明治が力強く試合を制し、5季ぶりの戴冠を果たした(C)産経新聞社 関東大学ラグビー対抗戦Aグループの「優勝決定戦」となる…

明治が力強く試合を制し、5季ぶりの戴冠を果たした(C)産経新聞社
関東大学ラグビー対抗戦Aグループの「優勝決定戦」となる早稲田対明治の対戦が12月7日に行われ、明治が25-19で勝ち、19回目の優勝を果たした。明治の優勝は2020年以来5季ぶり。両学の対抗戦での対戦は101回目で、通算対戦成績は明治の43勝2分56敗となった。
【動画】ロスタイムのPGで劇的な逆転勝ち!25-23で接戦を制したジョージア戦のハイライトを見る
今季は両学ともに「手負い」の状態だった。調子が今ひとつ上がっていなかった帝京に敗れた早稲田。明治も開幕戦で筑波に逆転負けした後、慶応戦はラスト1プレーまで2点差に肉薄され、帝京戦でも後半ロスタイムで逆転するなど、薄氷の勝利を続けていた。早明戦華やかなりし頃の、両学が他大学を圧倒して全勝同士で激突し、勝った方が優勝する、という展開とは一味違った優勝決定戦となった。
試合は開始早々から、明治がテリトリーを支配する。SH柴田竜成がコンテストキックを積極的に使い、ハイボールのコンテストには強さを見せていた阿部煌生、白井瑛人の両WTBによるボール確保に繋げていた。また、試合開始からしばらくは、重戦車FWに密集近辺を攻めさせることなく、BKに展開する場面が数多く見られた。近場のFWでのコリジョンを予想していたであろう早稲田の思惑をスカす効果はあったが、残念ながら早稲田BK陣並びに機動力のある第3列の防御網を切り裂くまでには至らなかった。
逆に早稲田は前半18分にボールを受けた日本代表FB矢崎由高が、素晴らしいランスキルで一気にトライを奪った。押しに押しして点の取れなかった明治と、数少ないトライライン前のチャンスで個人技一発であっさりとトライを奪ってしまった早稲田。ここで一気に試合の趨勢が早稲田に傾いてもおかしくなかったが、特にシーズン後半に入ってから修羅場をしのぎ切ってきた明治は慌てていなかった。トライを奪われてから、キックも、外への展開も一旦封印して、SO伊藤龍之介が真っ直ぐに走ってラインブレイクを果たすと、その後も、FW、BKにかかわらず、最短距離を真っ直ぐに駆け抜けるプレーで次々とゲインして行ったのだ。
67年に渡って明治の監督を務めた北島忠治氏の教えであり、明治のプレーの根幹をなす「前へ」の教えを見事に体現したプレーで、明治はチームとしてのモメンタムを取り戻した。
お互いにPGを一本ずつ決めて迎えた前半30分には明治重戦車軍団の面目躍如の力強い突進で早稲田トライラインに迫り、FL最上太尊がボールをねじ込んでトライ、10-10の同点とした。なおも、前半終了間際、明治はトライライン5メートル前でペナルティーを得て、タップキックからの攻撃を選択したが、HO西野帆平からのパスをNo.8の利川桐生がノック・フォワード。しっかりボールを取れていればトライに繋がった可能性の高かったプレーだけに、士気が下がってしまうことも予想されたが、ちょうど前半終了になったことがいい方に転んだようで、明治にショックはなかった。
むしろインターバルの間に気持ちを切り替えることに成功した明治は、後半開始早々、早稲田SO服部亮太のタッチを狙ったキックを、運動量豊富な左PR田代大介がチャージし、そのボールをCTB東海隼が拾い上げてトライし、逆転に成功した。
服部は超ロングキッカーとして名を馳せているが、パスされたボールを受けてからキックまでの時間が若干長いことがある。時間にすればほんの一瞬ではあるのだが、そのミスとまでは言えないようなちょっとした綻びをついてトライに結びつけてしまうところに、明治の執念とフィットネスの高さを感じた。
そして、その後も明治は冷静にディフェンスし続けた。スクラムこそ、駆け引きで負けたり、プッシュの際のアングル不正で反則を取られたりと劣勢だったが、ラインアウトはマイボールを100%キープ。敵ボールラインアウトも無理に競らずに、早稲田の仕掛けをしっかりと読んでボールが相手に渡った状況に冷静に対処し、曲者のHO清水健伸の働きを封じた。また、BK陣、FW第3列のディフェンスも素晴らしく、フェーズを重ねても有効なゲインを許さず早稲田をどんどん手詰まりの状況に追い込んで行った。
これも一つの明治らしさで、やや反則が多く、PGで点差を詰められはしたが、後半31分には相手トライライン前のラックから「これぞ重戦車」という突進をこれでもかと繰り返し、最上がこの日2本目のトライ。早稲田を突き放した。終了間際、早稲田も死に物狂いの攻撃で明治トライラインに迫ったが、最後は明治に磐石のスクラムを組まれ万事休す。国立競技場に詰めかけた明治ファンの歓喜の声がこだました。
敗れた早稲田は3位となり、2位には明治、帝京を破った筑波が入った。対抗戦からは4位帝京、5位慶応までが全国大学ラグビー選手権に出場することが決まった。シーズンの深まりとともに、ディフェンスシステムを構築し直し、帝京、早稲田を連続で破った明治のチーム状態は確実に向上しており、優勝争いは明治が中心となるだろう。同じくシーズンの深まりとともにチーム力を挙げてくる帝京の存在も不気味だし、関西の二強である天理大、京産大の仕上がりも気になる。リーグ戦優勝の東海大学も虎視眈々と覇権を狙っているし、早稲田、筑波も雪辱を胸に修練に励んでいることだろう。今季の大学ラグビーは最後の最後まで目の離せない試合が数多くなりそうだ。
[文:江良与一]
【関連記事】【エディージャパン検証】紙一重の惜敗――ジャパンが痛感したウエールズとの“経験値の差”