ストリートダンスなどのプロチームが競い合う「Dリーグ」が10月、シーズン開幕を迎えた。6年目の今季は、開業したばかりの…
ストリートダンスなどのプロチームが競い合う「Dリーグ」が10月、シーズン開幕を迎えた。6年目の今季は、開業したばかりのトヨタアリーナ東京(東京都江東区)に毎回満席の約6500人を動員している。世界初のプロダンスリーグとして若い世代の支持を集め、多くの企業がチームオーナーやスポンサーとして参加する。その人気の秘密と将来について、発起人で運営会社DリーグのCOO(最高執行責任者)を務める神田勘太朗さん(46)に聞いた。
■スポーツ×エンタメで右肩上がり
2020年の発足以来、観客動員や動画配信は毎年3~5割ずつ伸びているという。「勝ち負けという競技性が生むストーリーを軸に、スポーツとエンタメの要素で受けている」
そもそもDリーグを始めた理由は「高校までのダンスの出口を作りたかったから」と語る。2000年ごろまでに習い事としてのダンスが定着し、12年度には中学で必修になった。この間に高校生の全国大会も始まった。
「ダンスのうまい子がクラスの人気者になる時代なのに、部活で終わってしまう。野球やサッカー、バスケットボール、バレーボールなどと同様にプロリーグが必要だと考えていた」
Dリーガーの年齢制限は15歳以上で、平均は20代半ば。年俸は400万~1500万円という。「先日、テスラの車を一括購入した子がいた。サッカーのJ2クラスの水準にはあると思う」
チーム数は当初の9チームから今季は16チームまで増えた。2ブロックに分かれてリーグ戦を戦い、それぞれ上位3チームが決勝に進出する。
■ジャッジ、ファン投票に5割の重み
各チーム8人の構成で、ストリートやジャズ、ハウスなどのダンス作品を2分~2分15秒にわたって披露する。テクニックや作品評価、動きの同調性など4項目をダンスやアーティスティックスイミングの専門家が採点し、会場と配信視聴のファン投票を加えて勝敗を決める。
これまではそれぞれのジャッジを同じ比重にして勝敗を決めていたが、今季からファン投票の比重を合わせて50%に高めた。「ファンのダンス観が育ってきたことを反映した。好き嫌いではなく、チームや作品のスタイルをしっかり評価してくれると信頼している。投票が勝敗を左右することが多く、ファンの没入感も増している」と感じている。
■ファンは20代、スポンサー注目
ファンの平均年齢は20代で、女性が約7割を占める。「プロ野球が50代、Jリーグが40代と言われているので、圧倒的に若い」。そのファン層の若さが経営的な強みを生む。
協賛には、ソフトバンクや三井住友銀行、ソニーなどの大手企業が名を連ねる。タイトルスポンサーを務める第一生命保険の担当者は「社名が若い世代に直接伝わるので、ブランド認知の獲得を意図している。将来、保険を考える際の選択肢にしてもらえれば」と期待をかける。
■オーナー「就活市場で知名度アップ」
チームのオーナーはエイベックスやKADOKAWAのようなコンテンツ企業のほか、人材派遣、IT企業などが多い。今季からオーナーになったITのチェンジホールディングスの高橋範光・執行役員は「(法人向けの)BtoB企業なので一般的な認知度は低い。2月に参加を発表すると就活市場での知名度が上がり、学生との面接でもよく話題になる」と効果を語る。
Dリーグでは、ダンスに使用する音楽は全曲オリジナルだ。オリジナルでない場合だと「これまでネットに動画をアップしても、使用曲の著作権の関係で削除されることが多かった」という。
各チームが曲を作り、リーグと著作権を共有して配信収益を分配する。「1曲でもヒットすれば、芋づる式に過去の曲も聴かれて高収益を生む。そのためにも世界進出を果たしたい」
■目標は日本発のW杯創設
米国や中国など各国にプロリーグを作り、W杯を開催することが目標だ。学生時代から世界各地でダンス交流を重ねた経験をもとに「非言語コミュニケーションのダンスは日本発でそれができる可能性がある」と断言する。
「日本人のリズム感が良くなっただけでなく、ダンス教室で技術も向上し、授業や部活も盛ん。裾野が広がってレベルが高くなった」。昨年のパリ五輪では「ブレイキン」の女子でAMIが金メダルを獲得し、昨季はDリーグに在籍した。男子4位のShigekixは今季加入した。サッカーのようにユースを抱えるチームもある。
「このカルチャーとビジネスで、日本の『失われた何十年』を取り返したい」(曺喜郁)
かんだ・かんたろう 長崎市出身。ダンサー名は「カリスマカンタロー」。明治大在学中から起業し、2005年に始めたストリートダンスバトルの「ダンスアライブ」は国内最大級のダンスイベントに成長した。
■記者の視点)リスペクト精神、世界を変えるか
「Dリーグが盛り上がっている」と聞いて、今季の開幕戦で初めて会場を訪れた。技術に目を見張り、クールやコミカルなど多彩な傾向の舞台を堪能。ジャッジでファン投票の比重が高いから、自然と真剣に見る。
強く感じたのはリスペクト。Dリーガーやチーム同士、ダンサーとファンの間に「あなたがいるから成り立っている」という敬意が満ちていた。社会や世界を変える潜在力がありそうだ、と言ってもいい?