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NTTジャパンラグビー リーグワン 2025-26
ディビジョン2 第1節
2025年12月13日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 28-17 日本製鉄釜石シーウェイブス

父の背中を追う若き才能。先発落ちと思われた試合でつかんだ2アシスト


東福岡高校、近畿大学、そして清水建設江東ブルーシャークスへ。西端玄汰選手

「やはり、お父さんですね」

憧れの選手を尋ねられると、西端玄汰は迷わず父の名を挙げる。この日、チームの1本目と2本目のトライをアシストした11番は、宗像サニックスブルースで活躍したナンバーエイト、父・要の背中を小さいころから追い続けてきた。

「父は気持ちの強いプレーヤーでした」と真剣に語ったかと思えば、「パスやアタックは中2くらいで勝ってましたけどね」とおどけて笑う。しかし、幼いころに見上げた背中を、まだ超えられたとは思っていない。

昨季、D2/D3入替戦でアーリーエントリーながら初キャップを記録し、そこから約半年で迎えた今季の開幕節でリーグ戦デビューを飾るなど、順調にキャリアを積んでいるように見える。しかし1週間前、開幕戦のメンバー発表で、西端は「リザーブ」と告げられていた。「だいぶショックでしたね」。ジャパンラグビー リーグワン ライジング2025を含む10月以降のプレシーズンマッチ6試合ではすべてスタートで出場してきたが、開幕戦ではスタメンを外れた。落ち込む姿は誰の目にも明らかだった。それでも気持ちを律し続け、先発予定だったメンバーのアクシデントでチャンスをつかみ、2アシストとしっかりと結果を残した。

1本目の長谷銀次朗のトライにつながった場面。ラインアウトの前に、ビリー・バーンズへ「スペースがある」と声を掛け、狙いどおりに突破。伸びてきた相手の腕を一度は振り切ったが、二度目は絡め取られそうになり、背後から長谷の声が聞こえてオフロードパスを選択した。2本目の尾﨑達洋のトライにつながるプレーでは、事前に浦野龍基コーチングコーディネーターから示されていた戦術で勝負し、再度オフロードパスを選んだ。

勝利に直結する働きを見せたが、「自分でトライに行きたかった」と悔しさをにじませる。“気持ちが強い”とは、激しいタックルや果敢な突破だけを意味しない。悔しがることもまた、裏を返せば気持ちの強さだ。父から確かに受け継いだ資質だろう。

西端は海辺の街、福岡県玄海町で生まれ育った。小学生時代に所属したのは玄海ジュニアラグビークラブだ。玄汰の『玄』はその地名から、『汰』は海にちなんで水を意味する三水偏の字があてられた。

水にゆかりのある名をもつ男はいま、“水の都”江東区を走る。隅田川、荒川、東京湾、そして縦横に流れる運河。その真ん中にあるのが、チームのホストスタジアム・江東区夢の島競技場だ。

父の背中を追う若き才能が、今日もまた一歩、あの日の夢に近づいていく。

(奥田明日美)

清水建設江東ブルーシャークス


清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、安達航洋キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督兼チームディレクター

「まず、協会関係者の皆さまをはじめ、多くの関係者の方々にご尽力いただいたことに感謝しています。無事に開催できたこと、開幕戦を迎えられたこと、本当にありがたく思います。日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)さんとは江東区夢の島競技場で2回対戦し、これまで勝てていなかったので、今回初めてホストで勝つことができてうれしく思います。そして何より、選手たちがハードワークしてくれて成長を見せてくれたことがさらにうれしいです。ありがとうございました」

──開幕前にも釜石SWとプレシーズンマッチを行ったと思いますが、そこからどんな準備をしてきたか教えてください。

「グラウンドでの細かい修正は吉廣(広征)ヘッドコーチに任せていますが、私自身が強調したのは開幕戦の独特な雰囲気に飲まれないことです。プレシーズンでは勝ちましたが、相手は4年間ディビジョン2で戦ってきた誇りがあり、積み上げてきたものがある格上のチームだと伝えました。われわれは昇格・降格を経験し、今季が初めてディビジョン2を連続で戦えるシーズンです。試合の直前にも伝えましたが、だからこそマインドセットの部分を私自身も強く意識し、同じ相手でもプレシーズンとは違う試合になると選手に伝えました」

清水建設江東ブルーシャークス
安達航洋キャプテン

「関係者の皆さま、本日は素晴らしい会場をご用意いただき、ありがとうございました。開幕戦ということで緊張感のある試合になるとは分かっていましたが、自分たちの規律が乱れ苦しい時間帯も多くありました。その中でも最後に踏ん張り切れたことが、今日の勝因だと考えています」

──点差が詰まり苦しい場面がありました。キャプテンとして、グラウンドでどのような声を掛けていましたか。

「失点の多くが自分たちの規律の問題だったので、まずはそこに立ち返り自分たちにフォーカスして『粘り強く守ろう』と話していました。今季は練習の強度やメンバー構成を見ても、これまでで一番強いと言えるチームだと自信をもっています。ただ、それを試合で出すことが強いチームと弱いチームの分かれ目です。今日は苦しい中でも最後に出し切れたと感じています。まだ改善すべき点もありますが、次の試合に向けてチームとしても個人としても成長できるように頑張っていきたいです」

日本製鉄釜石シーウェイブス


日本製鉄釜石シーウェイブスのトウタイ・ケフ ヘッドコーチ(左)、河野良太キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
トウタイ・ケフ ヘッドコーチ

「今日のエフォート(努力)は本当に良かったと思っています。ディフェンスでいくつかエラーやシンプルなミスはありましたが、そこは今後改善できる部分です。それでも選手たちの努力の面は非常に良かったですし、ここからチームとして積み上げていけると思っています」

──プレシーズンでも清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)と対戦しましたが、その後に修正できた点はどこでしょうか。

「まずスクラムです。改善に取り組んできましたが、まだ課題は残っています。特に前半のスクラムは難しい場面がありました。また、修正点としては『やるべきことを確実に遂行しよう』と選手たちに伝えており、多くの局面でそれが体現できていたと思います。われわれとしては良いプレーをしていたと思いますが、今日は江東BSがスコアし勝利をつかみました。そこは江東BSを称えたいと思います」

日本製鉄釜石シーウェイブス
河野良太キャプテン

「前半の入りで先にスコアしたいところでしたが、ディフェンスのミスから江東BSに先制を許してしまいました。ただ、それ以外の時間帯ではディフェンスのフィジカルの強さを発揮して我慢強く戦えていたと思いますし、次戦以降のポジティブな点になったと捉えています。一方でアタックではゴール前まで攻め込みながらもスコアできず、流れに乗り切れませんでした。そこは次節に向けて改善したいと考えています」

──釜石からも多くのファンが駆け付けていましたが、どう感じていましたか。

「本当に素晴らしい環境の中でラグビーをさせてもらい、心から感謝しています。釜石から駆け付けてくれたファンの方々も多かったと思いますし、どうしても勝ちたかったという思いがあります。ただ、シーズンはまだ続きます。次節はホストゲームですので、しっかり勝利を届けられるように準備していきたいと思います」