来年3月に開催されるWBC2026へ向けて、代表選手の絞り込みが行われている。投手・捕手陣がまず対応しないといけないのが…
来年3月に開催されるWBC2026へ向けて、代表選手の絞り込みが行われている。投手・捕手陣がまず対応しないといけないのが、「ピッチクロック」とサイン伝達機器「ピッチコム」への対応だ。
11月15日、16日に行われた「ラグザス 侍ジャパンシリーズ 2025 日本 vs 韓国」で日本投手陣はこの対応に苦しみ、2試合で11失点だった。西武の隅田知一郎投手は「最初はピッチクロックの残り時間を意識しすぎてしまい、自分の間合いで投げることができなかった」と語り、髙橋宏斗投手も「ピッチコムだと捕手のサインが出てから、自分のルーティンに入るときに目線が時計の方に向いてしまい、投げ急いだところがありました。相手の間合いになってしまい、打たれてしまった」と苦労を語った。
なぜ投手はこの問題に苦しむのか。元阪神で、現在は台湾プロ野球の台鋼ホークスでコーチを務める福永春吾氏に語ってもらった。
福永氏は現役時代、ピッチクロックの経験がある。20年に阪神退団後、徳島インディゴソックスに所属。JABA大会で、初のピッチクロックを体験したが、「最初は秒数をかなり意識しましたね。自分も20秒はどれくらいかな?と不安になりながらのマウンドでした。それでも一度だけこなせれば慣れるかなと思います」と最初は戸惑ったという。
現在、MLB、韓国プロ野球(KBO)、台湾プロ野球(CPBL)にはピッチクロックが導入されている。台湾プロ野球は今年までは、走者なしで20秒、走者ありが25秒。来年からは走者なしで18秒、走者ありが23秒というルールになる。牽制は2回目までで3回目に刺せないとボークが宣告される。
福永氏は「ピッチクロックは走者なしならば、1~2試合こなせばすぐに慣れる」と話した。
「今はどの投手もこなせます。ただ新人投手もゆっくり投げてギリギリになるので、彼らにはブルペンで秒数を意識しながら、投げたほうがいいとアドバイスすることになります」
問題は二塁に走者がいるときの対応だという。
「ピッチクロックは投手がボールを持ってからスタートしますが、二塁牽制のサインをどの選手が出すのか、問題になってきます。例えば捕手が伝達して、二遊間に伝えて、最後に牽制するなどルールがあります。一連のプレーを25秒以内に実行できるか。
サインプレーが入ってしまうと、時間ギリギリになってしまいます。それが難なくできるよう、キャンプからセカンドの牽制の場合、サインの主導権をどうするのか打ち合わせがありました」
一方の、バッテリーが球種をやりとりするピッチコム。ピッチクロックがある中でサインの伝達を行わなければいけない。台湾プロ野球界ではその使用は球団、選手の任意に任されている。福永氏が所属する台鋼ホークスは導入していないが、外国人投手のほうが良く使っているという。台湾でもあまり馴染めないのは、機械のため不具合があること。そして鳴り物応援が多く、伝達がしにくいという。
「よく試合を見ると、汗による影響なのか、機械の不具合が起こって、データ班の方がグラウンドに飛び出してピッチコムの機器の交換を行っていました。こうした光景を見ると馴染むのは大変だと思います」
ただWBCは、ピッチクロックとピッチコムの合せ技となる。福永氏は「時間を意識した中でピッチクロックでバッテリーのサイン交換、加えて二遊間との牽制指示。慣れるのは大変ですが、代表選手たちのパフォーマンスを見ると順応力は凄いと思います」と語った。
WBC日本代表のキャンプは2月14日から始まる。このキャンプでは、ピッチクロック、ピッチコムの対応が最優先課題になりそう。代表投手陣は万全の状態で入ることができるか。