井上に打ち破れたネリ。その凄みを直に知る男は怪物の凄みを語った(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARA…

井上に打ち破れたネリ。その凄みを直に知る男は怪物の凄みを語った(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
「王者不利」を予測する声は微塵も聞こえてこない
激動の2025年をどう締めくくるか。“モンスター”こと井上尚弥(大橋)の次戦に対する関心がいよいよ高まってきた。
来る12月27日、ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者である井上は、WBC世界同級2位のアラン・ピカソ(メキシコ)との防衛戦に臨む。舞台となるのは、サウジアラビアの首都リヤド。「THE RING V:NIGHT OF THE SAMURAI(ナイト・オブ・ザ・サムライ)」と銘打たれた興行で、不世出の怪物は、メキシコ人ファイターをどう相手にするのかに世界が熱視線を向けている。
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国家的イベント「Riyadh Season」を運営する総合娯楽庁のトゥルキ・アルシェイク長官の全面的なバックアップを受ける今回の一戦で、初めてサウジでの試合に臨む井上。当然ながら試合に向けては調整面などでの難しさがはらむが、現時点で「王者不利」を予測する声は微塵も聞こえてこない。むしろ、飛び交うのは、圧勝を有力視する声ばかりである。
そうした予測は同胞からも寄せられている。昨年5月に井上と東京ドームという檜舞台で対峙し、6回TKOで敗れたルイス・ネリ(メキシコ)も「ピカソの敗北」と断言する一人だ。
メキシコのボクシング専門YouTubeチャンネル『Box and Tonic』に出演したネリは、「何が起きるかは分からない。不可能なんてない」と前置きしつつ、「正直なことを言えば、叩かれるかもしれないけど、俺の本音を言えば……」と持論を明かした。
「イノウエは本当に優れたファイターだ。強いうえに速い。ちょっとでも隙を見せたら正確に打ち抜いてくる。俺みたいに無謀に突っ込んだら、確実に痛い目に遭うよ。ピカソにアドバイスを送るとしたら、『ボクシングで戦え』ってことだな」
ネリは「痛い目」に遭った。日本を熱狂させた東京ドーム決戦では、初回に左フックで井上からプロ初ダウンを奪って会場をどよめかせたが、そこからは怪物の末恐ろしい猛攻に直面して成す術を喪失。2回と5回に左フックで、6回には左ジャブ、右アッパーの素早いコンビネーションから右ストレートを受けてそれぞれダウンを喫して敗れた。
完膚なきまでに叩きのめされた男の発した「ボクシングで戦え」の真意
まさに完膚なきまでに打ちのめされたネリ。彼が同胞に送った「ボクシングで戦え」の真意は何なのか。
悪童の異名を持ちながら、時に狡猾な戦いも見せてきた30歳は、こう論じる。
「とにかくピカソは良い距離を保つこと。身長があって、リーチがあるからな。その距離感を維持できれば、何とか判定決着には持ち込めるかもしれない。どうやってもイノウエに勝つのは難しいとは思う。ただ、判定まで持ち込めるだけでも立派な成果だ。彼の攻撃に耐えるだけでも価値がある。俺はどちらかというと全力でぶつかりにいって打ち合うタイプだけど、ピカソは違う。長身とリーチを活かすべきだ」
たしかにピカソのリーチは178センチと長く、井上を約7センチも上回る。防戦を余儀なくされるであろう戦いの中では、その差が勝機を生む可能性はある。さらに「ピカソにパンチ力はないが、スタイルは良い」と私見を口にしたネリは、井上戦での“可能性”を説き続けた。
「とにかく賢く動くことだ。リングをうまく使えるなら判定に持ち込めるはずだ。それでも勝つのは難しい。イノウエはスピードも、頭脳も、どのファイターよりも上だ。そしてパンチ力もある。全く別次元にいると言っていい。不可能はないし、サプライズは起こせるかもしれない。だけど、ピカソにとっては厳しい相手になるだろうね」
これまで歯に衣着せぬ発言で、波紋を呼んできたネリ。そんな悪童が口にした“リアリスティック”な予測は、井上がいかに図抜けた存在であるかを改めて物語る内容だった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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