試合後の記念撮影に臨むサンバーズの選手とスタッフ。それぞれの胸の中に、自身の高校時代が去来していた(adsbygoogl…
試合後の記念撮影に臨むサンバーズの選手とスタッフ。それぞれの胸の中に、自身の高校時代が去来していた
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「春高サンバーズ」で温故知新の試み
昨シーズンよりスタートした大同生命SVリーグでは、各クラブが趣向を凝らしたアイディアでホームゲームを盛り上げている。11月29日、30日におおきにアリーナ舞洲(大阪)で開催されたホームゲームで、サントリーサンバーズ大阪は「春高サンバーズ」と銘打ったイベントでファンを楽しませた。
毎年1月に開催される全日本バレーボール高等学校選手権大会「春の高校バレー」の開幕も近づくこの時期に「春高サンバーズ」を行ったのには、「現在サンバーズでプレーしている選手も、全員が春高バレーに出場したわけではないが、大きな目標に向かって注いだ努力と情熱が、今の選手たちを支えている。今まさに未来に夢を抱き、ひたむきに日々を送っている高校生たちにも、温かい声援を送ってほしい」という、ファンに対するサントリーのメッセージが込められている。
試合前の選手紹介では選手たちが鉢巻き姿で登場。ムセルスキー+鉢巻きのコンビネーションは超レア
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VC長野トライデンツを迎えてのホームゲーム初日。コートに登場する際にサントリーの選手たちは高校生プレーヤーを思わせる鉢巻き姿を披露したり、スクリーンには各選手の現在の姿と高校時代の姿が二画面で映し出されたりと数々の演出がなされ、ファンの笑顔を誘っていた。
入場時、観客には今回のホームゲーム限定の小冊子(非売品)が配布されたが、その制作には月刊バレーボールが協力。編集部が所蔵する、各選手の高校時代の写真で構成した名鑑ページに、多くのファンが見入っていた。
司令塔としてVC長野を率いる中島。この日も味方攻撃陣の持ち味を引き出すべく、臨機応変なトスワークを見せた
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それぞれの「春高サンバーズ」①髙橋 藍&塁×中島健斗
試合そのものはもちろん真剣勝負。しかし、「春高サンバーズ」というテーマに沿った異なる視点でとらえれば、違う景色も見えてくる。
ポイント間のつかの間、ネットを挟んで言葉を交わす中島(手前)と髙橋藍
サントリーの髙橋藍と、VC長野の中島健斗は東山高(京都)の同期。2020年1月に開催された春の高校バレーで、同高に初めて優勝旗をもたらした仲だ。藍の兄、髙橋塁は彼らの2つ上の先輩にあたる。試合後、中島は高校時代を振り返りつつ、次のように語った。
「春高に出場し、優勝するというのは、本当に自分のバレーボール人生を大きく変えた出来事だったと思います。藍とは一緒に東山高を卒業して、それぞれ大学を経て、今こうしてトップリーグでともにプレーできるのはすごくうれしいこと。同じ高校でプレーしていたことを誇りに思っています」
MIP(最も印象的な活躍を見せた選手に贈られる賞)に選ばれた弟・藍(右)と、ピンチサーバーとしてチームを勢いづけるプレーを連発した兄・塁
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一方、藍は「高校時代に、将来は上のカテゴリーでチームメートになったり、あるいは対戦相手として戦ったり、そんな夢もあったなというのを思い出します。あのころはしんどかったけれど、それを乗り越えた先に今につながるものがある。それが高校生活なのだというのは、今だから言えることかなと思います」
そして、塁は「SVリーグで対戦していて、(中島は)本当に嫌なセッター(笑) 身長は高くないですが、トスが短くなることもなく、ファーサイドもすごくきれいなトスを上げる。また健斗のトスを打ちたいなと、勝手に思っているんです」
時を経てたどりついた三人三様の思いが、ネットを挟んで浮かび上がった。
「子どもたちが、憧れの選手と同じコートで夢を表現できるのは素晴らしいこと」と語り、笑顔を見せるオリビエ監督
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それぞれの「春高サンバーズ」②オリビエ・キャット監督
鉢巻き姿の選手たちの姿を、サントリーのオリビエ・キャット監督はどこか楽しげに眺めていた。
「私の母国フランスでは、勉強は学校で、スポーツは外のクラブで行うのが一般的です。バレーボール、サッカー、バスケットボール、みな同じです」。オリビエ監督は、日本の“部活”のような仕組みがフランスにはないことを語ったうえで、春の高校バレーや日本の高校生プレーヤーの印象を次のように語った。
「日本の若い選手のテクニックはとても印象的です。速い動きや戦術、試合中の態度、振る舞いなども、プロのプレーをお手本としているのがよくわかりますし、それはとてもいいことだと思います。実は今(記者会見が行われている間)、日本製鉄堺ブレイザーズとサントリーのU15がこの会場で試合をしているのですが、セキタさん(関田誠大)、タイシさん(小野寺太志)、トモヒロさん(小川智大)と同じコートで彼らがプレーできるのは素晴らしいこと。子どもたちが描く夢を、憧れの選手と同じコートで表現できるのは素晴らしいことだと思います」
オリビエ監督の言葉は、SVリーグが、そしてそこで戦う選手たちの存在が、子どもたちの夢を紡ぐ大切な役割を担っていることを物語っている。
“当たり前のことを当たり前に”。畑野監督の教えを胸にこの日もコートに立った山田
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それぞれの「春高サンバーズ」③山田航旗
「春高サンバーズ」が開催された週の初め、悲しい出来事があった。51年間もの長きにわたって名門・鎮西高(熊本)で指揮を執った畑野久雄監督が、11月24日に亡くなった。
VC長野の山田航旗は、2018年1月開催の春の高校バレーで優勝。現在もチームメートの赤星伸城、そしてサントリーの鍬田憲伸らとともに鎮西高に優勝旗をもたらした。2016年4月に発生した熊本地震の影響で、限られた練習環境のなか、地道な歩みの末にたどり着いた勝利だった。
畑野監督が旅立ってから初めて迎えた試合。山田は選手として、いつもと変わらぬ思いでコートに立っていた。
「鎮西高出身の選手は誰もが言っていますが、“当たり前のことを当たり前に”と、畑野先生は常に口酸っぱくおっしゃっていました。お別れのとき、先生のお顔を見て、あらためてその“当たり前のことを当たり前に”という言葉を強く思い出しました。選手として、ちゃんとしなければいけない。その思いで、今日はコートに立ちました」
それぞれの選手にとって、今を支える原点ともいえるべきものが、高校バレーにはある。「春高サンバーズ」が、それを証明していた。
文・写真/村山純一(編集部)
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