◇米国女子◇Qシリーズ(予選会) ファイナルステージ 最終日(9日)◇マグノリアグローブGC(アラバマ州)◇クロッシン…

西村優菜(中央)は渋野日向子(左)、櫻井心那とともに最終予選会をクリア

◇米国女子◇Qシリーズ(予選会) ファイナルステージ 最終日(9日)◇マグノリアグローブGC(アラバマ州)◇クロッシングズコース(6664yd/パー72)、フォールズコース(6643yd/パー71)

西村優菜は泣いていた。現地でサポートする、いつも陽気な母・枝里子さんも泣いていた。「長かった…」。悪天候や厳しい寒さと闘い、当初の90ホールから短縮された72ホールをやっと消化できた6日間だけではない。もがき苦しんだ米ツアー3年目の全てがひと言に詰まっていた。

前日の17番(パー3)でボギーを喫し、25位タイまでのボーダーライン上で10ホールを持ち越して迎えた最終日もすんなりとは始まってくれない。一度ホテルを出てから、コースが霜で覆われた影響により2時間遅れる連絡が届いた。

最終9番は2打目で木の右を抜いて大きくフックをかけるセカンド

シビアなパットをしのいでパーを並べ、獲りたいパー5の4番でショートアイアンの3打目をピンに絡めてバーディを奪う流れは悪くなかった。しかし、チャンスを逃すどころか返しの距離を微妙に残した6番(パー5)から不穏なムードも漂った。7番で痛恨のボギーをたたき、通算4アンダー。この時点で圏外にはじき出された。広大な2つのコース内でもリーダーボードは片手で数えるほど。リアルな順位は分からなくても、「4アンダーが入らないことは分かっていた」と状況を理解していた。

7番のグリーンから8番(パー3)まで歩くわずかな時間で自分に言い聞かせたのは、とにかく気持ちを切り替えること。「あの8番のティショットは、すごく褒められると思います」。UTで奥ピンを攻め込んで右下1.5mに絡める真骨頂を、土壇場で発揮してみせた。

砲台グリーンへの寄せは練習ラウンドで準備を重ねていた

バウンスバックで再び圏内に浮上しても、これで終わらない。1Wショットが右に飛び出した9番は、木が邪魔になってダイレクトにグリーンを狙えない状況。大きく右を向いたインテンショナルフックの2打目でも足りず、右手前からの寄せが残った。砲台状のグリーン手前に切られたピンは土手を越えてすぐの場所にあり、アプローチの選択が悩ましい局面だったが、迷いはなかったという。

「練習ラウンドの時にウェッジでもやりましたし、6番アイアンで転がしたりもしました。いろいろ見ていた中で、パターがベストなオプションだった」。絶妙なタッチで転がし上げ、タップインパーで最後のピンチも切り抜けた。ハラハラドキドキの幕切れに「心臓が3つあっても足りない!」と笑顔でこぼす。

米ツアー4年目ではい上がる

3年前の最終予選会でもプレーしたマグノリアグローブGCは悪天候で終始ウェットなコンディション。1Wのキャリーの距離が物を言う、西村にとっては望ましくない条件で体感距離はさらに伸びていた。さらに36ホール同組だったモダミー・ルブラン(カナダ)が185㎝の長身から280yd級のビッグドライブを繰り出すシーンを何度も見れば、心は波立ちそうにもなる。

「100yd近く前に行ったホールもあったり、『いいなあ』なんて思いながら。それでも、最後まで自分のゴルフを見失わずにできた」。タフな条件下でのマインドセットは、不振にあえいだシーズンの中で間違いなく鍛えられていた部分だ。「成績自体はすごく悪かったし、あんまりいい思い出もない」とこぼすシーズンの最後に、何としてもクリアしたかったハードルは越えることができた。苦しみ、悩み抜いた時間も決してムダではなかった。ルーキー時代のように、リシャッフルを気にしながら再び綱渡りの日々に挑む米ツアー4年目。よりたくましくなったハートが、きっと何よりの武器になる。(アラバマ州モビール/亀山泰宏)