2025年のJ1リーグは、鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じた。勝負強さで結果をつかみ取ってきたのが鹿島なら、良いサッカ…
2025年のJ1リーグは、鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じた。勝負強さで結果をつかみ取ってきたのが鹿島なら、良いサッカーを追求したのが2位の柏レイソルだったと、サッカージャーナリスト後藤健生は考える。柏が示したサッカーの素晴らしさと今後の可能性についてつづる。
■最終節での完勝
最終節のFC町田ゼルビア戦を振り返ってみよう。スコアは1対0。そして、柏レイソルの得点は町田のDF岡村大八によるオウンゴールだった。だが、内容的には柏の完勝といってよかった。
序盤戦こそ町田が主導権を取り、7分には相馬勇紀が仕掛けて、こぼれたボールを中山雄太がボレーで叩いて柏のゴールを脅かし、さらに19分にはCKからのクリアボールを相馬が枠内に強烈シュートで飛ばしたが、柏のGK小島亨介がはじき出した。
しかし、キックオフから20分ほどが経過して町田のプレッシャーが少しだけ弱まると、柏のパスがつながりはじめ、その後は柏のコントロールが続いた。
■エースストライカーが復活
前半目立ったのは、前節のアルビレックス新潟戦でハットトリックを記録したばかりのエースストライカー細谷真大だった。
24分に瀬川祐輔からの縦パスを受けて、岡村の厳しいマークも跳ね返して右サイドから持ち込んだり、30分には左サイドのスペースにうまく入り込んで杉岡大暉からパスを引き出す。
守備力の強い町田の守備陣を相手に、フィジカルの強さを見せつけた細谷だった。
パリ・オリンピック代表として活躍し、将来を嘱望されながら、なかなか得点を決めきれず、今シーズンは先発の座を垣田裕暉に譲ることも多かったが、シーズン終盤になってその才能をようやく発揮できるようになった。
年が変わってからの活躍によっては、来年のワールドカップ代表入りも期待される。
こうした柏の攻撃を迎え撃つ町田もしっかりと守備を固めて戦略的に戦ってきた。
町田は、中2日の強行スケジュールでACLエリートの蔚山戦を控えていたが、フルメンバーを並べてきた。序盤に猛攻を仕掛けたものの得点には至らず、次第に柏がボールを保持するような展開になると、町田はその柏のリズムを断ち切るための策を講じて対抗した。
つまり、FKやCK、スローインといったセットプレ-のときにすぐにリスタートせずに、時間をかけるのだ。
■町田の揺さぶりに負けず
テンポよくパスを回すスタイルのチームは、ゲームの流れを断ち切られることを嫌がる。たとえば、アンジェ・ポステコグルー監督時代の横浜FMはアップテンポな攻撃が持ち味だった。当時の横浜FMは、セットプレーにも時間をかけずにクイックスタートすることが多かった。そして、ポステコグルー監督は相手チームがセットプレーに時間を費やすことにとても敏感だった。
町田は、セットプレーに時間をかけて柏のリズムを断ち切ろうと試みた。特に、どうしても勝点3が欲しい状況の柏は、無得点のまま時間が経過すると焦りの気持ちも大きくなるはず。柏が焦って前がかりになってくれれば、町田にとってはカウンターのチャンスが広がる。
町田の前線にはドリブルで仕掛けられる相馬がいて、高さのあるアタッカーがそろっているだけにカウンターは狙いどころのひとつなのだ。
だが、町田のこうした対抗策に対して、柏の選手たちは動じることなく淡々とプレーを続けた。セットプレーに時間がかかっても、焦ったり、怒ったりすることはなく、ボールを奪ってから落ち着いてプレーを続けた。また、0対0のまま前半が終了しても焦ることはなかった。
これも、自分たちのスタイルに自信を持っているからなのだろう。