ワールドカップ大予想(前) ワールドカップ北中米大会の組み合わせ抽選会が5日(現地時間)に行なわれ、日本はグループFに入…

ワールドカップ大予想(前)

 ワールドカップ北中米大会の組み合わせ抽選会が5日(現地時間)に行なわれ、日本はグループFに入り、オランダ、チュニジア、そしてウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニアによる欧州プレーオフB組の勝者と対戦することになった。グループリーグの結果を4人のジャーナリストが占う。

カギを握るオランダ戦。勝つ確率は3試合で最も高い

浅田真樹●文 text by Asada Masaki

オランダ=〇
チュニジア=●
ウクライナ・スウェーデン・ポーランド・アルバニア=△

 他のグループとの比較で言えば、極端に強いチームも、弱いチームも存在せず、日本は実力接近で粒ぞろいのグループに入ったと言える。

 ヨーロッパ予選のプレーオフを勝ち上がってくるのは、予選結果に照らせばポーランドかウクライナが有力だろうが、本来は高いポテンシャルを備えるスウェーデンが目を醒ますようなら、さらにハイレベルなグループになり得る。



抽選会の会場に掲示されたグループFの組み合わせphoto by Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 それでも、日本が上位2カ国に入り、決勝トーナメントへ進出することは十分可能だろう。

 ただし、4カ国の実力が接近している分、星の潰し合いになる可能性があり、3位になって他グループの3位との比較になった場合には、粒ぞろいが不利に働くかもしれない。

 確実に上位2カ国に入るうえでカギとなるのは、最初のオランダ戦と見る。

 現在の日本はハイプレス、あるいはミドルプレスが有効な武器で、いわゆる格上のほうが相性はいい。つまりは、日本をリスペクトし、守備を固めて慎重に戦ってくるチームよりも、日本に対して"横綱相撲"をとってくれるチームのほうが戦いやすいということだ。

 オランダがグループFの最強国であるのは間違いないが、だからこそ、対戦相手の分析など、事前の準備に最も時間をかけられることも含め、日本が勝つ確率は、3試合のなかで一番高いのではないだろうか。

 むしろ日本にとって難しいのは、初戦でオランダから勝ち点を奪ったうえで(奪えなかったらなおのこと)、残る2試合でどう勝ち点を積み重ねていくか、だ。

 前回のワールドカップでも、初戦でドイツに勝ちながら、続くコスタリカ戦で敗れているように、相手に守備を固められ、ボールを持たされる展開になると苦しくなる。実際、アジア最終予選を振り返っても、オーストラリアとサウジアラビアには4試合で1勝しかしていないのだ。

 アフリカ予選を無失点で勝ち上がってきたチュニジアはもちろん、ヨーロッパ予選のプレーオフからいずれの国が入ってくるにしても、日本に対して現実的な戦いを挑んでくる可能性は高い。

 まして、初戦でオランダに勝っているという前提で言えば、どんな戦いをすると日本の強みを引き出すことになってしまうかが、なお明確になっているはずだ。前回大会の二の舞になる危険性は、十分にある。

 言い換えれば、もしオランダに敗れてしまうようなら、俄然、星勘定は苦しくなる。初戦は敗れたが、残り2試合に連勝して2位通過、というシナリオはどうも期待しにくい。

 3位通過をあてにせず、2位以内に入ることを決勝トーナメント進出の条件とするならば、オランダとは最低でも引き分けて、勝ち点を手にする必要があるだろう。

強豪オランダにも勝機あり。だが4戦目から「死の組み合わせ」に

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

オランダ=○
チュニジア=○
ウクライナ・スウェーデン・ポーランド・アルバニア=△

 グループFは、"最高ではないが、最低でもない"組み合わせになった。

 第1ポットのなかでも強敵のスペイン、アルゼンチン、ブラジル、フランスは避けられたし、第3ポットのノルウェーも避けられた。第2ポットに入った影響は絶大と言える。ただ、ワールドカップで与しやすい相手はいない。実際、カタールワールドカップの日本はドイツ、スペインに勝利を挙げながら、コスタリカには敗れているのだ。

 日本はこれから戦略を練り上げ、最大出力の戦術を選択し、勝利を目指すことになるが、"史上最強"の戦力だけに怖気づく必要はないだろう。

 まず、ロナルド・クーマン監督率いるオランダは強豪だが、かつての威光はない。伝統を引き継いでボールをつなげるが、アタッキングサードに入ってからは思ったように攻め崩せない。スペインのペドリやラミン・ヤマルのような特級選手も不在で、攻撃は迫力に欠ける。また、クーマン監督は国内では選手時代の経歴もあって高評価を受けているが、国外では「つまらない」「横暴」と選手や関係者からの声は散々で、評価が分かれる指揮官だ。

 チュニジアはワールドカップの常連だが、"戦いやすいアフリカ勢"だろう。アフリカのなかでは際立った組織を武器に予選を勝ち上がっているが、日本にとっては十分に勝ち筋が読める。"何をするかわからない""狡賢く戦う"相手のほうが日本は苦手としているのだ。

 欧州プレーオフは、スウェーデン、ポーランド、ウクライナ、アルバニアのいずれかになる。どこが来るかわからない段階で△にしたが、どこが来ても互角に戦える。ポーランドのロベルト・レヴァンドフスキ(バルセロナ)は"老兵は死なず"だし、スウェーデンのアレクサンデル・イサクはプレミアリーグ史上最高の移籍金、約250億円でリバプールに加入したストライカー。どの国も高さや速さ、屈強さを武器に侮れないが、日本はチーム力で負けていない。

 ひとつ言えるのは、"森保ジャパンにとってノックアウトステージ進出は至上命題"ということだろう。これまでと違い、大会出場国が36カ国から48カ国に増えたことで、グループを突破(4チーム中1、2位と、3位の勝ち点などの上位8チーム)しても、ベスト32に過ぎない。過去最高のベスト8に進出するには、グループステージでまごついていられないのだ。

 その点では、グループステージよりもノックアウトステージが「死の組み合わせ」になったことに着目すべきだろう。グループFの1位、2位が対戦するグループCからは、ブラジル、モロッコが勝ち上がってくることが予想される。

 ブラジルには最近ようやく1勝を挙げただけで、本番での強さは計り知れない。モロッコもカタールワールドカップ4位の実力は伊達ではなく、ヤシン・ブヌ(アル・ヒラル)、アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)と守備陣はワールドクラスだ。

 日本はグループステージをどう勝ち上がるか。疲弊した状況だと、ブラジル、モロッコに太刀打ちできないだろう。

 その点、懸案だった遠藤航の代役を佐野海舟が務められるようになったことは、2025年の最大の収穫だろう。中村敬斗もゴール近くでは切り札になる。久保建英、鎌田大地が戦術の中心になるが、選手層は確実に増した。あとは森保一監督が、戦術を駆使し、適材適所の選手起用でローテーションさせる采配が見せられるかどうかがカギになる。
(つづく)