◇米国女子◇Qシリーズ(予選会) ファイナルステージ 最終日(9日)◇マグノリアグローブGC(アラバマ州)◇クロッシン…
◇米国女子◇Qシリーズ(予選会) ファイナルステージ 最終日(9日)◇マグノリアグローブGC(アラバマ州)◇クロッシングズコース(6664yd/パー72)、フォールズコース(6643yd/パー71)
「シャワーのお湯、出た?」――。最終日に備える朝のパッティンググリーン脇で、お互いの緊張をほぐすように世間話が交わされた。渋野日向子は、西村優菜が泊まったホテルのシャワーからお湯がなかなか出ずに連日震えていることを心配していた。
とにかく寒さが苦手な西村は、連日冷え込んだアラバマでも動きやすそうな渋野のウェアが気になる。「“ピナ姉”はいつも薄着ですよね」。そんな他愛のないやり取りを少し重ねてから、唐突にスイッチを切り替えてウォーミングアップのルーティンが始まった。この日がどれだけ大事なラウンドか、2人とも分かっていた。
最上位の出場資格「カテゴリー1」でスタートした今季は大変だった。年間ポイントランキングで渋野が104位、西村が115位に沈み、米ツアー参戦の道を切り開いた時以来の最終予選会に回ることが決まった。マネジメント事務所が同じで、転戦中には夕食のテーブルを一緒に囲むこともある。不本意なシーズンに唇をかみつつ、それでも2026年につながるものを求め、覚悟を決めて乗り込んできた。
初日は先にスタートしていた渋野が最初の10番ティへ向かう西村とすれ違うと、鼓舞するようなジェスチャーで激励した。ラウンド後は好発進を決めた西村に駆け寄ってねぎらいのハグ。最終ラウンドもボーダーライン上のプレーを4組前で終えた渋野は、やはり瀬戸際にいた西村のスコアを目で追った。
「『頑張れ!』だけど『ステイ!』みたいな…」。自らの当落にも絡む状況だった後輩の戦いを応援する気持ちを冗談めかしつつ、7番のボギー直後に8番(パー3)でバーディを奪い返した滑り込みに敬意を表する。同じ通算5アンダー24位に流した涙は、西村からのもらい泣きだったという。
「我慢してたんですけど、“ゆなパン”を見たら泣いちゃいました。(内容は)違うかもしれないけど、同じようにことし1年はすごく苦戦してきたから。お互いここに来たくはなかったし、でも最後の最後に、らしい通り方というか、(西村の)気の強さが出てるなって。ママの涙もね。みんな満身創痍なんで」と自分のことのように喜び、親子に抱きついた。
西村も姉貴分へのリスペクトをにじませる。「もちろん全部が分かるわけではないんですけど、たぶん彼女もすごく苦しかったシーズンだと思いますし、(注目される)プレッシャーもすごくあると思いますし…。なんですかね、似てるじゃないですけど、ちょっと気持ちが分かり合える部分も少なからずあるので、お互い通れて、すごく良かったなと思います」。ずっと歯を食いしばってきた2人が笑って来季へ向かえるフィニッシュを、心から歓迎した。(アラバマ州モビール/亀山泰宏)