大谷やベッツ。錚々たるメンツが顔を並べるドジャース。トレードで加入した“新入り”にとっても緊張の環境があった(C)Get…

大谷やベッツ。錚々たるメンツが顔を並べるドジャース。トレードで加入した“新入り”にとっても緊張の環境があった(C)Getty Images

相当な覚悟をして臨んだ移籍

 真夏の移籍で人生は一変した。今夏にナショナルズからドジャースにトレードで加わったアレックス・コールだ。

 ありとあらゆる移籍が実現するMLBのトレード市場。当然ながら選手たちもある程度の覚悟を持って挑んでいるわけだが、コールにとってドジャース加入は、まさに青天の霹靂。衝撃以外の何ものでもなかった。

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 米ポッドキャスト番組『Sports Spectrum』に出演した31歳は、当時をこう振り返っている。

「まず、去年までの僕は3A(マイナー)で1年の大半を過ごして何とか昇格した。そして今年はワシントンでメジャーロースターに入ったけど、思ったようにはいっていなかった。そしたら世の中はトレード期限に入っていて、本当に怒涛の展開の中でワールドシリーズ優勝候補のチームの一員になっていたんだ」

 2016年にドラフトでホワイトソックスに加入し、22年にガーディアンズでメジャーデビューを飾って以来、華々しいキャリアを歩んできたわけではない。そうした中で急転直下で舞い込んだドジャース移籍。マイク・リゾGM(当時)から一本の電話で「『おい、トレードが決まったぞ』と言われた」と明かすコールは、「正直に言えば、トレードされる可能性があるなとは思っていたんだ。でも、実際に成立するのは難しいのは知っていたから確信は持てなかった」と告白。当時の舞台裏を赤裸々に明かしている。

「ニュースを見ていたら、打撃コーチから電話がかかってきて、『ヤンキースがお前に興味を持っているみたいだぞ』って言われたんだ。僕は素直に『うわ……ヤンキースか。ビッグチームだ』と感じた。そしたら『君はドジャースにトレードだ』って連絡がきたんだ。『本気で言ってる?』とは思ったよ。信じられなかったからね。『ドジャースが僕を欲しがってくれたの?』って。だって、もうすでに補強の必要がないぐらいに最高のチームだから。でも、家中の荷物を整理して、翌日には出発して合流した」

 相当な覚悟をして臨んだ。なにせドジャースは球界、いやスポーツ界随一の常勝軍団だ。大谷翔平、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンなど投打にMVP級のタレントが居並んでいる。いわゆるスモールマーケット球団であるナショナルズから向かうコールが「メンタル的にはかなり大きな出来事だった」と漏らすのも無理はなかった。

合流直後に不安を払しょくしたナイン

 ただ、合流後、ドジャースナインは不安を払しょくした。

「待ち受けるものが何かは分からなかった。史上最高の選手たちがいるロッカールームに入るぞと入っていくと、彼らは素晴らしい歓迎をしてくれた。『君のプレーもスタイルも大好きだ』と言ってくれて、『それをやってくれたらいい。それ以上は求めない』と説明してくれたんだ。おかげで、僕は自分らしくいられたし、自然体でプレーできた。とにかく溶け込みやすかった」

 役割も明確になったというコールは、移籍後は38試合に出場し、打率.247、2本塁打、5打点をマーク。時に守備固めとしても起用され、ポストシーズンでもドジャースのために奔走。数字上は目立った成績を残せなかったが、球団史上初となるワールドシリーズ連覇を下支えした。

 ドジャース移籍を「本当に特別なことだった」と振り返ったコールは、人生を変えた出来事に、こう想いを馳せている。

「とにかくドジャース移籍で『自分の子ども頃の夢を実現できる』と思った。それがワールドシリーズってやつで、自分が夢見てきた舞台、そしてチャンスが目の前に舞い込んだんだ。だからどんな形でも貢献する準備だけはしていた。でも、(ワールドシリーズの)第5戦に先発した時の打順表は後で貰ったんだ。

 だって、ショウヘイ・オオタニ、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、ウィル・スミス、そして僕だ。あそこに自分の名前が記されていることが本当に信じられなかった。今考えるだけでも最高だ。あれだけは誰にも奪えることのできない僕の人生における大事な1ページだ」

 いまや貴重なマルチロールとして欠かせない存在となったコール。3連覇が懸かる来季も彼のいぶし銀の活躍が重宝される時が来るだろう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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