12月5日、6日に行なわれたフィギュアスケートGPファイナル女子シングル。坂本花織(シスメックス)は、ショートプログラ…

 12月5日、6日に行なわれたフィギュアスケートGPファイナル女子シングル。坂本花織(シスメックス)は、ショートプログラム(SP)では3回転ルッツが2回転で0点となり、6選手中5位発進になってしまった。

 翌日のフリー演技後に、他の選手の結果を受けて総合3位に入ったことを知ると、坂本は「よかった。滑りこみ」と言ってしゃがみこみ、涙をボロボロと流した。「枯れそうになった。体内の水分が30%になりそう」と言って報道陣を笑わせながら表彰セレモニーの準備に向かった。



GPファイナルで3位に入った坂本花織

【なかなか緊張感が来なくて...】

 坂本は、GPファイナルにこれまで4回出場し、2023年に優勝は1回あるが、2022年は5位に沈み、優勝候補として臨んだ2024年は3位と、ひとつの鬼門になっている大会だった。五輪シーズンの今季もその鬼門に苦しむスタートになったが、翌日のフリーではいつもの坂本花織が戻っていた。

「11月のNHK杯の時は会場入りする数日前からとんでもない緊張に襲われ、試合が始まる頃には緊張し疲れてちょうどいいくらいになっていたんです。でも、今回のショートの時はなかなか緊張感が来なくて、6分間練習の途中くらいからやっと緊張し始めた。自分としては緊張を抑えるほうがやりやすいしピークを持っていきやすいけど、今回はそれが難しくてミスにつながりました。フリーは逆に、ショートの緊張感がそのまま持ち越されたので落ち着いていい緊張感が出てきました」

 こう話す坂本のフリー、最初からスピードに乗った丁寧な滑りをすると、3回転ルッツを確実に決め、2回転トーループをつける連続ジャンプにした。だが、きれいに跳んだ3回転フリップ+3回転トーループのあと、ダブルアクセルがシングルになるミスが出た。

「(ミスをした)ショートのルッツと同じで本当に『何が起こったかな』という感じで集中が切れたけど、あのダブルアクセルに関しては30%くらい、自分のなかで『ミスするかも』と思っていたような想定内のミスでした。前日のような驚きはなかったし、あとに引きずるような気持ちもなく、まあ仕方ないと」

 そう話すように、ミスをしたあとでも流れを途絶えさせず、そのあとに3回転トーループ+2回転トーループを付けて連続ジャンプを成立させた。そして最後のスピン2本をレベル4にする演技。フリー全体1位になる149.40点を獲得し、合計218.80点にして総合順位を3位まで上げた。

「アクセルが抜けるところまではほぼ何も考えず、いいゾーンに入っていたというか、いい集中力でできていたなと思います。朝の公式練習から中野園子先生とグレアム充子先生にだいぶ活(カツ)を入れてもらって。これはやらなきゃなと思って、もう一段階気合が入りました」

【いよいよ五輪出場をかけた全日本へ】

 今回は、17歳の中井亜美(TOKIOインカラミ)が総合2位で日本勢トップ。他にも若手が続々と出てきている現在の競り合う状況について、坂本はこう話した。

「自分がシニア1年目の時にはそのシーズンで最後という選手はほとんどいなかったけど、一番上にはミス・パーフェクトと言われる宮原知子ちゃんがいて、彼女にどうやったら近づけるだろうと思って勢いよくやっていました。そこから年月が経って自分もスランプがあったり、周りの選手たちが徐々に変わっていくなかでも上のほうにいられた。

 でも2023年に4回転やトリプルアクセルを跳ぶジュニアの島田麻央ちゃんと全日本で戦った時は、『強烈やな、この子』という感じで、一緒に戦ったら絶対にやばいなと思いました。今は日本のシニア選手でファイナルに4〜5人進出するほどレベルが上がり、切磋琢磨できるライバルがたくさんいる。(現役生活の)最後の最後にこういう経験ができるのは、自分にとっても日本女子にとってもすごくいいことだなって思います」

 そして3回目の五輪代表を目指して臨む全日本選手権に向けて、坂本は「今回の日本人上位2人に入れたのはホッとしましたが、ミラノ・コルティナ五輪代表が正式に決まるのは全日本なので、そこでは北京五輪の時と同様に一発内定で、1分でも1秒でも早く安心できるように優勝して終わりたい」と強い口調で言った。

 12月19日に始まる全日本選手権まで「自分を厳しく追い込んでいきたい」と言う坂本。GPファイナルの悔しい思いを、自身の闘志を盛り上げるきっかけにしていく。