「高校野球文化のアジア輸出」をめざした「アジア甲子園」(朝日新聞社など後援)の第2回大会が12月13日から20日まで、…

 「高校野球文化のアジア輸出」をめざした「アジア甲子園」(朝日新聞社など後援)の第2回大会が12月13日から20日まで、インドネシアのジャカルタで開催される。

 昨年の第1回大会はインドネシア国内から8チームが参加した。第2回大会はシンガポールから1チーム、マレーシアから3チームが参加。インドネシアの参加も10チームになり、計14チームで競う。

 出場できる選手の年齢は、14歳から18歳まで。大会を主催する一般社団法人NB.ACADEMYの柴田章吾代表理事(36)は、「(年齢を)少し低めから設定しているのは、参加選手の中に日本の高校に進んで野球をやりたい、という選手が出てくるかもしれない、と考えたから。大会を成功させて、多くの方に興味を持ってもらえるようにしたい」と話す。

■野球普及には「目標となる場」が必要

 柴田さんは国指定の難病「ベーチェット病」と闘いながら愛工大名電高(愛知)に進学し、2007年の第89回全国高校野球選手権大会に出場。明大を経て、巨人の育成選手として3年間プレーした。引退後は民間企業に勤務しつつ、語学研修のために訪れたフィリピンで野球普及にも取り組んだ。

 フィリピンに行くたびに、野球教室に集まる子どもが増えていく。手応えは感じていたが、ふと思った。

 世界を見渡すと、野球が盛んなのは日本や韓国、台湾といった東アジアと、アメリカやメキシコ、キューバなどの北中米。その他の地域では地道な普及活動が続いているものの、裾野が広がっているとは言いがたい。

 技術を教えるだけではだめなのかもしれない。何かが足りないのかもしれない。

 「野球をする目的、文化が必要なのではないか、と考えました。僕がもう一回、生きるのを頑張ろうと思えた目標が甲子園。甲子園のような大会を開けば、現地の子どもの目標になるのではないか、と」

 これが「高校野球文化の輸出」という目標の原点だ。

■「甲子園」にこだわった

 19年に独立。立ち上げた会社の業務内容には、「野球の普及・振興」も加えた。アジア甲子園運営の主体となる一般社団法人を設立し、賛同者や支援企業を募り、実現へと動き出した。

 ただグラウンドを確保して野球の試合をするだけでは、現地の子どもたちの目標とはならない。目標となるには、ふさわしい設備や雰囲気が必要だ。

 だから、徹底して「甲子園」にこだわった。第1回大会の会場は、ジャカルタで開催された2018年アジア大会で野球競技会場だったゲロラ・ブン・カルノ球場。プラカードを持って入場行進し、選手宣誓。現地や日本のアマチュア吹奏楽団と、チアリーダーが選手たちを鼓舞したエキシビションマッチもあった。

 「第1回は、大会をつくること、甲子園を再現することにこだわったあまり、運営費をどう確保するかなど視線が大人寄りになってしまった。今回は本来あるべき姿である『選手が主役』にこだわりたい」と柴田さん。昨年は大会が始まった時点では確約できなかった優勝チームや選抜チームの日本招待を、すでに決定した。

 参加国やチーム数は、増やそうと思えば増やせた。しかし、今回はあえて3カ国にとどめた。拡大スピードを速めることは簡単だが、運営態勢が伴わないと大会自体が倒れかねない。柴田さんは言う。

 「ずっと続けていくためには、現実的でないといけない。継続して、少しずつ大きくしていければ」

 理想と現実のバランスをとって、一歩ずつ進んでいく。(山下弘展)