今季限りで引退した森唯斗が過ごす穏やかな日々「今はノーストレス」 ソフトバンク、DeNAでプレーした森唯斗投手は、今季限…
今季限りで引退した森唯斗が過ごす穏やかな日々「今はノーストレス」
ソフトバンク、DeNAでプレーした森唯斗投手は、今季限りで12年間の現役生活に終止符を打った。引退試合から2か月半が過ぎ、挨拶回りなどに追われながらも、福岡市内で家族とともに穏やかな日々を送る。Full-Countのインタビューでは、改めて引退を決断した経緯、2年間を過ごしたDeNAへの思い、現在の心境などを語った。
勝負の世界から離れた森の表情は穏やかだった。「野球のことを考えない生活は何十年となかったですから、今はノーストレスって感じです。一番下の子の運動会に行ったり、送り迎えをしたり、家族と行動できる時間が増えたので、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせていますね。今まで嫁が頑張っていたからちょっとでも楽になるように、ご飯をつくったりもしています」。DeNA時代は単身生活だったこともあり、そんな生活の幸せを噛み締めている。
9月中旬、球団と話し合いの機会があり、来季の構想外を告げられた。8月28日は今季初めて巡ってきた出番で5回4安打2失点を好投し、勝利投手になったばかりだった。それでも「だいたい予想はついていましたし、こういう世界ですから1試合ではなくトータル1年間。ベイスターズの場合、僕らの世代はデッドラインだと思うので。僕の中で、次はないと決めていました。ここに来る前から『ベイスターズがなくなったらそこで』と。けじめじゃないですけどつけようと思っていたので、その時が来たかって感じでした」。
2023年限りでソフトバンクを戦力外となったとき、森のもとには複数球団からオファーが届いた。中にはDeNAよりも条件のいい球団もあった。しかし「自分の中では一番最初に来てくれたところと決めていた」と真っ先に声を掛けてくれたDeNAを選んだ。“最後の挑戦”とした場所で、静かに引き際を受け止めた。
「いずれはNPBのコーチをやってみたいっていうのはあるんですよ」
ファームでの最終登板となった9月23日の楽天戦では7回1/3を1安打無失点という快投を披露した。周囲からは自然と「まだできる」という声が上がっていた。「それは聞こえていました。でも迷いは全く無かったです。プロなので、いつまでもいつまでもという考えはなかったです」と首を横に振った。
DeNAで過ごした日々には「濃い2年間になりました。上茶谷から始まって……ああいうチームなので馴染みやすかったです」と笑う。森の獲得が発表された直後の2023年11月に行われたファンフェスティバルで、面識のなかった上茶谷が金のネックレスを付けて森の“誇張モノマネ”を披露。一気に距離を縮めた経緯がある。明るいチームに入り、ソフトバンク時代とは違った野球を経験したことに「今後の野球人生が変わってくるだろうなって。財産です」とうなずいた。
家族との日々を過ごす中で、「今したいことっていうか、夢があるんです」と少し照れくさそうに切り出した。「おかんの方のじいちゃん家が(徳島県の)川の近くにあって、小さい頃に釣った鮎を食べさせてもらっていた。家族で帰ったときに、河原で鮎釣りしながら子どもたちが遊んでいる、釣った鮎をその場で食べる……そんな光景がほしいですね」と優しい父の顔を見せた。
引退後、野球はやっていないが「今も好きなので」と日本シリーズやワールドシリーズはテレビでチェックしていた。継続的にジムで体を動かし、シーズン中に14キロ減量した体型をキープしている。「いずれは、NPBのコーチをやってみたいというのはあるんですよ。そのためにちょっとずつ勉強もしたいです」と今後のプランを明かす。抱負な経験と慕われた人柄。しばしのときを経て、今後は指導者としての姿を見せてくれる日が楽しみだ。(町田利衣 / Rie Machida)