■J2を勝ち抜くために必要な「控え選手の質」【J1昇格プレーオフ 決勝 12月13日 13時05分キックオフ 千葉 1…

■J2を勝ち抜くために必要な「控え選手の質」

【J1昇格プレーオフ 決勝 12月13日 13時05分キックオフ 千葉 1ー0 徳島 フクダ電子アリーナ】

 12月13日に決勝を迎えたJ1昇格プレーオフで、ジェフユナイテッド千葉はリーグ戦4位の徳島ヴォルティスを1対0で退けた。実に17シーズンぶりのJ1昇格をつかみ取った要因として、的確な補強があげられる。それによって、チーム全体の戦力に厚みを持つことができた。

 J2リーグで上位と下位を隔てるのは、交代カードとなる控え選手のクオリティにある。スタメンと控えの実力差が小さいチームが、上位に名を連ねていく。

 シーズンが深まるにつれて、ケガや出場停止のリスクが高まる。そのなかでもチームとしてのクオリティを落とさないことが、勝点脱出につながっていくのだ。

 リーグ戦最終節のFC今治戦で、千葉のMF椿直起が負傷した。チームトップタイのアシストを記録している彼を欠いて、J1昇格プレーオフに臨むこととなった。それでも、2列目にはレフティーの杉山直宏がいて、7月に獲得した突破力の鋭いイサカ・ゼインがいる。中盤の複数ポジションに対応する横山暁之や、経験豊富な米倉恒貴を配することもできる。さらには、10月にトップチームに昇格した姫野誠もいた。

 果たして、プレーオフ準決勝では途中出場の姫野が決定的な仕事をした。米倉も途中出場で得点に絡んだ。椿の不在を埋めることができていたのだ。

 徳島との決勝では、1対0とリードした終盤にCB鳥海晃司が投入された。相手のパワープレーを封じる役割を担った。

 J1のセレッソ大阪から4年ぶりに古巣に復帰してきた鳥海は、シーズン終盤になってバックアップ役に回っていた。4バックのセンターバックには鈴木大輔河野貴志が指名されていたが、3人の誰がスタメンで出場してもおかしくないレベルにある。プレーオフ決勝の最終盤という局面で、CBの選手層の厚さが生きたのだった。

■千葉はホーム開催のメリットを誰よりも知っていた

 J1復帰の三つめの要因としてあげたいのが「継続性」だ。

 千葉の小林慶行監督は、21年から千葉のトップチームでコーチを務め、23年から監督となった。クラブに関わって5シーズン目で、監督就任3年目で、J1昇格という結果を残した。

 監督の在任期間がそのままチームのレベルに反映される、とは言わない。ただ、小林監督の就任1年目に、千葉はJ1昇格プレーオフに出場している。3位の東京ヴェルディとアウェイで対戦し、1対2で競り負けた。

 就任2年目の24年は、土壇場でJ1昇格プレーオフ圏から滑り落ちた。最終節でプレーオフ出場を争う山形に敗れ、7位でフィニッシュしている。

 悔しさを噛み締めた過去2シーズンの経験をモチベーションへ変換し、千葉は小林監督のもとでチームの底上げを実現していった。スタンダードを上げていった。継続した強化が、結果につながったと言える。

 25年シーズンの総得点「56」は、リーグ5位の数字だ。失点「34」はリーグ最少2位タイである。そして、得失点差「22」はリーグトップなのだ。攻守のバランスにもっとも優れていたチーム、と言って差しつかえない。

 最後に触れたいのが、ホームアドバンテージである。

 リーグ戦3位の千葉は、プレーオフ準決勝と決勝をホームのフクアリで戦うことができた。そして、千葉のファン・サポーターは、圧倒的なまでのホームアドバンテージを作り出した。凄まじい熱量で、チームを後押しした。

 千葉は12年、13年、14年、17年、23年と、プレーオフに5度出場してきた。しかし、ホームのフクアリでは、一度も戦っていない。

 プレーオフの重みは、当事者にならないと分からない。プレーオフに出場できる価値、それもホームで戦えるアドバンテージを、このチームのファン・サポーターは深く、深く理解していたと感じる。

 プレーオフ準決勝の大逆転劇は、フクアリでなければ起こらなかっただろう。3点差を引っ繰り返したあの一戦は、J1の舞台へ戻るチームの支えになっていくに違いない。

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