<プロボクシングWBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇17日◇東京・両国国技館WBA世界バンタム級王者の堤聖也(…

<プロボクシングWBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇17日◇東京・両国国技館

WBA世界バンタム級王者の堤聖也(29=角海老宝石)が、元5階級制覇王者を撃破して2度目の防衛に成功した。同暫定王者ノニト・ドネア(43=フィリピン)と団体内統一戦で2-1の判定勝利を収めた。4回にあわやダウン寸前まで追い込まれたが、中盤から盛り返し、死闘を制した。

「ギリギリでしたね。本当に心配をおかけしました。ドネア選手、めっちゃ強かったです」

世界戦27度のキャリアを誇る強打者と、ダウンも覚悟の上で打ち合った。ドネアの“宝刀”左フックをまともに食えば倒される。それも想定してリングに上がった。「倒されても最後に僕が勝つ」。殿堂入りが確実視される名王者にも、不断の連打で活路を切り開くスタイルを貫いた。

43歳になったドネアに“フラッシュ”と形容された往年のスピードはない。体力の衰えを指摘する声もあるが「映像を見たけど“ドネアはドネア”。左フックもそうだし、細かい部分でのカウンター、ボディーとの打ち分け……身体能力は衰えてもパンチ力は衰えていない。怖い」と堤。その恐怖心を万全の準備を整えることで克服し、勝利をつかみ取った。

2月に比嘉大吾(志成)と引き分けて初防衛に成功した後、両眼を手術して休養王者となった。当初、復帰戦は正規王者に昇格したアントニオ・バルガス(米国)との統一戦が予定されていたが、母親を病気で亡くしたバルガスが辞退。正規王者に再昇格した堤の相手が、暫定王者ドネアに代わった。「自分が本当にドネアとやるの? という浮足立つような感じ。学生時代からみんな知っている選手。当時の僕に伝えたいくらい」と驚いたが、試合が近づくにつてれ「ただの対戦相手」へと意識が変わったという。

昨年10月に井上拓真から初挑戦で世界王座を奪取したが、今年11月に井上拓真(大橋)が“無敗の神童”那須川天心(帝拳)を破ってWBC王座に就いて評価が急浮上。日本人初の5階級制覇を目指して階級を上げた井岡一翔(志成)は大みそかにWBA同級挑戦者決定戦に臨む。ドネア戦の計量後、堤は「拓真戦は決勝戦だと思って戦ったが、また準決勝からやり直している感じ」と語っていた。その準決勝を勝ち上がった。

堤は「統一戦もやりたいし、スーパーフライ級から上げてくるレジェンド(井岡)の挑戦も受けたい。ドネア戦をクリアすればもっと面白い人生が待っている」と試合前に語っていた。最大の難関を突破したことで、決勝のビッグマッチへの道が開けた。【首藤正徳】

各ラウンドVTRと記者採点は次の通り。

【1回】ドネアはゆったり構えてじりじりと前にでる。堤は足を使いながら様子見。ドネアは鋭い左ジャブで顔面を捉える。左フックはシャープで堤のボディーを捉えた。堤はカウンターの左フックをヒットした。ドネア10-9堤

【2回】堤はサークルリングして、パンチを放つ。ドネアはじっくり相手を見て、ワンツー。堤も左フックを放って反撃する。終了間際に、ドネアは右ストレート→左ストレートの逆ワンツーをヒット。ジャッジにアピールした。ドネア10-9堤

【3回】ドネアは左ジャブを多く放ってリズムをつかむ。堤は懐に入ろうとするが、なかなかテンポが上がらない。ドネアは左ストレートを何度も伸ばして、堤のリズムを断ち切った。ドネア10-9堤

【4回】堤が前に出て連打を放つ。ドネアの反撃をかわしながら、手数を多く出していく。ドネアは左ジャブ、右ストレートも被弾。堤が主導権を握ったかに見えたが、終了間際に、ドネアがカウンターの右アッパーをヒット。堤は腰が砕けて、バランスを崩すが、ダウンはしなかった。ドネア10-9堤

【5回】ダメージを感じさせる堤は足を使って、回復に努める。ドネアはじりじりと距離をつめて、左フック、右アッパーをヒット。さらに4回に大ダメージを与えた右アッパーを再びヒット。堤の左ジャブに合わせるカウンターだった。堤は鼻から激しく出血も、このラウンドを生き延びた。ドネア10-9堤

【6回】堤は足を使って左フックを放つ。ドネアは左手を下げたL字ガードでじりじり前に出る。堤はラウンド後半に、左フックをヒット。両足がそろった状態で受けたドネアはバランスを崩した。堤は右ストレート、左フックなどを当てて盛り返した。堤10-9ドネア

【7回】堤は前に出始める。ドネアは足を使って、左ジャブをつく。堤はドネアのカウンターを受けても構わずに前に出る。終盤にはロープにつめてワンツー、左ボディーフックをヒット。連打を集めた。ドネアは切れあるアッパーを見せるが、ヒットせず。堤10-9ドネア

【8回】堤が手数で上回り始める。左のカウンターから連打をくり出す。ドネアがロープを背負う場面も増え、左目が腫れ始めた。堤は左フックをボディー→顔面に返して、さらに右ストレートも追加。3連発をヒットさせた。堤10-9ドネア

【9回】ドネアはがっちり構えて正確な左ジャブで立て直しを図った。堤の顔面をヒットして、相手の前進を阻む。堤は小刻みに動きながら、懐に入ることを狙う。時折体ごと飛び込む左フックを披露。プレッシャーをかけ続けて、主導権を争った。堤10-9ドネア

【10回】堤は左フック、右のスイングでドネアに迫っていく。ドネアも堤の連打にカウンターを差し込んで危険な場面をつくった。堤は手数で上回って、ドネアに迫っていく。右足を踏み出してからの変則的な左フックでドネアをロープに下がらせて、連打を集めた。堤10-9ドネア

【11回】堤は左ジャブを伸ばして前に出る。右ストレートから連打を放っていく。ドネアは右アッパー、左アッパーをヒットさせるが、堤を下げさせられない。堤は右から連打で詰めて、終了間際には右を2発ヒット。堤10-9ドネア

【12回】堤は左フックをヒットし、ドネアは大きく腰を沈めた。ダウンにはならなかったが、ダメージは明らかで動きが減った。堤は、右フックを軸にして、ロープにつめて一気に攻めた。ラスト10秒は両者が激しく打ち合って、終了のゴングを迎えた。堤10-9ドネア

◆堤聖也(つつみ・せいや)1995年(平7)12月24日、熊本市生まれ。中学2年からボクシングを始め、九州学院高から平成国際大と進み、国体準優勝6度の全国3位などアマ戦績は84勝(40RSC)17敗。18年にワタナベジムからB級(6回戦)でプロデビュー。19年に角海老宝石へ移籍。22年に日本バンタム級王座を獲得し、4度の防衛成功後の24年1月に返上。23年の同級モンスタートーナメント優勝。24年10月にWBA世界バンタム級王座獲得。趣味は古着集めと料理。家族は母邦代さんと兄、姉。身長166センチのスイッチボクサー。