NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン3 第1節2025…

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン3 第1節
2025年12月14日(日)12:00 アースケア敷島サッカー・ラグビー場 (群馬県)
ヤクルトレビンズ戸田 vs ルリーロ福岡

ルリーロ福岡(D3)


ルリーロ福岡の豊田将万ヘッドコーチ。「このクラブが好きなんです。成長したいと本気で思う選手ばかりだから」

ジャパンラグビー リーグワンのディビジョン3に参戦して2年目。ルリーロ福岡(以下、LR福岡)は今季も60名を超える選手が所属するリーグ一番の大所帯としてシーズンに挑む。ただ、その多くは日中フルタイムで働き、練習は日が落ちた19時から土のグラウンドから始まる。豪華な設備も潤沢なスタッフもいない。地域密着のクラブとして“あるもの”で戦い続ける。その最前線に立つのが豊田将万ヘッドコーチだ。

豊田ヘッドコーチはかつてコカ・コーラレッドスパークスや宗像サニックスブルースでプレーし、日本代表で9キャップを獲得した経験を持つ。華やかな舞台を知る男が、あえて環境の厳しいクラブを率いる理由は何か。「一瞬一瞬のプレーで相手を支配する。そのために最大限の準備をする」。今季のスローガン『Own the Moment』に込めた言葉は、選手だけでなく、自らの姿勢そのものでもある。

開幕前最後の、同じ福岡を本拠地とする九州電力キューデンヴォルテクスとのトレーニングマッチは、最終テストだった。ほぼ本番を想定したメンバーで挑み、意図した形と課題の両方を確認できたという。特にこだわってきたのはセットピースだ。昨季はスクラムとラインアウトで常に劣勢を強いられた。だからこそ今季は、その部分に向き合った。「強い相手に対しても、準備してきたものが出せるようになってきた」と語る。

その手ごたえを証明したのが、キックを起点に敵陣で仕掛けたトライだ。今季のLR福岡は『敵陣でラグビーをする』ことを明確な戦い方として掲げる。キックはそのための重要な武器となる。また、プレシーズンで11試合を戦えたことは大きい。昨季はわずか2試合。若手やプレータイムの少ない選手がゲームで成長し、チーム全体の底上げにつながった。「18〜20人で戦えるチームにする」。豊田ヘッドコーチの理想が、少しずつ形になりつつある。

厳しい環境でも前を向き続けられる理由を問うと、豊田ヘッドコーチは迷わず答える。

「このクラブが好きなんです。成長したいと本気で思う選手ばかりだから」。その象徴がキャプテンの三股久典だ。誰よりもハングリーに、誰よりも成長を求める姿勢が、豊田ヘッドコーチの心を動かし、再びキャプテンを託す決断に至った。

土のグラウンドで汗を流す夜。照明が落ちるころ、豊田ヘッドコーチは選手の背中を見送る。「ここから上に行くんだ」。その信念こそが、LR福岡の原動力である。

開幕戦、勝負のポイントは明確だ。鍛え抜いたセットピースで互角に持ち込み、接戦を勝ち切ること。

今季もまた、土の上からの挑戦が始まる。

(柚野真也)