■0対3の劣勢を覆した小林監督の「妙手」【J1昇格プレーオフ 準決勝 12月7日 13時04分キックオフ 千葉 4ー3 …

■0対3の劣勢を覆した小林監督の「妙手」

【J1昇格プレーオフ 準決勝 12月7日 13時04分キックオフ 千葉 4ー3 大宮 フクダ電子アリーナ】

 フクアリが、「奇跡」の舞台となった。

 J1昇格プレーオフ準決勝が12月7日に行なわれ、リーグ戦3位のジェフユナイテッド千葉と同6位のRB大宮アルディージャが激突した。舞台は千葉のホーム、フクアリことフクダ電子アリーナである。

 リーグ戦の順位が上位の千葉は、引分けでも決勝へ勝ち上がることができる。ところが、後半開始直後の48分までに3失点目を喫した。

 今シーズンの千葉は、リーグ戦8試合で3得点以上を記録した。5節の愛媛FC戦で後半だけで4得点をあげ、9節の藤枝MYFC戦では前半だけで3得点した。35節の北海道コンサドーレ札幌戦では、後半だけで4ゴールを叩き出した。FC今治を5対0で粉砕した最終節も、後半に3得点をあげている。

 スイッチが入ったら一気に畳みかける攻撃のパワーを、今シーズンの千葉は見せてきた。しかし、プレーオフ準決勝という大一番で、そうした過去の経験がどこまでチームの支えになるのか。記者席から見る千葉は、3失点目を喫した時点では明らかに追い詰められていると映った。

 ところが、ここから一気に4ゴールをブチ込むのである。70分以降の怒涛のゴールラッシュで、J1昇格プレーオフ決勝へのチケットをゲットした。

 そのきっかけとなったのが、小林慶行監督の選手交代だった。60分の驚きの妙手が、戦況を変えていったのだ。

■交代選手が得点に絡んでの大逆転!!

 この試合最初の交代となる60分に、小林監督はMF姫野誠を送り出した。2列目の左サイドで起用した。8月にトップチームに追加登録されたこの17歳は、それまで一度もリーグ戦に出場していない。

 姫野は11月開催のU―17ワールドカップに出場したので、その前後も含めてメンバー入りをさせられなかったところはあったのだろう。さらに言えば、この日は左MFの椿直起が、最終節のケガでメンバー外だった。そうした事情もあって、攻撃の複数ポジションに柔軟に適応できる姫野を、交代カードに加えたと考えられる。

 それにしても、プレーオフ準決勝である。それまでJリーグのピッチに立ったことのない高校2年生を、3点を追いかける展開で送り出す。姫野はメンタルがタフだと聞くが、大胆かつリスクのある決断だったに違いない。

 果たして、この起用が試合の流れを呼び込む。姫野は出場直後にワンツーでペナルティエリア内左へ侵入し、決定的なシュートを放った。

 71分にFWカルリーニョス・ジュニオが決めたチームの1点目は、姫野投入で左サイドから右サイドへポジションを移したイサカ・ゼインの仕掛けがきっかけとなっている。交代の効果は、こうしたところにも表われた。

 1対3とした直後の73分、小林監督は3枚替えをした。ダブルボランチの一角を担う田口泰士、得点を決めたばかりのカルリーニョス・ジュニオ、イサカ・ゼインを下げてMF品田愛斗、FW呉屋大翔、FW米倉恒貴を送り出す。攻撃のギアをさらに上げた。

 この交代も試合を動かすのだ。77分、敵陣右サイドからのスローインを品田が受け、右ポケット付近まで侵入してクロスを入れる。これがRB大宮守備陣に窮屈なクリアを強いることとなり、MFエドゥアルドがペナルティエリアすぐ外から強烈な右足ミドルを突き刺すことにつながったのだった。

 そして、3点目は姫野である。CB鈴木大輔がヘディングでクリアしたボールを、2トップに入った呉屋がヘッドで後方へ流す。左MFの米倉がワンタッチで右前へ送ると、17歳が猛然と走り込む。胸コントロールでボールを前へ押し出すと、DFの前へ身体を潜り込ませてシュート態勢を作り、GKの頭上を破る左足ループを決めてみせた。

 フクアリの熱狂は最高潮に達した。87分には右CKからCB河野貴志が、逆転のヘディングシュートを突き刺す。これで勝負あり、だった。

 姫野、品田、呉屋、米倉と、小林監督が切った交代カードがしっかりと得点に絡んだ。ラスト20分からの大逆転劇で4対3の勝利を飾った「フクアリの歓喜」は、指揮官の強い決断が生み出したものだった。

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