【目標の300点超えは達成したが......】 名古屋市で開催されたグランプリ(GP)ファイナル。鍵山優真(オリエンタル…
【目標の300点超えは達成したが......】
名古屋市で開催されたグランプリ(GP)ファイナル。鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)は「次のレベルアップにつながる大会にしたい」という意図を持って臨んだ。
GPファイナルで総合2位になった鍵山優真
12月4日のショートプログラム(SP)は、前日に「自分が一番強いんだというくらいの気持ちで」と話していたように攻めの姿勢で挑み、2022年北京五輪で出した自己最高得点を更新する108.77点で1位発進した。
勢いを持って臨んだ2日後のフリーは、目標のひとつにしていた合計300点超えを果たした納得感を感じながらも、悔しさも多く残る結果になってしまった。
SPでは4回転アクセル+3回転トーループでミスをして3位発進となったイリア・マリニン(アメリカ)はフリーで4回転アクセルを含む4回転6種類7本の構成に挑戦。それを完璧に滑りきり、フリーの歴代世界最高となる238.24点を獲得し、合計332.29点にしていた。
マリニンは、「安全策を取る選択肢はもちろんあったが、『なぜGPファイナルに出場しているのか』ということを自分に問いかけた。新しいことを試していくことが、とりわけ五輪シーズンでは重要だと考えました」と語った。
そしてSP2位の佐藤駿(エームサービス/明治大)も「マリニンは別格だと思って、自分の演技に集中した」と、ノーミスの滑りで自己最高得点を獲得し、合計を自身初の290点台となる292.08点にした。
そんななかで、「ショートでは『自分は輝いている』と思い込めましたが、フリーは直前になるといろいろな考えが頭に浮かんでしまい、ショートほど強気にはいけなかったです」と振り返ったのが鍵山だ。
最終滑走で登場した鍵山は、最初の4回転サルコウをきれいに決めたが、次の4回転トーループは少し詰まる着氷になり、3回転ではなく2回転をつける連続ジャンプにした。その後も丁寧な滑りを続けたが、後半の3回転ルッツ+3回転ループは3回転+2回転になり、最後のトリプルアクセルも耐える着氷となって完璧とはいかなかった。それでもフリーの得点は193.64点で、合計302.41点にした。
「総合的に見れば300点を超えて、ひとまず目標を達成したかもしれないけど、やっぱりフリーは200点以上を狙いたかったというのが正直なところ。本当はノーミスで合計310点台を狙いたかったので、すごく悔しい思いはあります」
【演技内容にコーチが苦言】
父の正和コーチは演技前、「世界一を取ろうぜ」と声をかけていた。だからこそ、300点超えという結果のなかでも、苦言を口にする。
「優しくなりすぎているというか、アスリートとしての気持ちがちょっと足りないのかなという気はします。最初の4回転+3回転のコンビネーションを4回転+2回転にしてしまったけれど、練習ではバランスを崩しても4回転+3回転にできるんです。最後のコンビネーションに関しても締めようと思えば締められる。この雰囲気のなかで1点でも多くもぎ取ろうと思うのであれば、アスリートとしての気持ちがあるなら、練習ではできているからそれができるはず。
練習は『これ以上もなく、これ以下もない』というところまで上げてきている。大観衆のなかでの最終滑走はこれからも多くなってくると思うので、どうやってその気持ちをつくっていけるか。NHK杯から課題にしていてちょっとずつ上がってはいるけど、やっぱりまだまだ足りないのかなというふうには感じます」
そして鍵山は、そんな父の言葉に対してこう話す。
「自分のなかではどうしてもミスをしてはいけないという気持ちがすごく強くて、挑戦のリスクよりも安全を取ってしまった。あの瞬間はあれが最善策だと思ってはいたけど、たしかに挑戦しなければいけないとすごく感じました。何も恐れずにやっていくのが一番大事でした」
【全日本選手権は攻めの姿勢で】
今回見つけた課題点に加えて、マリニンの攻めの姿勢も学びになった。
「自信の持ち方や、どういう気持ちで演技に向かうかということなど、得られたもののほうが大きかったと思います。フリーの前はとにかく自分の呼吸の音を聞いたり、足元の感覚に意識を研ぎ澄ませたり、ジャンプが終わるまではすごく集中し、コレオシークエンスからは本当に自由に滑って......。表情とか表現の部分についても意識して演じるというよりはナチュラルにできました。
ショートもフリーもそうだけど、この大会での意識の持ち方がそのままパフォーマンスに現れたのではないかと思います。父から『世界一を取ろうぜ』と言われて自分もやる気がみなぎった。まだまだシーズンは終わってないので、もっともっとパワーアップしていけるように頑張りたいと思いました」
次は2週間後の全日本選手権。鍵山は「本当にガツガツ行かないと五輪では戦えないので、全日本ではしっかり攻めたうえでその結果を素直に受け止めたい。そのためには一瞬たりとも気を抜けない日々を送らなければいけないと思っているので、自分自身に対してもしっかりと追い込んでいきたい」と話す。
今後、絶対王者のマリニンを追うためにどんな挑戦を見せてくれるのか。期待したい。