2025年のJ1リーグは、鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じた。勝負強さで結果をつかみ取ってきたのが鹿島なら、良いサッカ…

 2025年のJ1リーグは、鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じた。勝負強さで結果をつかみ取ってきたのが鹿島なら、良いサッカーを追求したのが2位の柏レイソルだったと、サッカージャーナリスト後藤健生は考える。柏が示したサッカーの素晴らしさと今後の可能性についてつづる。

■シーズンを通して得た確信

 鹿島アントラーズの9シーズンぶりの優勝で幕を閉じた2025年のJ1リーグ。鹿島の粘り強さ、就任1年目の鬼木達監督の采配の妙など見どころ満載だった。

 だが、今年のJ1リーグで最大の話題は、パスをつないでビルドアップする素晴らしい内容のサッカーで2位に入った柏レイソルだったのではないか。

 昨季は守備的サッカーでなんとか残留を果たした柏を、やはり就任1年目のリカルド・ロドリゲス監督がまったく新しいチームにつくり変えてしまった。

 12月6日の最終節では、同時刻に行われていた鹿島アントラーズ対横浜F・マリノスの試合で鹿島が2対1で勝利して自力で優勝を決めたため、勝点で鹿島に追いつくことはできなかったが、難敵のひとつであり、5月のアウェーゲームでは0対3で完敗していたFC町田ゼルビアを相手に柏はしっかり勝利してみせた。

 優勝した(つまり最多の勝点76を積み上げた=23勝7分8敗)のは鹿島だったが、今シーズンのJ1リーグで最も良い内容のサッカーを披露したのが柏であることは間違いない。

 最終戦を終えたリカルド・ロドリゲス監督は記者会見の席で「このスタイルこそタイトル獲得への道だと確信を深めた」と断言した。

■変遷するプレースタイル

 J1リーグでは、2017年に川崎フロンターレが初のタイトルを獲得。以後、川崎が5年間に4度の優勝を記録。2019年と22年には横浜FMが優勝。いずれも、自陣からパスをつないでビルドアップするサッカーが持ち味だった。強い頃の川崎、横浜FMは相手を圧倒する攻撃的サッカーで突っ走った。

 しかし、2023年と24年にはヴィッセル神戸がJ1リーグを連覇。24年には神戸は天皇杯全日本選手権も制して「2冠」を達成した。吉田孝行監督がつくり上げた神戸は、前線からのプレッシャーをかけて相手ボールを奪い、ショートカウンターで相手ゴールに迫るというスタイルのチームだった。

 2024年に準優勝を飾ったのも同じく前線でのプレッシングとショートカウンターを駆使したサンフレッチェ広島であり、3位にはさらに守備的なサッカーでロングスローを含むセットプレーを武器とする町田だった。

 つまり、Jリーグでは川崎や横浜FMのようなパスサッカーの時代は過ぎ去り、カウンタープレス全盛の時代に入ったかと思われたのだ。実際、今シーズンも上位にはそうしたスタイルのチームが目白押しだった。

 最終節で柏が優勝を争ったのが勝負強さと鬼木達監督の勝負勘、そしてGK早川友基の圧巻のパフォーマンスを武器に戦った鹿島であり、また、柏が対戦したのが守備的サッカーでJ1昇格直後から2年連続で上位に食い込んできた町田だったことは、今シーズンを象徴したような出来事だった。

■世界のサッカーの流れ

 そして、それは最近10年ほどの世界のサッカーの方向性とも一致していた。FCバルセロナの「ティキタカ」が一世を風靡したのも、はるか昔のことのように感じられる。クラブレベルでも、代表レベルでもカウンタープレスが世界の主流となっている。

 しかし、リカルド・ロドリゲス監督率いる柏はそんな流れに逆行するかのように、ボール保持率を高め、選手たちはボールを受けられる位置にポジションを変えて複数のパスコースをつくって、徹底してパスをつないで相手を攻め崩す(一時代前のような)スタイルのサッカーで準優勝を果たしたのだ。

 自陣ゴール前で相手にプレッシャーをかけられても、それでも柏の選手たちはパスをつなぐことで相手のプレッシャーを回避してボールを前に運んだ。

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