NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン2 第1節2025…
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第1節
2025年12月14日(日)12:00 太田市運動公園陸上競技場 (群馬県)
日野レッドドルフィンズ 22-25 九州電力キューデンヴォルテクス
12シーズン目で初のフル出場とPOTM。最前線で謙虚に支える「いつも100%」の男
プレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞は初めて。九州電力キューデンヴォルテクスのフッカー、王鏡聞選手
プレゼンターの女性からキャップを渡されると、ハニカミながらそれを受け取った。
「僕一人だけでどうにかなる試合ではありませんでした。みんなのおかげでとれた初めてのプレーヤー・オブ・ザ・マッチです。そのことがうれしいです」
九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を支える34歳のフッカー、王鏡聞。後半3分にレッドカードで数的不利になる展開となったビジターゲームで、チームはそこから15得点を奪って逆転勝利を手にした。最後に逆転トライを決めたのが王であり、前半からスクラムをはじめとするフォワード戦で優位に立つなど、誰もが認める活躍を見せた。王にとって、大学卒業後12シーズン目で初めてとなる公式戦フル出場でもあった。
「いつもハードワークしてくれて、ナレッジも高く、しっかりチームをリードしてくれるリーダー的な存在。セットピースも含めて、今日の勝利に不可欠でした」(今村友基ヘッドコーチ)
「どの練習でも、試合でも、常に100%で挑む姿勢があって、それがみんなにいい影響をもたらしてくれています。だから今日も、いつもと変わらず、という感じなんです」(古城隼人キャプテン)
大阪体育大学を卒業後、4クラブを渡り歩いてきた。経験は豊富で、謙虚な男だ。そして前述のように、チーム全員からの信頼も厚い。
「年をとったからといって、サボられへんしね。先頭を切ってやらないと、みんなの見本にならないじゃないですか。若いころは『自分一人で大丈夫だろう』という感じもありましたが、いまはみんなのためにならないといけないと思って『いつも100%』を意識してやっています。自分がしっかりしないと、年下の選手もできるようにならないですから」
「いつも100%」の男は、「今までの中で一番楽しいラグビーをしているんです」と目を輝かせている。新しいコーチ陣が加わった今季、チームは『ボールを止めないラグビー』に取り組んできた。王も、「相手よりも早く動き、前を見て判断する」と、新スタイルに挑む中で成長を実感しているという。謙虚な王をはじめ、チームはそれに実直に取り組んでおり、『躍動』という今季のスローガンのように観る者も楽しめるようなラグビーを目指している。
一人少なくなっても逆転を遂げた開幕戦を自信に変え、九州KVは昨季6位からのジャンプアップを期す。王は、きっとその最前線で謙虚にチームを支え続けるだろう。
(田中直希)
日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、中鹿駿キャプテン
日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は素晴らしい環境の中で開幕戦を迎えることができ、大変うれしく思っています。ありがとうございました。昨季同様、キューデンさん(九州電力キューデンヴォルテクス、以下九州KV)との試合は非常に拮抗した内容になることは想定して準備してきましたが、ペナルティが多く、ミスが続いたことで相手にチャンスを与えてしまい、それが今日の結果につながったと思います。プレシーズンを含めて準備自体は良いものができていると感じていますので、今回出た課題をしっかり改善し、次の試合に向けてさらに良い練習を重ね、今日以上のパフォーマンスを全員で目指していきたいと思います。本日はありがとうございました」
──相手選手にレッドカードが出たあとの戦い方について、今後につなげたい点を教えてください。
「人数が少ない相手に対してうまく戦うこともそうですし、パスがもう一つつながっていればチャンスになったような場面もありました。いい形は作れているので、最後を仕留める精度を高めていきたいです。次の試合に向けて、しっかり準備していきたいと思います」
日野レッドドルフィンズ
中鹿駿キャプテン
「本日はこのような環境でラグビーができたことを、本当にうれしく思います。苑田さん(苑田右二ヘッドコーチ)と同じで、ペナルティによって自分たちの首を絞めてしまう形になり、さまざまな場面で相手からプレッシャーを受けたことが、この結果につながったと感じています。また、相手に流れが傾いた際に、それをこちらに引き戻せなかった点もペナルティなどが理由になっていると思います。ただ、次の試合はすぐ来ますので、悪かった点はしっかり反省し、切り替えて準備していきたいと思います。本日はありがとうございました」
──開催地となった群馬のファンへのメッセージをお願いします。
「今季から群馬県太田市がセカンダリーホストエリアになりました。初めてラグビーを見るという方にも、すごく楽しい、エキサイティングなラグビーをお見せしたいと思います。引き続き、応援をよろしくお願いします」
九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ(左)、古城隼人キャプテン
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「本日は寒い中にもかかわらず、素晴らしい環境を整えていただいた関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。試合は非常に難しい展開でしたが、それをしっかりと勝ち切ってくれた選手たちを誇りに思います。プレシーズンで準備してきたラグビーとは異なる形になった部分もありましたが、それも開幕戦ならではの難しさだと感じています。まだまだ自分たちが積み重ねてきたラグビーをお見せできる部分は多くありますので、次につながる良い試合になったと思います」
──レッドカードが出て一人少なくなっても、チームの伝統的な守備の強みが生き、勝利につながったように感じましたが、その点についていかがでしょうか。
「まず、レッドカードの場面で相手選手にけがを負わせてしまったことについては、申し訳なく思っています。その中でも選手たちは我慢強く戦い、自分たちの武器であるモールを使いながら耐えてくれました。自分たちのペースで試合を進めることができた点は良かったと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
古城隼人キャプテン
「今シーズンの開幕戦ということで、緊張感のある中での試合でした。プレシーズンから取り組んできたことを信じて、出し切ろうという話をずっとしていました。グラウンドコンディションや開幕戦特有の難しさなど、厳しい状況ではありましたが、その中で戦い方をしっかりアジャストし、自分たちのラグビーを信じてやり切れたことが、結果につながったと思います」
──最後のトライにつながった場面で、ペナルティキックではなくタッチキックを蹴ってモールで攻める選択をしましたが、その判断の意図を教えてください。
「試合前からさまざまなシミュレーションを行ってもらっていました。最後は試合に出ている選手たちで決めてもいいという判断を(コーチ陣から)していただいていたので、あの場面では、全員がトライを取れるという共通認識をもてており、その判断を信じた結果、トライにつながったと思います」