FIFAワールドカップ2026の抽選会。グループFのポット2の枠に日本が入った瞬間から、オランダでは「日本」がトレンド…
FIFAワールドカップ2026の抽選会。グループFのポット2の枠に日本が入った瞬間から、オランダでは「日本」がトレンドワードになった。その後、ほかの対戦相手(チュニジアと欧州プレーオフBの勝者)も決まっていったが、やはりオランダで一番注目されているのが初戦の相手、日本だ。
6月14日、ロナルド・クーマン監督率いるオランダ代表は、サムライブルーとダラスで対戦する。オランダメディアの伝え方からも、日本はオランダが勝ち進む上での「手強い障害」として認識されていることがわかる。
「日本はもはや単なるエキストラ(脇役)ではない。成熟したチームであり、最近のワールドカップでは強豪国と互角に戦えることを証明している。驚きの結果を出すこともできる。だが我々は、決して彼らに驚かされてはいけない」
アムステルダムのテレビ局『NOS』のコメンテーターはこう述べている。
「統率の取れた戦術とスピードで、これまでも日本戦は常に難しい試合だった。しかし、ここ数年の日本の成長ぶりは、これまで以上だ。最近、日本と対戦した相手チームに聞いてみればわかるだろう」と日本を紹介したのは、オランダの全国紙『デ・フォルクスクラント』である。
オランダでの注目度がますます高まっている上田綺世(フェイエノールト) photo by Pro Shots/AFLO
日本対オランダと言えば、思い起こされるのは2010年の南アフリカワールドカップだ。この時も日本はオランダと同グループになり、2戦目で対決。結果はオランダが1-0で勝利を収めている。しかし、この試合で決勝ゴールを決めたウェズレイ・スナイデルは、組み合わせ抽選会のあと、当時をこう振り返っている。
「日本戦は、あのワールドカップで最も厳しい試合のひとつだった。勝利するには90分間、ずっとマックスの力で戦い続けなければならなかった。日本は本当に手強いチームだった」
この時の日本戦は、彼らにとって単なる1勝ではなく、「チームの士気を上げ、決勝まで勝ち進む原動力となったターニングポイント」だったと、オランダでは記憶されている。あの厳しい試合を乗り越えたからこそ、オランダは自信を持つことができたと、大会後に多くの選手が語っていた。
【注目を集める両国のサッカーの関係】
だから当時を知るオランダの選手やメディアは、日本を下すには生半可な気持ちではいけないことを強調する。
「日本は決して簡単に乗り越えられる障害ではない。そして今回、彼らは、これまで以上に勝ち進みたいと望んでいる」と、オランダのスポーツメディア『Sportnieuws.nl』のコメンテーターのひとりが説明していた。
同じく『Football Oranje』も、「日本は敬意を払うべきチーム。クーマン監督も試合開始のホイッスルと同時に注意深く戦わなければいけないことはわかっているだろう」と報じている。
オランダのスポーツ番組や新聞は、現在の日本代表の選手の詳細な分析に余念がない。そこでは、あらためて両国のサッカーのつながりが注目された。複数の新聞が、日本代表のメンバーのなかにエールディヴィジ(オランダ1部リーグ)の選手が数多くいることを紹介している。
なかでも最も知名度、注目度が高いのは、やはり現在18ゴールを挙げてリーグ得点王争いのトップを走っているフェイエノールトの上田綺世だろう。ほぼすべてのメディアが「最も警戒すべき選手」として挙げている。また、上田と並んで名前を挙げられるのが同じくフェイエノールトのディフェンダー、渡辺剛だ。「力強さと戦術的知性を併せ持った日本の選手の典型」と評される。
NECの小川航基や佐野航大もあらためて注目され、ポジティブな見出しとともに、「日本を油断してはいけない」というムードを高めている。さらに同じNECで現在20歳の塩貝健人も、日本代表の「秘密兵器」になるのではないかと、取り上げられている。
オランダと日本サッカーのこの深い関係について、オランダのメディアはプラスとマイナスのふたつの面があると見ている。
ひとつは、オランダはこうした日本選手の動きや長所、弱点を熟知しているため、止める方法を知っているというもの。だがその一方で「オランダの水で成長した彼らは、オランダサッカーの長所も短所も知っている。我々の手の内はばれている」(『ヘット・パロール』紙)とも報じている。
ちなみにオランダのサポーターのなかには、日本と同組になったことに、少しがっかりした人もいるようだ。
「同じアジアならウズベキスタンとか、もっと別なチームがよかった」「よりにもよってアジアで一番強いチームを引き当ててしまった」......SNSではそんな書き込みが数多く見られた。
最後に、抽選会後のオランダ代表監督ロナルド・クーマンの言葉を紹介しよう。
「当然のことながら、日本との対戦は我々にとって大きな挑戦だ。日本は強い。オランダの平均的なサポーターが考えているよりも、はるかに強いと思う。彼らに勝つのはかなり難しい。我々はこれから時間をかけて、日本戦に向けてしっかりと準備をしていかなければならない。ただ同時に、我々のグループはすばらしい試合を展開するだろうと言える。オランダ対日本戦は、誰もが待ち望み、誰もが観たいと思う、そんな楽しい試合のひとつになるのは間違いない」
そしてひと言、こう付け加えた。
「それにしても、日本がこれほど強い相手に成長するとは思っていなかった。日本は今日の世界サッカー界で最も興味深いチームのひとつだ」