角田との攻防に苛立ちを爆発させたノリス(C)Getty Images角田も認識したレッドブルの「思惑」 まさに紙一重だっ…

角田との攻防に苛立ちを爆発させたノリス(C)Getty Images

角田も認識したレッドブルの「思惑」

 まさに紙一重だった。小さくない物議を醸しているのは、現地時間12月7日にヤス・マリーナ・サーキットで行われた、F1の今季最終戦となるアブダビGPでの角田裕毅(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)の攻防だ。

【動画】角田裕毅は危険だった!? ノリスが「恐い」と振り返った攻防をチェック

 前日の公式予選でポールポジションについたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が序盤からトップを疾走。そして10番手で出走した角田が3番手に浮上していた23周目だった。25歳の日本人ドライバーは、ピットインを終え、後方から猛追してくるランド・ノリス(マクラーレン)を食い止めにかかる。

 この時、レッドブルには「思惑」があった。フェルスタッペンの逆転での総合優勝に向け、ドライバーズランキングで首位に立つノリスはなんとしても抑えたい相手。上位進出を防ぐのは、セカンドシートに座る角田に課せられた重要な役割だった。

 ここで角田は、オーバーテイクを画策するノリスを遠ざけんと、左右にマシンを振りながら必死のブロッキング。「マックスを最大限にサポートしたい」と明かしたように“抵抗”を見せた。

 しかし、旧式パーツを導入している角田をマシンの性能で上回るノリスは、スピードで凌駕。反則ギリギリのライン取りで一気に抜き去っていった。

 ただ、せめぎ合いからほどなくして両者がスチュワード(審議委員)の審議対象となった。もしも、ノリスがペナルティを受ければフェルスタッペンの戴冠が現実味を帯びたが、結局はおとがめなし。タイムペナルティ(5秒)を課されたのは、角田だけだった。

 レース後に英衛星『Sky Sports』のフラッシュインタビューで「よく分からないペナルティを受けた……。まぁ、正直いつものことかなと思う」と反論した角田だが、彼の徹底したブロックはスチュワードから「何度も方向転換をした」と見られ、結果的にノリスは「衝突を避けるためにコースアウトをせざるを得なかった」と判断された。

 タイトルの命運を分ける形となったバトルだが、オーバーテイクを成功させたノリス側にとっては言語道断。26歳の“世界王者”は一歩間違えれば大事故に繋がる危険なドライビングだったという見解を示している。

「レース中にも何度か、『あ、ツノダが来るぞ』と思った場面があった」

 2ポイントという僅差でフェルスタッペンの追い上げをかわし、総合優勝を手にしたノリスは、決勝後に米メディア『The Athletic』において「ツノダが僕を妨害し、苦境に追い込もうとする可能性は分かっていた。すでに僕らのシナリオ、そして予測に含まれていたんだ」と強調する。

 レース前からフェルスタッペンのタイトル獲得に燃えるレッドブル陣営が、決死の覚悟で自身を食い止めにくると予測できていたと証言。その上で、「レース中にも何度か、『あ、ツノダが来るぞ』と思った場面があった」と明かしている。

「あの瞬間、僕はかなり素早くツノダを抜けたけど、実際はマシンがかなり接近していた。よくよく振り返ってみると、かなりどうかしていると思う。だって『あと5センチでもずれていたら終わりだった』って思ったぐらいだからね。僕は終わっていたかもしれないんだ。そう考えても恐い出来事だった」

 ほんの数センチ、わずかなズレが起きていれば、大惨事は避けられなかった――。マクラーレンのザック・ブラウンCEOが『Sky Sports』で「もちろんチームスポーツだから、2台目のマシンが、エースのマシンを手助けするのは当然だけど、限度はある」と断じたのも、「危険」という印象を角田に強く抱かされたからだった。

 角田にとってF1でのラストランは、14位フィニッシュの無念の結果に終わった。しかし、「危険で不必要」(ブラウンCEO談)と批判された攻防でタイムペナルティを課されただけで、何事も起きなかったのは幸いだったと言えるのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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