NTTジャパンラグビー リーグワン 2025-26ディビジョン1 第1節(リー…

NTTジャパンラグビー リーグワン 2025-26
ディビジョン1 第1節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年12月13日(土)14:30 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 44-33 三重ホンダヒート

もう一度、前へ。姫野和樹が示す“トヨタらしさ”


姫野和樹キャプテンの活躍などでトヨタヴェルブリッツは開幕戦に勝利した

トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)で入団初年度からキャプテンに任命された姫野和樹も、今季で加入9シーズン目を迎える。そんな彼が今季、とりわけ強調しているのが“トヨタらしさ”だ。

「“トヨタらしさ”というのは、フィジカルを武器にどんどん前に出て泥臭くプレーすること。それが僕たちのもっているアイデンティティーであり文化で、昨季はそれを出し切ることができなかったし、近年それが失われていると感じていた」と姫野は語る。

中学でラグビーを始め、すぐに虜になった姫野は、「楕円球と出会わなければ人生が間違った方向に進んでいたかもしれない」と言うほどこのスポーツに感謝をしている。その学生時代に憧れたのは地元トヨタVの緑色のジャージー。地下鉄に乗って試合会場に足繁く通い、夢中になって応援した。

当時のトヨタVは紛れもなく強豪で、計8度の全国優勝を誇る名門。しかし、リーグワン発足以降は優勝どころかプレーオフトーナメント進出もできず。姫野も直近2シーズンはけがの影響もあり、納得がいくパフォーマンスを出せていなかった。

捲土重来を期す今季、開幕戦の立ち上がりからキャプテンはフルパワーで臨む。前半5分には今季チーム初トライを決め、何度も相手にぶつかっていった。後半途中に逆転された直後には「フィジカルで負けている。そこはマインドセットの問題だ」と、短い言葉でチームを引き締めた。するとチームはすぐに再逆転。3トライを重ね、三重ホンダヒートを突き放した。

「今日はみんなフィジカルバトルで逃げなかった。そのメンタリティーが僕はすごく好きでした」と、姫野は笑顔で振り返った。

帝京大学の後輩でもあり、攻守でこの試合のキーマンになった青木恵斗は言う。

「僕はルーキーで、まだ“トヨタらしさ”というのはあまり分かっていないですけど、姫野さんを見ているとコンタクトして倒れてもすぐに起きてまたコンタクトする。そういう姿勢を見て、今季はみんなが最後まで相手を倒そうという気持ちになっていると思います」


『継承と進化』を体現するか、青木恵斗選手

今季のトヨタVのテーマは『継承と進化』。キャプテン姫野は背中でその伝統を語り、チームを引っ張っていく。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ


トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「まずは勝利という結果を率直にうれしく思います。この結果は、プレシーズンをとおして選手たちが積み重ねてきたハードワークと努力が反映されたものだと感じています。選手たちは非常にいい状態でスタジアムに入り、いいラグビーを見せてくれました。ただし、リーグワンは非常にタフなリーグであり、今日の相手の三重ホンダヒートさんも強い競争心とフィジカルを前面に出してきました。私たちにとって、これはあくまでシーズンのスタートに過ぎません」

──松田力也選手の復帰について、どのような思いを抱いていますか。

「まずは、復帰まで努力を重ねてきた松田力也を称賛したいと思います。彼はチームのハイパフォーマンスコーチであるジェイソン・プライスとともに、誇れるコンディションを作り上げてきました。体は以前より強靭になり、パワーやスピードも向上しており、それが自信をもってプレーできている要因だと思います。松田は日本代表で多くの経験を積んできた選手ですが、昨季加入後すぐにけがをしてしまいました。その期間中も、アタックとバックスを担当するイアン・フォスター共同コーチと良い関係性を築き、ラグビーIQもさらに高めてきたと感じています。現在は松田や小村真也、エイダン・モーガンら優秀なスタンドオフがそろい、チーム内に非常に前向きな競争が生まれています。それはほかのポジションでも同様で、内部競争がチーム全体のパフォーマンス向上につながっていると感じています」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「まずは結果に対して非常に満足しています。プレシーズンで取り組んできたことを試合の中でしっかりと表現でき、それが結果につながったことをうれしく思います。ただし、スティーブ・ハンセン ヘッドコーチが言うとおり、これはまだスタートに過ぎません。長いシーズンですので、驕ることなく、月曜日から謙虚に準備を進めていきたいと思います」

──後半、逆転されたあとも焦りが感じられませんでしたが、チームメートにはどんなことを伝えたのでしょうか。

「ハドルの中で選手たちに伝えたのは、『パッシブになるな』ということでした。受け身になるのではなく、自分たちからボールを奪いにいく姿勢が大切だと話しました。フィジカルの部分で後手に回っていましたが、そこは技術の問題ではなく、マインドセットの問題だということを一つのメッセージとして伝えました。選手たちはその直後のプレーでそれを体現してくれました。シンプルにフィジカルを前面に出すことが自分たちらしさであり、それを示してくれた仲間たちを誇りに思いますし、その姿勢を忘れてはいけないとあらためて感じた試合でした」

三重ホンダヒート


三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「もちろん、結果については悔しく思っています。前半は自分たちのラインアウトをなかなか獲得できず、セットピースから流れを作ることができませんでした。後半開始から巻き返すことはできましたが、細かな部分での実行力が一歩足りず、自陣22mライン内で相手に前進を許し、そこからなかなか脱出できなかったことが結果につながったと感じています。プラスの面も多くあったとは思いますが、実力が及ばず、本日はトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんの勝利となりました」

──今日得た課題と収穫について教えてください。

「前半はラインアウトでプレッシャーを受け、その後のアタックを継続するための土台を作れなかった点が課題だと思っています。また、ブレイクダウン周りで自分たちの良い形を作ることができず、反応の部分にも課題がありました。ブレイクダウンでターンオーバーを許し、マイボールをキープできなかったことが、モメンタムを作れなかった要因だと考えています。特にブレイクダウン周りは、今後に向けた大きな課題です。

一方で、パブロ(・マテーラ)が話していたとおり、チャンスを作ること自体はできていました。何度か数的優位を作り、相手を崩しかける場面もありましたが、その後の実行力については、引き続き改善が必要だと感じています」

三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

「勝つチャンスは多く作れたと思いますが、スコアにつなげることができませんでした。特にトライライン前5mのモールから得点できず、10点以上の差を付けられてしまい、そこから追い付く難しさを感じました。一方で、トヨタVさんは22m内に入ってからのアタックを確実に得点につなげていたと思います。私たちも勝つために準備して臨んだだけに非常に残念ですが、まだシーズン初戦です。次の数週間に向けて、これからも成長し続けていきたいと思います」

──今日の課題と収穫について教えてください。

「ポイントはほぼヘッドコーチと同じです。22m内に入った回数は多かったと思いますが、得点につなげられた回数では相手が上回っていました。3度ほど決定的なチャンスを生かせなかったことが、大きな差になったと感じています。また、ヘッドコーチが話したとおり、ブレイクダウンについてはまだ精査すべき点が多くあります。判断の部分も含め、特に自分たちの強みであるはずのブレイクダウン周りは、今後の大きな課題だと考えています」