フォスターの強打と華麗な試合運びに翻弄されたフルトン(C)Getty Images あっけない内容に終わった。現地時間1…

フォスターの強打と華麗な試合運びに翻弄されたフルトン(C)Getty Images
あっけない内容に終わった。現地時間12月6日に米テキサス州サンアントニオで開催されたボクシングのWBC世界ライト級暫定王座決定戦で、世界2階級王者のスティーブン・フルトンは、WBC世界スーパーフェザー級王者のオシャキー・フォスターに判定(0-3)の末に敗れた。
前代未聞の試合開催だった。
当初、WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチとして、階級を1つ繰り上げたフルトンが王者フォスターに挑む予定だったのだが、試合前日に状況は一変。前日計量で挑戦者が規定体重を約2ポンド(0.9キロ)も体重超過したのだ。
そもそも、このタイトルマッチは10月25日に米ネバダ州ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで行われる予定だった。しかし、興行のメインイベントに出場する選手の負傷によって延期になっていた。それだけに階級を繰り上げるフルトンに調整面での難しさが生じていた可能性は小さくない。
しかし、それはフォスターも同様で、やはり体重超過は言語道断である。ゆえに試合は挑戦者が勝利しても王座が空位となる変則世界戦として開催されるかと思われた。しかし、ここでWBCが介入。協議の末に1階級上のWBC世界ライト級暫定王座決定戦として認可する異例の措置を取った。
そうして、WBCの“温情”を受ける形で試合開催にこぎつけたフルトンだったが、フォスターに成す術がなかった。小気味よく繰り出される王者の鋭いパンチに翻弄された31歳は、主導権を握られると防戦一方に。フルラウンド(12回)を戦いきったものの、決定打に欠け、明らかに精彩は見られなかった。
23年7月に現スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)に敗れて以来の黒星を喫したフルトン。“怪物”に敗れた日から「俺を作り直すきっかけになった」と地道に重ねてきた努力も、今回の失態によって、無に帰したと言えよう。
地元メディアも31歳の名手には辛辣だ。米メディア『Boxing Scene』は「計量での騒動が、この試合を完全なるB面扱いにし、フォスターを激怒させる要因になった」と指摘。持ち味の技巧が見られなかったフルトンを「完全に劣勢に立たされていた」と糾弾した。
「スーパーフェザーでの調整は明らかに失敗だった。いまや計量に失敗したフルトンがここからフェザー級に戻る可能性も低い。そうして迎えたライト級デビュー戦でひどい状態を露呈した彼は、今後は難しい決断を迫られることになるだろう」
キャリアの岐路に立たされたフルトンは、この経験をどう反映させるのか。ボクサーとしての真価が問われているのは間違いない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
【関連記事】名手フルトン、再戴冠の“原動力”は井上尚弥戦 衝撃の王座陥落を回想「あの敗北は俺を作り直すきっかけになった」
【関連記事】WBC会長に「何様だ?」 最強戦士クロフォードが“突然の王座剥奪”に怒り爆発「命を懸けているのは俺たち。お前らじゃない」
【関連記事】「もっと練習すべきだった」真価が問われるフルトンが井上尚弥戦の惨敗を再び回想「イノウエは正々堂々と勝った。俺に腹が立った」