国内女子ツアーで2度の年間女王となった山下美夢有は大ブレークした米ツアー1年目をいかに過ごしたのか。24年に日本でしの…
国内女子ツアーで2度の年間女王となった山下美夢有は大ブレークした米ツアー1年目をいかに過ごしたのか。24年に日本でしのぎを削った竹田麗央、プロテスト同期の西郷真央らに続く米ツアー初優勝は8月のメジャー最終戦「AIG女子オープン(全英女子)」だった。11月「メイバンク選手権」で2勝目を挙げて年間ランキング2位、日本勢3人目の新人賞を受賞したルーキーイヤーを単独インタビューで振り返る。(取材・構成/石井操)
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悔しかったフロリダ最終2連戦
メジャー制覇で生まれた重圧を抱えながら、翌週の国内凱旋試合「北海道 meiji カップ」は4位、その3週後の米ツアー「FM選手権」で7位、「クローガー・クイーンシティ選手権」で4位と安定した成績を残した。毎試合にわたって開幕前には注目選手として会見に呼ばれ、「メイバンク-」では2025年シーズン最多の8打差大逆転で2勝目を挙げ、11月初旬の日米共催「TOTOジャパンクラシック」からのシーズン残り3戦に突入した。
その時点で、年間ポイントレースでトップだったジーノ・ティティクル(タイ)との差は1027.089pt。「TOTO―」3位でさらに797.089pt差に接近。残りのフロリダ2連戦の優勝ポイントはともに500pt。逆転が非常に厳しいとはいえ可能性はあった。しかし、「アニカ driven by ゲインブリッジ at ペリカン」は68位。それでも、優勝すればティティクルを抜いて「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」(年間最優秀選手)を手にできた最終戦「CMEグループ ツアー選手権」は優勝をティティクルにさらわれ、36位に終わった。
「コースが難しかったのもあるけど、まだまだトップに行くにはこの状態ではダメって気付かされた」。力不足を痛感した2週間。「ショットがかなりフック気味で、コントロールができなかった。まずバーディチャンスにはつかないし、ボギーを打つことも多かった。これだけボギーを打てばやっぱり上位には行けないよねって」。飛距離のなさをカバーする持ち味のショットが精彩を欠いたことが悔しい。「一年目で優勝できて、年間ランク2位で終えたことは素直にうれしいけど、結果以上にショートゲームだったり、もっともっとショットのレベルアップをしていかないといけない」。シーズン通して全体3位のフェアウェイキープ率82.67%、全体24位のパーオン率73.52%などでまとめ上げた全体4位の平均ストローク69.81。それでも、まだまだ満足できない。
厳しくなった年間最優秀選手よりも…山下美夢有はままならないショットで頭いっぱい
修正ポイント「いっぱいありすぎて…」 21位ターンの最終戦で山下美夢有は“危機感”隠さず
自分の体を知れた米生活
日本ツアー時代もシーズンが進むにつれて体重は減少したが、この一年には新たな気づきがあった。「体が軽くなって動きやすくなった。体重が落ちて『ここの脂肪はいらないな』とか『ここの筋肉量を増やした方がいいのかな』というのが分かった。すぐには体も変わらないし、体づくりへのアプローチの仕方を変える必要はないって思うけど、もうちょっと飛距離が伸びてくれたら。コツコツ地道にやって5ydぐらい伸ばしたい」
トレーニングは日本ツアー時代と変わらない方針で取り組む。メニューはウェート機器を使わず、父・勝臣さんとともに考えた自重を使ったものが中心。ランニングは「心拍数を上げるように」と長距離より短距離でこなすことが多い。
「日本にいた時はただご飯を食べて体を大きくしましたという感じで。それで距離を伸ばそうとしていたからあんまり良い状態ではなかった。食べないとエネルギーがなくなるのは分かってはいるけど、トレーニングの内容は大事だなって。しっかりコントロールして自分の体を知ることが大事。これから年齢とともに飛距離は落ちやすくなってくる。今年も体重は落ちたけど、逆に落ちて良かったと思う」。自分の体を今一度、見つめなおす機会になった。
不安だった海外の食事もネガティブなだけではなくなった。「全英女子」3日目の8月2日は24歳の誕生日だった。「行きたいお店を調べて行ったら、それがすごく美味しすぎて。キノコのクリーム系の手作りパスタ。良いイメージを持っていなかったけど、日本で食べるパスタよりも美味しかった」。結果的に、宿舎での時間も含めてアクシデントに見舞われることなくシーズンを終えることができた。
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両親だけは見つけられる
日本を離れたことで、家族との強い絆も再確認できた。「結婚はしたいですね。なかなかゴルフをしていると難しいなと思うこともあるけど、やっぱり良い人に出会って、ゴルフも頑張る。そうなればベストですね」。そんな結婚願望を持つ24歳の “模範”は身近にいる。「家族ですけど…あの2人を越える憧れの人はいないですね」と父・勝臣さんと母・有貴さんの存在を挙げる。
「試合中、マネジャーさんの姿は見つけられなくても2人の姿にはすぐ目がいく。もうラブラブで。ずっと一緒にいるし、ペアルックもしている。ほとんどプレーも見ていない(笑)。でも、そういう風に夫婦仲良く、自分たちの時間を大切にしてくれていて。お父さんはコーチとして教えてくれているけど、ゴルフだけじゃなくて楽しんでほしい」。家でも「全然しゃべらない」という寡黙な父は、子供のころから仕事をこなしながら自分のゴルフを支え続けてくれた。理想の男性像のようだ。「家族の存在は一番大きい」と頬を赤らめた。
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2つのトロフィは屋内練習場に
来季は1月29日開幕「ヒルトン・グランドバケーションズ トーナメント・オブ・チャンピオンズ」(フロリダ州・レイクノナG&CC)から始まる。「今年出られなかった試合にも出られるのがすごく楽しみ。まずは早いところで1勝できるようにしたい。自分が良い状態で臨めても、それを超えてくる選手が多い。勝つのって本当に難しいけど、そこで勝っていかないと1位にはなれない」。
今年手に入れた2つのトロフィはレプリカとして、自分や弟・勝将のために9月に完成した屋内練習場に飾っている。「練習場にトロフィを置くところを作って並べてある。弟が空手で表彰されたものもあって『それ、ちゃうんじゃない?』って」と笑って、今年5月にプロ転向した1学年下の弟をいじるのも姉なりの愛情。最新のウェートトレーニング機器、ピラティスのエリア、ショット練習スペースがある部屋の棚はまだまだ空いている。
協力/THE APOLLO