2025年のJ1リーグは、大きな盛り上がりとともに幕を閉じた。その成功ぶりは、観客動員数にも表れた。国内リーグとして欧…
2025年のJ1リーグは、大きな盛り上がりとともに幕を閉じた。その成功ぶりは、観客動員数にも表れた。国内リーグとして欧州の5大リーグの一角を崩し、ベスト4へと至る道をサッカージャーナリスト大住良之がつづる。
■2011年の「小さな後退」
小さな「後退」が2011年にあった。開幕直後の3月11日に東日本大震災が発生し、Jリーグは7週間にわたって中断、4月下旬の第7節に再開されたが、延期になっていた5節分の試合を7月に集中的に入れたこともあって、このシーズンの平均入場者数は1万5797人にとどまった。
そこから徐々に入場者数を戻し、2019年にはついに2万人を突破、2万751人となった。この年は天候が不順で、雨にたたられた試合も多かったが、1月のアジアカップ(UAE)以後は大きな大会もなく、基本的に週末開催の日程で通せたことが、入場者が増えた大きな要因のひとつだった。
■神戸の「ビッグな補強」
もうひとつの要素が、ヴィッセル神戸の大胆な補強だった。2017年にルーカス・ポドルスキ(ドイツ代表)、2018年にアンドレス・イニエスタ(スペイン代表)と連続して世界的なビッグネームを獲得した神戸は、この年スペイン代表FWダビド・ビジャを戦列に加え、ファンを吸引した。
このシーズン、神戸はアウェイ17試合で総計51万9191人、1試合平均3万541人を集め、他クラブの経営に大きく貢献した。神戸が遠征した17クラブ中、実に8クラブで神戸戦がこのシーズンの最多入場者となった。ちなみに、神戸は全17試合のホームゲームをノエビアスタジアム神戸(収容2万8569人)で開催したのだが、総入場者数は36万5349人、1試合平均2万1491人だった。
この当時の世界各国の国内リーグでは、ブンデスリーガ(ドイツ)が世界最多の観客を集め、4万人台だったが、Jリーグは「ベスト8クラス」というところだった。クラブは観戦環境を整え、ファンサービスに力を入れ、スタジアムグルメを活性化し、さまざまなイベント開催するなど、それぞれに工夫を重ねて観客を伸ばし、「ベスト8」から欧州ビッグリーグの一角を崩す「ベスト4入り(2万5000人台)」を目指していた。
■パンデミックでの「大打撃」
そこに襲いかかったのが新型コロナウイルスのパンデミックだった。2019年末に中国で初めて患者が見つかると、あっという間に世界に蔓延、日本国内だけでも14万人が亡くなったと言われる恐怖の感染症。Jリーグは日本の他団体に先駆けてこの危機に立ち向かい、開幕したばかりのリーグ戦を4か月半も中断した。そして7月に再開すると、無観客から入場可能数を段階的に増やすという方法をとった。
その結果、2020年は1試合平均入場者が5796人、翌2021年は6661人。2022年にようやく入場制限を解除したが、人混みを恐れる人も多く、この年は1万4328人にとどまった。そこから2023年1万8993人と戻し、2024年には5年ぶりに2万人を突破して2万355人となった。「コロナ前」の2019年の2万751人に迫る数字である。
そして今年、入場者数はさらに伸び、2万1246人となった。先が見えず、誰もが苦しみ抜いた「コロナ禍」の影響を、Jリーグは完全に脱出したと言えるだろう。